給与が未払い…そのまま閉鎖した事業所、音信不通に 障害者の就労支援を展開、市は1カ月100万円を給付していた 表札や郵便受けはガムテープで隠され、電話は不通…市「夜逃げ状態」

閉鎖された事業所=4日午後、越谷市新越谷

 埼玉県内3市で障害者の就労支援事業を展開していた「ベル・エンプロイメント・サポート」(越谷市)が、職員給与などを未払いのまま事業所を閉じ、音信不通状態になっていたことが4日までに分かった。未払い金の中には障害者が作業で得た工賃も含まれる。関係者によると、未払い金は3事業所で総額数千万円に上るという。

 ホームページによると、ベル社の設立は2020年10月。障害者が雇用契約を結ばず軽作業を行う「就労継続支援B型事業所」を、さいたま市南区、川口市、越谷市で展開していた。各事業所の定員は20人でメダカ飼育や販売などに取り組んでいた。

 越谷市障害福祉課によると、昨年5月ごろ、事業所の職員や利用する障害者から「給与や工賃の支払いが滞っている」などと市に相談が入った。ベル社は5月末、事業所を6月末で閉める廃止届を市に提出。市は6月、ベル社に対して賃金を支払うよう勧告したが、応じなかったという。職員は労働基準監督署に相談した。

 市は1カ月当たり約100万円をベル社に給付していた。公費は事業所の運営費に充てていたとみられる。

 市の担当者は「連絡が付かず夜逃げのような状態になり、困惑している」とした上で「今後、何が対応できるか検討していきたい」と話している。ベル社が所在していた同市新越谷の住所を訪れると、玄関は施錠され、表札や郵便受けはガムテープで隠されていた。電話は今も不通状態になっている。

 さいたま市によると、南区の「ベル武蔵浦和」は22年2月から事業を開始し、23年6月末付で廃止する届けが提出された。職員から給料の不払い、利用者から23年4、5月の工賃の不払いの相談が寄せられていたという。同事業所の規模では、1人が1日利用することで、6146円を事業所に給付するという。市は「(事業所と)連絡が取れず実際のサービス内容が確認できない。直ちに返還を求めるのは難しい」と話した。

© 株式会社埼玉新聞社