暖かくなると、ワンちゃんも人と同じように活動的になってきます。いきいきと活発になる反面、環境の変化を感じ取ると、心と体に影響も。ワンちゃんの様子をよく見て、不調やストレスのケアをしてあげましょう。現役獣医師で『愛犬と20年いっしょに暮らせる本 いまから間に合うおうちケア』より、著者の星野浩子氏が、春に起こりやすいワンちゃんの体調トラブルとヘルスケアの例をご紹介します。
春のおうちケアのポイント
のびのび活動的になる季節
ワンちゃんは冬の寒さから解放されると、気分が明るくなり、体も動くようになります。春になると「暖かくなってやる気が出てきた!なにか新しいことをはじめようかな」という方も多いでしょう。
こういう前向きな気持ちになれるときは、体も自然に動きます。体が動くと、血のめぐりがよくなります。食欲も出てきて、内臓の働きも活発になります。全体的に新陳代謝が盛んになる、うれしい季節です。
人間もワンちゃんも、心と体をのびやかにして過ごしましょう。
ストレスから嚙んだり下痢をしたりすることも
心地よい季節ですが、同時に春は、なにかとストレスやイライラを感じやすい季節ではないでしょうか。生活のパターンが変わったり、出会いや別れがあったり。飼い主さんに変化はなくても、世の中全体がそういう雰囲気に包まれるので、春はなにかと落ち着かない季節でもあります。
ワンちゃんもそういう雰囲気を敏感に察して、人間と同じようにストレスを感じたり、イライラしたり、ソワソワしたりします。
普段はおだやかなワンちゃんでも、ストレスがたまると、興奮して嚙んだり、吠えたりすることがあります。人間がストレスからイライラしたり、怒りっぽくなったりするのと同じです。
興奮がさらに強くなると、一時的なてんかん様発作を起こすこともあります。
ストレスから下痢や嘔吐を起こすこともあります。
適度な運動でストレス発散を
ワンちゃんにとって、ストレスを発散する方法としてもっとも効果的なのは運動です。
冬の寒いあいだは散歩を少なめにしていたとしても、春になったら、外の空気にふれる時間を徐々に長くして、散歩の距離も時間も少しずつ、無理のない範囲でのばしてみましょう。
ワンちゃんにとって運動ができる喜びは大きいものです。ワンちゃんの大きな喜びは、
「食べる、遊ぶ(運動する)、寝る」の3つです。
また、人間と同じで、動くと食欲がわいて、内臓の働きもよくなります。
運動して適度に疲れると、よく眠れるようにもなります。生活のリズムがととのうため、高齢のワンちゃんに多い昼夜逆転がおさまることもよくあります。
歩くことがむずかしい場合でも、抱っこやカートで散歩に出て、春の陽気を感じさせてあげましょう。草木や花の匂いを嗅かぐのは、心身ともによい刺激になります。適当な草地があれば、おろしてあげてもいいと思います。
春は、目、爪つめ、筋すじに不調が出やすい季節
目については、めまい、涙目、ドライアイ、かすみ目などがよくある症状です。
めまいは見た目にはわかりにくいのですが、急に立てなくなった、フラフラする、吐く、といった症状が出た場合、原因はめまいであることが少なくありません。頭を固定すると、目が振れているのがわかります。
爪については、割れる症状が多く出てきます。
筋というのは、東洋医学では筋肉というより、腱、筋膜、じん帯など、関節をサポートする器官を指します。
血のめぐりが悪くなって、筋に栄養が送られなくなると、けいれん、ふるえ、チックのように体の一部がピクピクふるえるといった症状が起こります。
また、最近はワンちゃんの花粉症も増えています。
ストレス解消には酸味・シジミ・アサリ
ストレス解消には、酸味のあるものが効きます。たとえば、トマト、リンゴなどがあります。
また、酸味に甘味を合わせると、酸味を抑えつつ、体をうるおす効果があります。和食の酢のものには砂糖が入りますね。それと同じ考え方です。
甘味の食材には、ハチミツ、黒豆、人参、卵などがあります。人参は目にもいいですね。
ヨーグルトは酸味と甘味の両方の性質をもつので、おやつに使ってはいかがでしょうか。
ほかに、ストレスの影響を受けやすい肝臓のサポートにはシジミ、アサリがおすすめです。ワンちゃんには、身はとり出して、だしだけ飲ませてください。
血を増やし、めぐりをよくして、爪や筋にまで栄養を届かせるには、レバー、ひじきもおすすめです。
星野 浩子
ほしのどうぶつクリニック院長
獣医師/特級獣医中医師