日本でイチバン売れている輸入車「MINI」から、2024年も目が離せそうにない!

2024年3月1日、BMWジャパンは新型「MINI」を発表。そのプレゼンテーションの中から、興味深い話を紹介しておこう。

日本では累計で35万台以上のMINIが販売されてきた

まずは2024年3月1日の発表会から、新型MINIのアンヴェール風景をどうぞ。

2023年、MINIの新車販売台数は1万7796台(日本自動車輸入組合=JAIA発表)。これは輸入車のモデル別販売台数では第1位の台数で、しかもMINIは2016年から8年連続でその座を堅持し続けている。その人気ぶりは、揺るがないものとなっている。

サー・アレック・イシゴニスが生み出した初代MINI(以下、クラシックMINI)が登場したのは1959年。以来、2000年にBMWグループ傘下となるまで40年以上、その基本スタイルを変えることはなかった。そしてBMWがプロデュースしたMINI(以下、モダンMINI)が日本デビューを果たしたのは2002年。日本では累計で35万台以上のMINIが新旧合わせて販売されている。

実際、MINIの故郷であるヨーロッパよりも、日本の路上でMINIを見かける機会は多いように思う。クラシックMINIから変わらない愛くるしいスタイルや佇まいで、オーナーにとってはMINIは単なるクルマではなく、友人や相棒のような存在なのだろう。愛車のMINIに名前をつけて呼んでいる人も多いという。日本では多くのMINIが愛され、それゆえMINIも日本を愛し、日本市場を重要視している。

MINI 3ドアは「クーパー」、クロスオーバーは「カントリーマン」に

テールランプは三角形状になったが、ユニオンジャックのデザインは踏襲。発光パターンは変更できる。

BMWジャパンでは、毎年3月2日を「MINIの日」として、ニューモデルやコンセプトモデルなどを発表してきた。22回目となる2024年は3月2日が土曜日となるため、前倒しの3月1日に発表されたのが、5世代目(モダンMINIとしては4世代目)となる新型MINIだ。

注目すべきは、電気自動車(BEV)のMINIが日本仕様にもラインナップされたこと。従来型にも と呼ばれるBEVが設定されたが、日本には導入されなかった。新型では、名称については後述するが、クーパーとカントリーマンともにBEVが用意された。しかも、クラシックMINIから継承される「ゴーカート感覚」はBEVになっても変わらないという。

また、名称は3ドアが「クーパー」、先代までは商標登録の関係で日本仕様は「クロスオーバー」と呼ばれていたモデルは本国仕様と同じ「カントリーマン」となった。これは、「カントリーマン」という商標をBMWジャパンが手に入れたことによるという。かつて、クーパーでないMINIでも「ミニクーパー」と総称されて呼ばれることの多かったMINIだから、原点である3ドアモデルが「MINIクーパー」を名のるのは、むしろ分かりやすいのかもしれない。

展示車のクーパーSEでは、160kWと330Nmを発生する電気モーターで前輪を駆動0→100km/h加速は6.7秒と俊足!

MINIらしさに変わりないが、新世代にふさわしい変革も

MINIデザイン部門責任者のオリバー・ハイルマー氏も来日して、MINIのデザインに関してプレゼンテーションを行った。

新型MINIに関しては、当 しているので、詳細はそちらを参照して欲しい。

モダンMINIは、サイズこそ世代が変わるたびに大きくなってはいるが、そのDNAは新型でも変わっていない。丸形2灯のヘッドランプ、大きなフロントグリル、ロングルーフ、縦型のテールランプなど。そして遠くからでも一目で「MINIだ!」と分かるプロポーションもそのままだ。

また、新型MINIクーパーより先にICE(エンジン車)版が日本でも発表されていたカントリーマンは、新型で3代目となるが、MINI史上もっとも大きなモデルとなった。これはファーストカーとして使うことを意識したサイズであるという。こちらも先代からのイメージは踏襲しているが、八角形風のヘッドランプやCピラー部のスカットルなどが特徴的だ。

いずれも、MINIらしさを継承しながらエアロダイナミクスを考慮してミニマルな新しいデザインに刷新され、新世代のMINIであることを象徴している。

インテリアは、エクステリア以上に新世代を感じさせる。フルデジタル化され、クラシックMINIのセンターメーターのようにインパネ中央には直径240mmの大型円形ディスプレイが備わる。カーナビやエアコン、メディア、電話など、さまざな情報はこれに映し出され、スマートフォンのようにタッチして操作できる。ダッシュボードにはリサイクルポリエステルを採用し、クーパーでは標準装備されたMINI エクスペリエンス モードで、光や音でインテリアの雰囲気を変えることもできる。

スマートフォンのように操作できる直径240mmの大型円形センターディスプレイと、その下にシフトセレクターやパーキングブレーキのスイッチなどが並ぶ。

もはや「MINI」は大きさを示す言葉ではない?

MINI本部長の山口智之氏は、「もはやMINIは大きさを示す言葉ではない」と熱く語った。

そのサイズ感から、カントリーマンはもちろん3ドアのクーパーさえも「もう、MINIじゃないよね」という言葉はよく聞く。これに関してはMINI 営業部長の山口智之氏は、「いまや、“MINI”とは大きさではなく、生き方や個性を意味するブランド名なのです」と語る。

つまり、ゴーカート感覚の走りやデジタルを用いたコミュニティ、そして環境への配慮などによって誕生した、新世代のプレミアム スモールコンパクト セグメントのブランド名が「MINI」であるということなのだろう。

新世代 MINIの展開は今後も続いていく。2023年の「MINIの日」に日本でも公開されたコンセプトモデル「 」の市販版が、近いうちに発表される。これは、クーパーとカントリーマンの中間サイズとなる、クロスオーバーモデルだ。また、日本でも人気の高い5ドア(おそらくはクーパー 5ドアという名称になるはず)や、カブリオ(日本仕様の名称はコンバーチブル)などもラインナップされることは間違いない。

ただ、クラシックMINIからラインナップされていた、ワゴン版の「クラブマン」は新型MINIでは設定されないようだ。今もなお続くクロスオーバーSUVの世界的な人気のあおりでワゴンの人気は下火だが、その影響がMINIにも及んだということだろうか。クラブマンのポジションは、エースマンが引き継ぐのだろう。

2025年までにICE版の生産を終了し、2030年までにはフルBEVのブランドとなることを目指しているMINI。ICEのMINIの魅力も捨てがたいのだが、これも時代の趨勢なのか。まずは今後の新世代MINIの展開に期待するとともに、BEVのMINIに早く試乗してみたいものだ。(文と写真:篠原 政明)

2023年のMINIの日に日本でも公開された「コンセプト エースマン」。この市販モデルが、近いうちに発表されるはずだ。

●全長×全幅×全高:3860×1755×1460mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:1680kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:160kW
●最大トルク:330Nm
●バッテリー総電力量:54.2kWh
●一充電走行距離:402km(本国仕様値)
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):531万円

●全長×全幅×全高:4445×1845×1660mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1998cc
●最高出力:150kW(204ps)/5000rpm
●最大トルク:300Nm(30.6㎏m)/1450ー4500rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・54L
●JC08モード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●当時の車両価格(税込):566万円

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