サッカーで農村の子どもたちの世界を開く 中国貴州省

サッカーで農村の子どもたちの世界を開く 中国貴州省

学校のサッカー場で練習する辣子樹小学校男子サッカーチームの子どもたち。(2023年8月5日撮影、貴陽=新華社記者/鄭明鴻)

 【新華社貴陽3月5日】中国貴州省黔西南(けんせいなん)プイ族ミャオ族自治州普安県興中鎮辣子樹村に住む中学2年の李成光(リ・せいこう)さんは、サッカーで自分の人生が変わるとは、3年前には想像もできなかったと話す。

 同村は県内に3カ所ある「省級深度貧困村」(特に深刻な貧困に直面している村)の一つで、標高は平均1843メートルに及ぶ。深い山に隔てられているため、村内の辣子樹小学校で学ぶ子どもたちが外界の物事に触れる機会は限られていた。

 2020年9月、肖選(しょう・せん)さんは貴州民族大学の体育教育学部を卒業し、「特崗教師」(農村部の教育水準向上のための特任教員)として同校の体育教師に着任、後に校長に就任した。

 2カ月後、肖さんはサッカーチームを結成し、体育の授業や休み時間、放課後を利用して、子どもたちにサッカーを教えた。肖さんが空高く蹴り上げたサッカーボールは村の子どもたちを「とりこ」にしただけでなく、サッカーの世界への扉を開いた。

サッカーで農村の子どもたちの世界を開く 中国貴州省

車座になって練習内容を振り返る肖選さんと児童。(2023年5月撮影、貴陽=新華社配信)

 サッカーに夢中になる余り学業がおろそかになってはいけないと、チーム結成当初は、宿題が終わるまでサッカーをしてはいけないという決まりも作った。

 李さんは初期メンバーの一人で、チームに加わってから学校の成績もサッカーの技術も目覚ましく向上した。肖さんによると、李さんは5年生の後期からチームに入り、最初はかなり内気で学校の成績もいまひとつだったが、卒業試験の頃にはクラス内順位も真ん中から上に入るようになり、性格もだいぶ明るくなったという。

 普安県では21年から、公安部の手厚い支援の下、学校サッカーの発展を推進しており、同年10月には初の学校サッカーリーグが開幕した。辣子樹小学校男子サッカーチームも出場し、Aグループで優勝した。

 サッカーは子どもたちと世界をつなぐ懸け橋で、肖さんはここ数年、子どもたちを引率して北京市や浙江省杭州市、福建省アモイ市に遠征している。肖さんは「試合結果よりもサッカーの練習をした後の子どもたちの変化を見るのがうれしい」と語った。(記者/鄭明鴻)

サッカーで農村の子どもたちの世界を開く 中国貴州省

学校のサッカー場で練習する辣子樹小学校男子サッカーチームの子どもたち。(2023年8月5日撮影、貴陽=新華社記者/鄭明鴻)

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