「掃除は短時間の事務作業だから」と、1日30分の会社清掃に残業代が付きません。正直困っているのですが、残業代は請求できないでしょうか?

定時を超えて働いた分は残業代を請求できる

事業所内の掃除で30分退社時間が遅くなったときは、残業代の対象になります。経営者によっては「事務作業だし、1時間に満たないから」という理由で残業として扱わない場合もあるでしょう。

ところが、15分でも30分でもきちんと計算して残業代を支払うのが原則です。短時間だからという理由で、経営者が勝手に判断して省くことはできません。1時間に満たない短い単位で切り捨てるのは違法です。

残業した分は、1ヶ月分の総残業時間を出したうえで残業代を計算します。1日30分の掃除でも日課になっているなら、1ヶ月でそれなりの時間になります。週の所定労働日数が5日なら1週間で150分、1ヶ月で600分です。毎月10時間分の残業代が未払いになっていることを意味します。

割増賃金を請求できるケースとできないケース

残業代を考える際、念頭におきたいのは「法定労働時間」と「所定労働時間」です。この2つの違いを理解しておかなければなりません。法定労働時間とは法律で定められた労働時間のことで、1日の上限は8時間、1週間の上限は40時間です。これを超えて残業した場合、25%割増した残業代を受け取れます。

対して、所定労働時間とは社内ルールとして会社が独自に決めた労働時間のことです。所定労働時間が7時間の職場で1時間残業しても、総労働時間は8時間です。この場合は法定労働時間の8時間を超えていないため、残業代は割増になりません。

例えば、所定労働時間が7時間、時給1200円の人が1時間残業しても残業代は1200円です。もしも3時間残業したときは2時間目以降は割増になるため「1200円×25%」で、1時間あたり1500円で計算されます。

未払いの残業代を請求するときの注意点

これまでの残業代が未払いになっているなら「未払い賃金」として請求できます。ここで注意しておきたいのが「消滅時効期間」です。未払い賃金には時効があり、成立してしまった分は請求できません。

なお、これまでの消滅時効期間は2年間でしたが、厚生労働省によると「2020年4月1日以降に支払期日が到来する全ての労働者の賃金請求権の消滅時効期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年」としています。

ただし、この対象は2020年4月1日以降に支払われる賃金です。それよりも前の残業代が未払いになっている場合は、すでに時効が成立しています。残業代を請求する際、会社側が応じてくれない可能性もあります。

その場合は管轄の労働基準監督署に相談するのが適切な方法ですが、必ずタイムカードなど残業の記録が分かるものを保存しておきましょう。

未払いの残業代請求は時効と証拠に注意

残業した分は、1ヶ月でまとめて計算されるのが一般的です。残業したとき、法定労働時間を超えている分は割増賃金の対象になります。未払いになっている場合は後から請求可能ですが、消滅時効期間を過ぎていないか注意しましょう。

また、請求が正当であることを証明する証拠も必要です。必ずタイムカードなど記録を保存してことも忘れないようにしましょう。

出典

東京労働局 しっかりマスター労働基準法―割増賃金編―
厚生労働省 未払賃金が請求できる期間などが延長されています

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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