自動車のマルチ・大型スクリーンはユーザーと企業どちらのニーズか

自動車のマルチスクリーンや大型スクリーンはユーザーと企業どちらのニーズだろうか?

筆者は何度も外国人の友人を連れて中国で新エネ車を視察したが、多くの友人の反応は「スクリーンが多くて大きいね」だった。マルチスクリーンと大型スクリーンはいつの間にか中国の新エネ車の発展トレンドとなり、消費者も「マルチスクリーン、大型スクリーン=ハイテク+インテリジェント化」という認識になっているようだ。

中国では消費者の車載大型スクリーンに対する認識はテスラから始まった。2012年にテスラModel S の17インチスクリーンにより車載スクリーンの大型化が進んだ。また、テスラは従来自動車のボタンのインタラクション方式をアップグレードした。車内のエアコン調節、娯楽設備調節などの機能はすべて車載スクリーンに統合され、非常灯など法律で規定されているスイッチを除き、数十のボタンが淘汰された。

マルチスクリーン、大型スクリーンの技術の発展により、車載スクリーンの情報表示はより全面的になり、ハイテク感があふれ、中国の自動車メーカーは次々に車載大型スクリーンを開発・運用し、自動車の販売増につながった。

中国の代表的なマルチスクリーン、大型スクリーン搭載車種をいくつか紹介する。

1、理想 L7(Li Auto L7)

22年9月に発売され、販売価格は 33万9800元(約680万円)から。3枚の15.7インチの大型スクリーンは「移動の家」のイメージを消費者の心に焼き付けた。

2、飛凡R7(RISING AUTO R7)

22年9月に発売され、販売価格は28万9900元(約580万円)から。上汽集団が生産。43インチの大型スクリーンを搭載し、大型スクリーンが中国新興自動車OMEメーカーだけの好みではないことを示した。

3、ZEEKR X

23年4月に発売され、販売価格は18万9800元(約380万円)から。搭載されたスクリーンはセンターコンソールから助手席へ横に移動可能で、巧みなデザインが消費者の評価を得た。

4、GEELY(吉利) Galaxy E8

24年1月に発売され、販売価格は17万5800元(約352万円)から。45インチ8Kのスクリーンを搭載。中国OEM企業の量産車の中で最大サイズのスクリーンで、手頃な価格と相まって、多くの消費者の注目を集めた。

マルチスクリーン、大型スクリーン化の動向については、業界内で異なる声がある。

マルチスクリーン、大型スクリーンは確かに消費者の購買意欲を刺激している。安全運転支援システムに比べて、車室はより感知・体験しやすい部分として、消費者の自動車購入の重要な考慮要素となりつつある。億欧シンクタンクの「2023年中国スマートキャビン相互作用シーンの生態発展研究報告」によると、「インテリジェント化の程度」はすでに「価格」「ブランド」「エネルギー消費」に続いて消費者が車を購入する際の第4の参考要素となっている。

また、KPMGコンサルティングの「電動化後半のスマートキャビン白書(2023)」によると、中国人ユーザーの61%はスマートキャビンが自動車購入の興味を大いに高め、価格が合理的であれば購入したいと考えている。

スマートキャビンでは「マルチスクリーン」「大型スクリーン」「娯楽機能」が多くの中国消費者に上位の選択肢として選ばれている。

一方で、「大型スクリーンはかっこよすぎて、操作がかえって不便だ」と考える消費者もいる。例えば、グローブボックス(助手席前の収納)を開ける操作では、従来のガソリン車なら物理スイッチで簡単に開けることができるが、一部の新エネ車ではスクリーン上でボタンを押す必要があり、さらにパスワードの入力も必要となるケースもある。

もしかしたら、これらの機能は音声インタラクションやチップ演算力の発展に伴って向上し、消費者の体験も改善されるかもしれない。しかし、運転者にとって、突発的な状況の時にスクリーン操作がより効果的なのか、それとも従来の物理ボタンの方が早いのかというのはより重要な問題だ。

J.D.パワーの統計によると、中国人消費者の43%は車の買い替え周期が3年以下だ。ハイテク感あふれるマルチスクリーンや大型スクリーンを搭載した車種は多くの消費者にとって魅力的なため、自動車メーカーはマルチスクリーンや大型スクリーンを搭載せざるを得ないかもしれない。

自動車の一番の性質は「交通手段」であり、安全性、運転・乗り心地、省エネが重要な要素だ。科学技術の進歩がもたらすのはマルチスクリーンや大型スクリーンだけではなく、運転性能、安全運転支援、省エネ管理などの面での向上も望む。(編集/RR)

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