IHIインフラシステム/堺市の新社屋で新しい働き方を実践、フリーアドレスを採用

IHIインフラシステムが、本社の移転に伴い新しい働き方に取り組んでいる。2023年5月に堺市堺区の堺工場敷地内に新社屋を建設し、東京と大阪に分かれていた拠点を集約。執務スペースは緩やかなフリーアドレスにすることで、組織を超えた交流を促し、事業戦略の共有や組織としての一体感の構築などを目指す。
新社屋はS造3階建て延べ7581平方メートルの規模。設計・施工は竹中工務店が担当した。外観は高窓を除いて四方の壁に窓がなく、工場ののこぎり屋根のような形状の屋根が特徴。内部は3階までの吹き抜けとなっている。
新社屋にはIHIインフラシステムの生産プロセスを担う設計、生産、建設の各部が入居するほか、子会社のIHIインフラ建設(東京都江東区、森内昭社長)が関西地区に持つ同様の機能も集約する。「2社が一体となって事業構造改革を推進するための働き方を後押しする」(IHIインフラシステム総務人事部)。これによりIHIグループの橋梁事業と鉄構事業の連携を強化。事業構造改革を加速させ、保全・防災・減災事業の拡大を図る狙いだ。
3フロアのうち主に2、3階が執務スペース。部署のエリアだけを固定し、各自の席を固定しない緩やかなフリーアドレスを採用している。IHIインフラシステムの3部のうち、設計部は、不定期にエリアを移動し、顔を合わせるメンバーの固定化を防ぎ、コミュニケーションの活性化を促す。
遠隔臨場といった近年の働き方に対応し、1階には大型マルチモニターを備えたDXルームを設けた。カメラで現場とつなぐことで遠隔臨場や遠隔パトロールを実施したり、発注者に構造物の完成形をVR(仮想現実)で体感してもらったりする。
建物は高窓からの自然採光や放射冷暖房の導入などにより、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)Ready仕様とした。屋根には太陽熱集熱パネルを設置し、食堂の温水に活用している。将来的には屋根全面に太陽光発電パネルを設置し、建物の使用電力の一部を賄う予定だ。
自然採光では特徴的な屋根の高窓から安定的に自然光を採り入れる。屋内の照明は自然光に応じて光量を自動調節することで照明にかかるエネルギーを削減。自然光は天井から吹き抜けに垂れ下がるのれん状のカラフルな布に反射して室内を照らす仕組み。執務環境に適した柔らかな照明を演出している。
外部からの来客などを迎える1階には遊び心のあるデザインが隠れている。1階の天井にはつり橋をイメージしたつり照明「70m光の橋」が架かる。つり橋のワイヤで形成される曲線を、照明をつるワイヤで再現。橋梁建設に携わる企業のシンボルを照明デザインに溶け込ませた。

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