育成ドラフト指名から1年5カ月で日本代表入り 中日・松山晋也の世界デビューに刮目せよ

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ルーキーイヤーに支配下昇格、36試合で防御率1.27

野球日本代表「侍ジャパン」の2024年初陣となる『カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024 日本 vs 欧州代表』が6日に大阪で開幕する。

WBCで世界一に輝いた栗山英樹監督からバトンを受け取った井端弘和監督にとっては、今回が就任2度目の公式戦。ただし前回の『カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023』は選手選考に年齢やプロ入り年数などの縛りがあったため、そういった制約のない“フルメンバー”での戦いは今回が初めてとなる。

その中でも、指揮官は将来を見据えて若手選手を積極的に招集。現役大学生が4名も選出されたことが大きな話題となったが、NPBメンバーも今回がトップチーム初選出となる選手や、侍ジャパン入り自体が初めてという選手が数多くみられる。

そのうちの一人が、中日の23歳右腕・松山晋也だ。2022年の育成ドラフト1位で指名を受け、ルーキーイヤーの昨季6月に支配下昇格を果たすと、そのまま一軍に定着して1年目から36試合に登板。1勝1敗17ホールドで防御率1.27という好成績を残した。

188センチの長身から投げ下ろす威力抜群のストレートと鋭く落ちるボールが武器で、昨季も35回1/3を投げてイニング数を大きく上回る50奪三振をマーク。奪三振率は「12.74」という驚異的な数値が残っている。

大きな身体がより大きく見える闘志あふれる投球スタイルも魅力で、初の大舞台でも臆することなく自慢の速球を投げ込んでくれることだろう。国際試合でもドームに雄叫びを響かせながらド派手なガッツポーズを見せてもらいたい。

中日では背負うことができない「15」で躍動を

青森県出身の松山は地元の野辺地西高から八戸学院大を経て、2022年の育成ドラフト1位で中日から指名を受けた。

高校時代は甲子園どころか東北大会にも出場歴がなく、いわば無名の存在。大学時代もリーグ戦デビューを果たしたのは3年秋のことで、ドラフトにかかる4年春もさほど目立った実績を残してはいなかった。

それでも秋になるとリリーフとして大車輪の活躍を見せ、常時150キロ以上の球速を計時するストレートの威力が徐々に目につくようになる。ドラフト前には“隠し玉”候補として取り上げられる機会も増えた。

結局、支配下での指名は叶わなかったが、その素質を高く評価していた中日が育成ドラフトの一巡目で松山を指名。背番号211からのスタートとなるも、ファームで抑えを任されると早々と2ケタ・10セーブを記録。開幕から約2カ月で支配下登録を勝ち取り、6月17日の交流戦・日本ハム戦で一軍デビュー。そこでいきなり3者連続三振の快投を見せる。

その後もコンスタントに一軍で登板を重ねた背番号90。7月に腰の不安で戦列を離れる時期はあったものの、大事には至らず7月末には一軍に戻ってくることができた。以降も安定した投球を続け、中日のブルペンに欠かさない存在へと進化を遂げた。

2年目の今季に向けては、オリックスのレジェンドリリーバー・平野佳寿の自主トレに参加。日米を股にかけながら、長きに渡ってプレッシャーのかかる役割をこなし続ける右腕をお手本に、今季は50試合以上の登板とクローザーのポジション奪取にも期待がかかる。

直近のオープン戦でも3試合すべて無失点で1セーブと上々の内容。“世界デビュー”への準備は整った。「211」からはじまり、昨季途中から「90」。迎えた今春、初の国際舞台で背負うのは「15」。中日では“初代ミスタードラゴンズ”こと西沢道夫が背負った番号として永久欠番となっている。

自軍では背負うことができない特別な番号を背に、自身の名前を日本中の野球ファンに売り込むチャンス。京セラドーム大阪で松山晋也がコールされる瞬間を楽しみに待ちたい。



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