開幕を目前に控え、充実した練習を積んでいるヴェルスパ大分。今季は走り込む量を増やしたことで選手たちの動きは鋭く、多くの練習試合をこなしたことで共通認識が高まり、チームづくりは順調だ。メンバーの絞り込みは例年に比べ「迷っている」という山橋貴史監督は渋ったが、それは誰が試合に出ても遜色なく戦えるようになった証拠だ。選手には「調子のいい選手を使う」と伝えており、練習から競わせ、コンディションを見極めている。
始動から開幕までの期間、個人・グループ戦術の向上に多くの時間を割いた。練習試合では既存組と新戦力をミックスさせることで、個々のスキル向上と、選手の入れ替わりによるコンビネーション低下の予防を張っている。そんな山橋監督のアプローチが選手のモチベーションを刺激したのか、練習から躍動感がある。
特に激戦区の１トップは、得点力の高い中井崇仁と万能型ストライカーの今村優介が高いレベルで争い、そこに高さと強さを備えるベテランの中村真人らも先発争いに食い込む。それぞれ持ち味が異なり、開幕スタメンの座は最後までわからない。
中盤はこれまでの練習試合を見ると、瓜生昂勢を軸に新加入の福満隆貴、山田恭也との組み合わせが多く試されていたが、石上輝の安定感は昨季から立証済みで対戦相手によって組み合わせを変えることになりそう。
新顔の中で仕上がりの良さを見せるのが鈴木啓太郎。抜群のスピードで相手を切り裂くサイドアタッカーは、周囲との関係性もよく、持ち味を発揮している。鈴木は「大分はうまい選手が多く、自分のプレーを理解して、生かしてくれる。抜け出すタイミングでパスがくるのでドリブルを加速できる」と手応えを感じている。
守備は４バックがラインを高く保ち、攻撃的なサッカーを支えている。ただ、練習試合では簡単にボールを失い、１対１の局面で劣勢になる場面が目についたため、この部分は開幕までに改善が必要だろう。
開幕ダッシュをもくろむ山橋監督は「J３昇格を狙うには最初の３試合でいいスタートを切らなければいけない。隙をなくし、勝負強さが必要。内容も大事だが結果にこだわりたい」と、開幕勝利を誓った。
（七蔵司）
