【宮城県】「猫碑」保有数日本一! “猫の町”丸森町とは? そもそも猫碑ってナニ? 観光案内に聞く

猫の石碑・石像があちこちにある、宮城県・丸森町。なぜ?

愛らしい姿や仕草や鳴き声で愛される「猫」。家族の一員としてはもちろんのこと、猫モチーフのスイーツや雑貨も人気があります。そんな猫をかたどった石碑、「猫碑」が多く見つかっている町があることを知っていますか? それは宮城県の「丸森町」。猫碑とはいったいどういうものなのか、なぜ丸森町には猫碑が多いのか、『丸森町観光案内所』(宮城県伊具郡)の富倉さんに話を聞いてみました。

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【写真】苔むした古い猫碑。江戸時代に彫られたものもあるそう

宮城県の南端に位置する丸森町は、かつて養蚕・蚕糸業で栄えたという歴史があり、現在でも生業として続けられています。丸森町のように「猫碑」が存在する地域は東北地方や長野県にもあり、いずれも養蚕が有名な場所なのだとか。というのも、猫は養蚕業において欠かせない蚕(かいこ)を食べてしまうネズミを退治してくれる存在だったのです。そこから猫を大切にし“猫神”としてあがめる風習が発生、江戸時代には養蚕のまじないとして「猫絵」が流行したほどだと言われています。

「丸森町は宮城県内でも養蚕が盛んな土地だったという歴史があります。そのため、『蚕や繭にイタズラをするネズミを退治してくれる猫を神様としてまつったり、ねずみ除けや養蚕の豊作祈願として建てた』という話が広く知られていますが、実際のところ、猫碑が多く建てられた理由ははっきりしていないんです」(丸森町観光案内所)

丸森町では猫の形や猫にまつわる文字が彫られた猫碑が現在83基存在します。全国で見つかっている猫碑は160基で、実に半数以上が同町にあるということになります。ゆえに猫碑の保有数は日本一。その中には飼い猫の「供養碑」や「長寿祈願」「祟り封じ」といった意味合いを持つものもあり、建てられた理由が必ずしも養蚕関係ではないことが分かります。

年数が刻まれているものの中で一番古いものでは1810年(文化7年)、新しいものでも1933年(昭和8年)とあり昔から猫と縁の深い町であることがうかがえます。にもかかわらず“猫の町”として知られるようになったのは、意外にも最近のことだといいます。

「丸森町に猫碑が多く猫碑が存在することから、調査がおこなわれました。そして2012年、研究者の石黒伸一朗氏が調査結果をまとめた冊子『丸森の猫神さま』を発刊します。その影響で町内でも『猫の町』としての意識が徐々に芽生え、猫にまつわるグッズや展開もぐんと増えたという印象があります」(丸森町観光案内所)

町をあげてPRをはじめたことで猫好きの観光客が多く訪れるようになり、猫碑を使ったイベントや猫にまつわるグルメやマルシェが出店される「猫神祭」も開催されました。また、町の内外で猫が注目されることで、実際に町で暮らしている猫との向き合い方にも変化が生まれているそうです。

「猫神さまが話題になり『猫の町』として注目されるようになったことで、保護猫活動をされている地域おこし協力隊さんの着任にもつながりました。また『猫神祭』というイベントを通じ、町民の方が正しい猫の飼育について知る・意識する機会も増えました」(丸森町観光案内所)

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「もともと自然と民俗信仰が根付いた土地ということで、石碑というものに祈りを込めていたという背景があります。猫碑もそのなかの一つで、特別なものではなかったようです」と富倉さん。時を経て思わぬ形で注目を集めるとは、当時の人々も予想していなかったかもしれませんね。

(取材・文=つちだ四郎)

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