じつは可能…「自己破産した後」でも問題なくできる〈4つのこと〉【司法書士監修】

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自己破産後の人生は、自己破産する前とどのくらい変わってしまうのでしょうか。本稿では、東京司法書士会の寺島能史司法書士監修のもと、自己破産後の人生はどう変わるのか、生活への影響や注意点、また自己破産後でも問題なくできることについて詳しく解説します。

自己破産後の人生で不便なこと

自己破産をした後の人生で不便に感じることとしては、以下のようなものが挙げられます。

一定期間借金ができない

自己破産すると、事故情報として一定の期間信用情報機関に履歴が記録されます。いわゆる「ブラックリストに載った」といわれる状態です。ブラックリスト入りしている期間中は新たな借金ができないため、手元にある収入だけで生活する必要があります。お金を借りたくても気軽に借りることができない点に注意が必要です。

カードの新規発行やローンを組むことができない

ブラックリスト期間中は借金ができないだけでなく、クレジットカードの新規発行やローンを組むこともできなくなります。

クレジットカードや住宅ローン、自動車ローンなどの利用が一時的にできないため、決済方法としてクレジットカードの登録が必要な場合はデビットカードを使用する、ローンは利用せず、現金など一括払いで購入するといった方法を取る必要があります。

保証人に請求連絡がいく

自己破産で免責許可が出れば、お金を借りた本人の借金返済は免除されますが、代わりに保証人に請求の連絡がいくこととなります。家族や知人に保証人になってもらった借り入れがある場合、自己破産すると保証人に迷惑をかけることとなってしまう点も注意が必要です。

自分自身が保証人になれない

ブラックリスト期間中は、誰かの保証人になろうとしてもなることができません。家族が借り入れや奨学金、各種ローンなどを申請する際に保証人になれないため、家族に迷惑をかける可能性もあるでしょう。

一定以上の財産が失われる

自己破産すると、生活に必要な最低限の財産を除き、99万円までは破産者の手元に残りますが、それ以上の財産を持っている場合は失うこととなります。「住宅を手元に残したい」「財産が失われるのは困る」といった場合には、自己破産以外の債務整理を検討した方がよい場合があります。

また、破産手続き開始後の借金や、子供の養育費、税金、罰金などは面積許可決定が確定しても免除されないという点も不便な点として挙げられるでしょう。

自己破産後の人生でもできること

自己破産するとできなくなることがある反面、自己破産してもその後の人生で問題なくできることもたくさんあります。自己破産後でもできることには、以下のようなものが挙げられます。

仕事の制限を受けることはない

保険外交員や警備員、各種士業など、自己破産中は一部の職業に就くことができない制限があるものの、手続きが終われば制限を受けずに働くことが可能です。

自己破産が職場にバレることもなく、自己破産が原因でクビにされることもありません。転職においても、自己破産が問題となることはありません。

自己破産後の収入は守られる

自己破産の手続き中には、一定以上の財産を持っていると処分の対象となってしまいます。しかし、自己破産後に得た財産や収入は処分されることはありません。自己破産後も自由に働いて収入を得て財産を築き、人生を建て直すことは充分に可能です。

家族への影響は?

自己破産する場合、手続き中も完了後も、基本的に家族名義の財産には何も影響がありません。クレジットカードやローンを組むことも、家族であれば可能です。

自己破産したことが戸籍に残る、といったこともないため、結婚の制限を受けることもありません。

手続き中の財産は処分されるため、住宅や車を持っていた場合、失われることで家族に迷惑をかけてしまいますが、自己破産後に購入した住宅や車は処分されず、家族で自由に使用することができます。

事故情報が消えればローンを組むことも可能

ブラックリスト期間は、信用情報機関に事故情報の記録が残っている間となります。事故情報の記録は永遠に残るわけではなく、5~10年ほど経つと記録から削除されます。履歴が消えた後であれば、新規にローンを組んだり、新たにカードを申し込んだりすることもできるようになります。

自己破産したことでできなくなることも多くありますが、結婚や転職、自己破産後の資産形成などは可能で、事故情報の記録が消えれば、再びローンや借り入れもできるようになります。自己破産によって借金がゼロになるメリットは大きいものですから、できることとできないことを理解した上で検討することが大切となります。

それでも自己破産が不安な場合の対処法

自己破産したことでできなくなることがどうしても不安という場合は、以下の対処法を参考にしてください。

自己破産以外の債務整理を行う

債務整理とは、借金の返済が苦しい場合に利用できる手続きのことで、自己破産も債務整理の1つに含まれます。債務整理には自己破産以外にも以下のような種類があります。

任意整理:債権者と直接交渉して、借金返済計画の見直した利息のカットをしてもらう手続き

個人再生:裁判所を介して債権者と協議し、借金を大幅に減額してもらう手続き

過払い金請求:過去の借金や、長年返済している借金について払い過ぎた利息があれば返還請求をする手続き

任意整理は裁判所を通さないため手続きが簡易で、債権者を選んで債務整理できる反面、元本の減額ができない、債権者への交渉力が必要といった注意点があります。

個人再生では自己破産と同様に裁判所を通すため、手続きに手間と時間がかかりがちで、債権者を選んで交渉することもできませんが、住宅ローンは残したまま債務整理することができます。

過払い金請求は現在も返済している借金だけでなく、条件を満たしていれば既に完済している借金からも返還請求することが可能です。

任意整理や個人再生は借金の支払い能力があることが前提となるため、自己破産できても任意整理や個人再生を選べない場合もあります。

どの債務整理が検討できるかは、借金の総額や収入状況、財産の総額などによっても異なります。債務整理は自力で手続きすることもできますが、自己判断で安易に選択せず、専門家へ相談して慎重に決めることをおすすめします。

デメリットもあるが、借金をゼロにできるメリットは大きい

自己破産後の人生では、ブラックリストから履歴が消えるまで新たな借金やクレジットカード発行などができなくなります。手続きによって一定以上の財産は処分され、誰かの保証人になることもできません。家族が保証人になっている借金を自己破産で免責にすると、保証人に請求の連絡がいくこととなるため、保証人に迷惑をかける可能性もあります。

とはいえ、ブラックリストから履歴が消えれば借金もローンも組めるようになるほか、自己破産後に築いた財産は没収されることもありません。自己破産しても仕事をクビになったり、結婚できなかったりすることもありません。借金をゼロにできるメリットは大きいものですが、できないことに不安がある場合は他の債務整理を検討する方法もあります。

東京司法書士会 司法書士

寺島 能史

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