紫蘇と塩だけ甘くない梅干し プレミア和歌山最高賞に、奨励賞もすべて梅関連

「梅と紫蘇」が「プレミア和歌山推奨品」審査委員特別賞を受けた製造会社の山本将志郎代表取締役(後列左から2人目)や社員=4日、和歌山市で

 和歌山県は4日、優れた県産品として認定する本年度の「プレミア和歌山推奨品」のうち、特に全国レベルの訴求力があるなどとして、みなべ町晩稲の梅加工販売会社「うめひかり」のシソ漬け梅干し「梅と紫蘇(しそ)」を最高賞に当たる審査委員特別賞に選んだと発表した。それに次ぐ奨励賞3品も、全てみなべ町や上富田町の梅関連商品だった。

 「プレミア和歌山推奨品」は販売促進を目的にした県認定制度で、今回は58業者の109品を認定した。このうち、審査委員特別賞に選ばれた「梅と紫蘇」は南高梅と天然塩、赤シソだけを使った甘くない梅干し。

 代表取締役の山本将志郎さん(30)は北海道大学の大学院で薬学を学び、会社の内定も受けていたが、梅農家を継いだ兄との会話を機に梅産業を盛り上げようと決意、中退して帰郷した。大学院で学んだ経験を生かし、試行錯誤して商品を完成させ、2019年に会社を設立した。

 市場に出回っている9割が調味梅の中、同社は「梅と紫蘇」など梅の味を生かした「甘くない梅干し」で勝負している。昔ながらの梅干しに親しんでいたが、購入を諦めていたという人らに好評という。香港やフランス、オーストラリアに輸出もしている。

 山本さんは「和歌山は日本の梅を支えているが、高齢化が進み、跡継ぎが決まっていない農家も多い。耕作放棄地が増え、梅文化も継承されなくなる」と危機感を募らせる。一方で、SNSなどを通じ、全国から若い人が山本さんを訪ねて移住し、新規就農者が増えているという。「若い人がやりたい梅産業をつくらないといけない。農業したい若者は多い。作業員ではなく、自分で農業できる環境を整えたい」といい、就農希望者のために、会社として農地を整備する活動をしている。

 奨励賞の一つは「てらがき農園」(みなべ町西岩代)の「そのまんま梅の床(とこ)」。自社農園で農薬を使わず栽培する南高梅を天日干しし、3年熟成させて作った商品。野菜や果物を入れて冷蔵庫で5分ほど漬ければ浅漬けが完成する。

 永岡食品(みなべ町芝)の「ウメ缶 どんなときもウメとごはん」は、炊き方などを含め、味を追求した県産米とまるごと個包装した県産南高梅をセットにした缶詰。水で60分、湯で15~20分で食べられ、アウトドア活動のほか、長期保存可能で災害時にも役立つ。

 プラム食品(上富田町生馬)の「JAPANESE CRAFT LIQUEUR(ジャパニーズ クラフト リキュール) くまの」は、県産のブドウサンショウと完熟南高梅、温州ミカンなどを配合した自社製造のジンをベースに県産南高梅と砂糖で仕込んだ梅酒。梅酒のコンクールで賞を受けている。

 授賞式が4日、和歌山市であり、各社の代表が残間里江子委員長から賞状を受け取った。

プレミア和歌山推奨品の審査委員特別賞を受賞した「うめひかり」の山本将志郎代表取締役(後列中央)や奨励賞受賞者(前列)ら=4日、和歌山市で

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