林勇、広瀬裕也、天海由梨奈ら声優陣がすべての声優ファンへ贈る〈BEYOND the V〉ライヴ・レポートが到着

2月18日(日)に東京・新宿BLAZEにて、声優たちが一堂に会したエンターテイメント・ショー〈BEYOND the V〉が初開催されました。

本イベントは、声優陣による朗読が行われた昼の部と、声優陣によるスペシャルライヴが披露された夜の部の二部構成で行われました。昼の部 / 朗読劇はTVアニメ『キングダム』第4シリーズ オープニング・テーマを歌唱するSui(vo)&Ren(key&arranger)による音楽ユニット・SUIRENの楽曲「see me」からインスパイアを受けオリジナル脚本で朗読劇化、劇中で使用される音楽もすべてSUIRENの楽曲が起用されました。続く夜の部 / ライヴは計6名の声優陣の歌唱パフォーマンスが展開され、オープニングアクトをSUIRENが務めました。

[朗読&ライヴ・レポート]
昼の部のキャストには、アプリゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』に出演する天海由梨奈(彩々木 花 役)、TVアニメ『魔都精兵のスレイブ』やアプリゲーム『アイドリッシュセブン』に出演する広瀬裕也(春田 彗人 役)、TVアニメ『東京リベンジャーズ』、『ハイキュー‼︎』、『呪術廻戦』等に出演し、音楽ユニットSCREEN modeの勇-YOU-(Vo)としても活躍する声優・林勇(春田 蓮人 役)、集英社×avexによる多次元プロジェクト・Arcanamusicaに出演するROβiN(槻川 輝 役)が登場。

夜の部のキャストには、昼の部に出演した、林、広瀬、ROβiNに加え、TVアニメ『黒子のバスケ』ほか数々の主題歌を担当しソロデビューも果たしている佐久間貴生、ブラウザゲーム『刀剣乱舞ONLINE』、ドラマチックアイドル育成ゲーム『アイドルマスター SideM』に出演する濱健人、歌い手・いかさんとしても活躍しTVアニメ『絆のアリル』に出演する松岡侑李の3名が登場。

〈声(Voice)の演技を超えて(Beyond)、歌い(Vocal)エンターテインメントを届ける〉、〈視覚(Visual)を超えて歌で心にも感動を届ける〉、〈演者=声優(Voice actor)がステージを超えて活力(Vitality)を届ける〉、〈関わった人・参加した人すべてが最後に喜び(Victory)を感じられる〉という多くの“V”をコンセプトに掲げ、催された昼夜あわせておよそ5時間に渡るイベントの模様をレポートする。

昼の部のキャスト陣がモノトーンのシンプルな衣装でステージへ登場すると、静かなピアノの音色が印象的な楽曲『月に咲く花』が流れ、朗読が語られた。冒頭は27歳の誕生日を目前に、恋人・彗人からのプロポーズを意識した花が、親友の輝に恋人・彗人との惚気話をするエピソードと彗人の兄・蓮人が花の誕生日プレゼントの買い出しに付き添う幸せそうなシーンから始まる。天海演じる花は、その場にいるだけで雰囲気を華やかにしてしまう天真爛漫な性格を見事に演じ切り、序盤からその存在感を放ち、没入させた。

しかし、そんな花には親友の輝にしか話していない秘密があった。彼女には残された時間が少ないことが我々に明かされたのだ。楽曲『彗彩』とともに朗読が進行されると、その孤独を胸に秘めた花の心情が一層、悲しみを引き立て、切なさも増した。その後も、楽曲『hana』の歌詞と花の命が燃えゆく様が見事に相まって朗読劇の魅力を掻き立て、物語もクライマックスへ。

終盤では、楽曲『see me』が残した大切なメッセージが濃厚に贈られた。サビの歌詞には、《僕だけを見ていて ねぇ 下手くそな笑顔で良いから 僕だけを見ていて ねぇ 君のための僕でいさせて》とタイトルに冠した《僕だけを見ていて》という印象的なフレーズが繰り返される。さらに最後にはそのエピソードを紡ぐように、『see me』のMusic Video序盤に登場するセリフが花と彗人によって刻まれた。彗人と花が互いに〈君だけを見ていた〉と語り、〈きっと、これからも ずっと〉と重ねあわせる。間髪入れずに楽曲『see me』が流れると、会場は息を呑むような空気に包まれた。

夜の部は当日朗読劇化された楽曲『see me』を歌うSUIRENがアコースティック編成でオープニングアクトを務めた。鍵盤の音色と青いライトに照らされた海に2人のシルエットが浮かぶとSuiが「SUIRENです。よろしくお願いします」と挨拶し、昨年11月に発表されたゲーム『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』メインテーマソング『stella』を演奏。持ち前の力強くも儚いハイトーンで圧倒し会場を惹きつけると、「(昼の部/朗読劇で)僕たちの曲を使ってもらったんですけど、僕も見ていて、あんなに素敵な皆さんの朗読劇を聞かせていただいて本当に感激だし、感動した。僕たちのインディーズ時代の大切な曲です」と述べ、『see me』を披露。ラストはTVアニメ『キングダム』第4シリーズオープニング・テーマの『黎-ray-』で締め括った。確かな歌唱力と情感豊かで繊細なピアノの余韻で昼の部からの感動も引き上げてくれる見事なアクトだった。

そして、いよいよ声優キャスト陣によるライブの火蓋が切られる。トップを飾るのは、歌手として頭角を現している佐久間貴生。自身の楽曲で『ウルトラマントリガー』の主題歌『Trigger』のイントロが流れると焔のように燃えたぎる赤いライトと佐久間のステージで客席の熱量にブーストがかかり、会場には初っ端から大きなクラップが鳴り響いた。続けてTVアニメ『氷属性男子とクールな同僚女子』PVテーマソングの『Joyride』披露し、「みなさん楽しんで行けますか?!」と客席を煽り会場を沸かせた。

続いて登場した濱健人は、『世界は恋に落ちている』(HoneyWorks)でラブソングを見事に届ける。「飛ばしてきてますね!」と佐久間の熱演に圧倒されながらも、テイストの違うラブソングで緩急つけたステージを披露した。どちらも距離感がグッと近づくようなライブだったが、「1曲目で素敵な恋の歌を歌って、2曲目で落ちる感情のジェットコースターへ皆んなを巻き込んでみました」と無邪気にはにかんだ様子は策士と言えよう。

さらに松岡侑李がステージへあがり『Entertain』(ReFlap)のイントロが流れると空気は一変した。ソウルフルなラップで表現の幅を存分にいかし独自の世界を披露すると、会場はブルーのペンライト一色に。対してロマンチックで開けるような松岡のオリジナル楽曲『まだ見ぬ僕らの世界へ君を連れ出してみようか』では、異世界へ浮上させるような歌で観客を魅了させ、その豊かな表現力を披露した。ステージ後のトークではこの日、総合MCを務めたROβiNも松岡スマイルに悩殺されていた。

そして、広瀬裕也が登場。「恋人ごっこ」(マカロニえんぴつ)や広瀬自身が学生時代に憧れたロックバンドの名曲で盛り上げた。独自の声色で優しく歌い上げ、さらには高低差のある楽曲も熱く力強く歌い上げる。歌唱した楽曲について「高校の先輩がバンドでやってたんですが、当時は出来なかったんですよ」と振り返ると、サポートミュージシャンたちに向けて「嬉しかった!」と喜びをあらわにした。その後も何度も感謝する姿に、本当にイベントを楽しんでいた様子が伝わってきた。

さらに「カバーしか歌えません!」と笑いを誘って登場した林勇は、バレンタインも近いということで、ラブソング『恋だろ』(wacci)を熱唱。美しく韻を踏み、丁寧に歌い上げた。そしてソロステージのクライマックスは『ダンスホール』(Mrs. GREEN APPLE)。個人のYouTubeチャンネルでも同曲を歌唱したことがありお気に入りの様子で、圧巻の歌唱力とパフォーマンスでその存在感を放った。個性豊かなライブステージにヒートアップした場内は笑顔であふれ、自由に音楽を堪能する姿が最高だった。

コラボステージでは続いてもMrs. GREEN APPLEの楽曲『ロマンチシズム』で林&広瀬が王道のポップス2曲を披露。普段から仲が良いだけに見事なハモリを見せ、その姿にハンドクラップが巻き起こった。ライブ後はYouTubeで2人で歌った林が、『ロマンチシズム』の収録がじつは大変だったという制作秘話を話した。

濱健人と佐久間貴生は今回が初共演だったという。そんな2人は年末の大型音楽番組でも披露された令和を代表するロックシンガーの名曲を歌唱。2人が手を挙げたり声をかけたりして客席を煽ればそれに呼応するフロアは、まさにロックフェスさながらだった。

続いて、『I LOVE…』(Official髭男dism)を歌った広瀬裕也&松岡侑李はしっとりしたアレンジで場内に大人なムードを漂わせた。かねてより親交がある2人は事前のスペース配信で一緒に歌うのが不思議な感覚と言っていたこともあり、フロアも期待していただろう。それに応えるような納得のパフォーマンスであった。「相当な練習を重ね、コーラスや独自のリズムで掛け合いした」という同曲。広瀬は松岡に「綺麗なイレギュラーだったね」と振り返っていたが、松岡の話では2人で考えたパート分けが「第5項まである」というので驚きだ。

その後、松岡侑李はソロで『melty world』(Kizuna AI)を歌唱。全く異なる音楽の上昇感に切り替えてトランス調のナンバーにオーバーヒートしそうなほどのエネルギーをぶつけた。さらに濱健人は打って変わってジャジーな『酔いどれ知らず』(Kanaria)で艶やかな歌声を届け、ダンサンブルなナンバーで松岡からのバトンを繋ぐ。「酔いどれ知らずっていうただの酔っ払いです。ごめんなさい」とふざけて見せるもムーディーなステージに観客も酔いしれる。続く佐久間貴生もソロで1曲、高低差の激しいハイビートなボーカロイド楽曲を熱唱。ファンと心を通わせた。そして林勇は、ボーカロイド楽曲黎明期を彩った人気なナンバー「からくりピエロ」(40mP feat.初音ミク)を歌唱し、夜公演/LIVEもラストスパートを迎えた。

総合MCのROβiNが5人のキャストと共にライブを振り返ると、「先輩と歌えて楽しかったです。1日で2度美味しいイベントになった」(広瀬)、「バンドでのイベントは初めてだったので、楽しかったです」(濱)、「声優さんしかいない場で歌うのが初めてで緊張したけど楽しかったです。こうして巡りあい、歌わせてもらえて幸せでした」(松岡)、「自分の曲で、『ここは俺の番だからやるしかない!』って頑張ったんですけど、熱気が凄すぎて思ってるより本気出しちゃった」(佐久間)と各々コメントした。

「せっかくこのステージ上に今日の歌い手が集まったということで、もう1曲歌わせてもらいますよ!」と林の一声で、本イベント最後の楽曲『夜もすがら君想ふ』(TOKOTOKO・西沢さんP)をオールラインナップで披露。イベントは大団円を迎えた。

音楽に造詣も深く、何よりも、誰よりも、それぞれが音楽を楽しんでいたキャストたちは、ファンの中でも「歌唱」に定評のある声優だからこそ織りなせるハーモニーや表現力があり、唸るものがあった。林は最後に「声優でしかできない朗読と歌でこのイベントをやって…ポップスをカバーできたのも良かったし、皆に愛されるイベントになったら良いな」と、ここに誕生したばかりのイベントを祝し、「また次の『BEYOND the V』で会いましょう」と約束した。

TEXT BY 後藤千尋
PHOTO BY 石丸敦章、Hair&Make-up by Ayane・相川ニコ

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