犬のガン予防ワクチンの臨床試験が進行中 有望な結果と意外な効能

アメリカで15年前から始められた犬のガンワクチン研究

ガンは犬の死亡原因として常に上位にあり、治療方法や予防のための対策についても多くの研究が行われています。

罹ってしまったガンの治療や、ガンのリスクが高い犬種の繁殖時の対策とは別のアプローチとして、アメリカでは犬のガンのワクチンの開発が進められています。

The Vaccination Against Canine Cancer Study (VACCS=犬のガンに対するワクチン研究)と呼ばれるこのプロジェクトでは、アリゾナ州立大学、コロラド州立大学、カリフォルニア大学デイビス校、ウィスコンシン大学マディソン校によって臨床試験が進められており、犬のガンに対して行われる試験としては最大規模のものです。

犬に多い8種類のガンを予防するワクチンを目指して

犬のガンに対するワクチン研究は、約15年前にアリゾナ州立大学生命科学部教授のジョンストン博士によって始められ、2018年には大規模な研究基金であるオープン・フィランソロピーから640万ドルの助成金を受け取ることができ、ワクチンの臨床試験が開始されました。

犬のためのガンワクチンは次の8種類の主要なガンを予防することを目的としています。

  • 肥満細胞腫
  • 骨肉腫
  • 悪性リンパ腫
  • 黒色腫
  • 乳腺腫瘍
  • 肺ガン
  • 軟部組織ガン
  • 血管肉腫

治験の参加者は5歳半〜11歳半で体重5kg以上、ガンの既往歴がなく他の重篤な疾病がないなどの資格を満たす健康な犬で、自宅で暮らし年2回の検査を受けています。

参加犬の一部にはワクチンが投与され、残りの犬にはプラセボが投与されています。ワクチン接種かプラセボかに関わらず、治験に参加した全ての犬が将来ガンになった際には診断や治療の費用が提供されます。

有望な臨床試験の結果と意外な効能

臨床試験は進行中ですが現在のところの結果は、ワクチン接種を受けた犬の約65%で腫瘍の数が減少しているとのことです。この数字について研究者はもっと高くする必要があると考えています。

具体的には、このワクチンは肥満細胞腫と副腎腫瘍の大幅な減少を示したが、8種類全てで減少したわけではありませんでした。研究者はこれまでに得た知見を活かして、次のバージョンでは結果を改善できると述べています。また安全性の問題は今まで確認されていないそうです。

さらにワクチンの臨床試験は、ガン予防に加えて予想外の結果を示したといいます。それは関節炎や代謝性慢性疾患の発病率が50%以上減少したことで、ワクチンが老化細胞に対する免疫反応を引き起こしたからではないかと考えられるそうです。

犬のためのガンワクチンが一般的に利用可能になるためには、米国農務省や食品医薬品局の認可が必要になりますがワクチンの開発が成功すれば、ガン治療よりもはるかに安価になると研究者は確信しています。

さらに犬においてガン予防の効果が証明されれば、人間のガン予防にも役立つことが期待されます。

まとめ

現在アメリカで進行中の犬のガンワクチンの臨床試験が有望な結果を示しており、成功の暁には人間のガン予防への応用が期待できるという話題をご紹介しました。

治験に参加している犬の飼い主さんの多くは先代の犬をガンで亡くされていて、このような悲しい思いをする人や犬が減って欲しいという気持ちが参加の動機になったといいます。さらに彼らの多くが、人間の医療への応用も期待しているとのことです。

《参考URL》
https://www.csuanimalcancercenter.org/vaccination-against-canine-cancer-study/
https://news.asu.edu/20180103-discoveries-asu-awarded-64m-grant-test-preventive-cancer-vaccine-dogs
https://www.dailypaws.com/new-dog-cancer-vaccine-8432026

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