アングル:東エレク株、日経ウエート上限接近 半導体株中心の相場に水も

Noriyuki Hirata

[東京 5日 ロイター] - 生成AI(人工知能)への期待感を背景にした半導体株高が続く中、東京エレクトロン株の日経平均に占めるウエート(構成比率)がキャップ(上限)の10%に急接近している。日経平均算出の定期見直しの次回基準日に当たる7月末に上回っている場合、ウエート引き下げに伴うリバランス売りが見込まれる。基準日までまだ時間はあるものの、先行きに買いにくさが意識されれば、半導体関連株が主導する指数の上昇に水を差しかねないとの見方が出ている。

ウエートキャップを上回るリスクがある銘柄としては、直近の基準日となった1月末にかけてファーストリテイリング株の動向が注目された。今後は、同じように東京エレクトロンも関心を集めることになりそうだ。

7月末の基準日にキャップを上回った場合、日経平均算出時に用いられる株価換算係数にキャップ調整比率0.9が設定され、指数に対するウエートが10月から低下する。

この場合、日経平均をベンチマークとするパッシブ連動資金でのリバランスの売りが9月末に見込まれる。フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドが足元の株価などに基づいて試算すると、潜在的な売り圧力は約3000億円となる。

<半導体株への買い集中、ウエート押し上げ>

ウエートの変化は、株価の変動がほかの銘柄に比べて相対的に大きい場合に大きくなる。東京エレクのウエートは、4日現在で9.8%と、キャップの10%に接近。年初は7%程度だったが、半導体関連株に買いが集中しながら日経平均が上昇する中で、切り上がってきた。

上昇相場に乗り遅れたアクティブ投資家が、指数への寄与度の大きい大型株への物色を強めた影響のほか、好決算で買いが集まったことも背景にある。

東京エレク株は日経平均への寄与度が高いことから、手掛ければ「効率よく日経平均にキャッチアップできる」(フィリップ証券の増沢氏)との事情が買いを誘ったとみられる。決算発表の際には、2024年3月期通期の連結業績予想の上方修正も示したことが好感され、買いが集まった。

とりわけ、決算発表のあった2月9日前後にはウエートが数日間で約8%から約9%へと上昇しており、そのピッチは急だった。21日(日本時間22日)発表の米エヌビディアの好決算後も、半導体人気が一段と盛り上がる中で、ウエートは高まり続けた。

基準日まではまだ距離があり、すぐさま上値抑制の要因になるとはみられていない。ただ、7月末に近づく中で高水準を維持している場合には「リバランス売りのリスクが意識され、手掛けにくくなりそうだ」(ニッセイ基礎研究所の森下千鶴金融研究部研究員)との見方が出ている。「他の構成銘柄に資金が循環するようなら話は別だが、半導体関連株に買いが集中する相場が続いているなら、指数にネガティブな要因の一つになりかねない」(森下氏)という。

ファーストリテイリングのウエートは足元で11%付近にある。こちらもキャップを上回るリスクがくすぶり続けている。仮に2銘柄が基準日にキャップを上回った場合、リバランスの実行が見込まれる9月末にかけて「指数自体も買いにくくなり得る」と、フィリップ証券の増沢氏は話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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