万代と日本総研が脱炭素の取り組み開始! 業界を横断して考案した売場の工夫とは

日本総合研究所(東京都:以下、日本総研)と万代(大阪府)はメーカー各社などと協業し、来店者が脱炭素への学びを深め、取り組むことができる「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」の店舗実証実験を実施した。ドラッグストア企業も参加し、業界を横断した協力体制を築いて売場を構築し、脱炭素に向けた取り組みを加速させていく。

業界を横断して行われる「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」とは

日本総研と万代、スギ薬局(愛知県)、Daigasエナジー(大阪府)、アサヒグループジャパン(東京都)、アスエネ(東京都)、サラヤ(大阪府)、三幸製菓(新潟県)、日本ハム(大阪府)、ユーグレナ(東京都)は、脱炭素社会をめざすことを目的に「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(Challenge Carbon Neutral Consortium)」を設立。参加企業同士の情報交換・勉強会や「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」「脱炭素に関する情報発信・啓発活動」の3つの活動を展開している。

この活動の一環として「万代高槻インター店」(大阪府高槻市:以下、高槻インター店)で、1月18~28日に、実証実験「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」(以下、減CO2プロジェクト)が実施された。

同プロジェクトでは、来店者が脱炭素について学びを深められる仕掛けマシンや特設棚を店内に設置。来店者の脱炭素に繋がる意識や行動の変化を促す。主なターゲットは、高槻インター店に訪れる子連れ客だ。同店店長の山中一高氏は「土日集客型の店舗で、休日を中心に子連れ客が多く訪れる」とし、週末はおよそ80~100人の子連れ客が各コンテンツを楽しんだという。

来店客が脱炭素に興味を持つ売場づくりとは

高槻インター店で行われた減CO2プロジェクトを詳しく見ていこう。まず、店の入口近くには「減CO2モンスターをやっつけろ」と題した大型ゲーム機「仕掛けマシン」を設置。

「仕掛けマシン」は、仕掛けを通じた行動変容を研究する大阪大学の松村教授の協力で制作した

「減CO2(ゲンコツ)」と声に出して参加券を手に入れ、機械にパンチすると「減CO2モンスター」を倒す、という仕組みだ。「減CO2モンスター」は、脱炭素に悪影響な日常的な習慣などをモチーフにしており、自然と脱炭素について学びを深められる。

参加者にはオリジナルキャラクターとともに店内に設置されたクイズを見ながら謎解きをする「減CO2ナゾトキ大作戦」への参加を促す。LINEに答えを打ち込み、全問正解すると抽選でプレゼントが当たる。

イメージキャラクターは、地球温暖化が進んだためコタツに入れなくなって困っているという設定の「ニャートラル」(左)と「ギャートラル」(右)

店内には特設棚を設置する。ナゾトキのクイズのほか、のぞき穴を見ながらレバーを回すと脱炭素に関する物語が展開される「のぞきからくり絵本」などがある。さらに、特設棚の上には脱炭素に配慮した商品を並べる。こうした商品の詳細は、「みんなで減CO2プロジェクト」アプリをダウンロードして、商品横のQRコードを読み取れば「『アサヒ十六茶シンプルecoラベル』は、商品全体に巻かれているラベルをなくすことで、プラスチックの使用量を最低限に抑えている」といったふうにその詳細を見ることができる。

売場では親子連れがこうしたコンテンツを楽しみながら脱炭素について学ぶ光景が多く見られているという。「CO2削減は目に見えづらいものだからこそお子さんでもわかりやすいように、ゲーム感覚で脱炭素に取り組んでいただけるよう工夫を凝らした」(日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門グリーン・マーケティング・ラボ ラボ長佐々木努氏)。子供が興味を持ったことをきっかけに、その両親の行動や意識の変容も促していくことをねらう。また、脱炭素に関わる商品の購買数も伸長させていきたい考えだ。

実証実験後はPOSデータから脱炭素に配慮した商品の売上の伸びを分析するほか、アプリからのアンケート結果を通じて、その効果を計っていく。

サステナビリティ推進のイメージ醸成もねらう

「減CO2プロジェクト」の始動にあたっては、23年9月から、日本総研と万代のほか、アサヒグループジャパンや、三幸製菓、日本ハムなどの担当者が隔週で会議を行った。会議では、勉強会や各社からのアイデア出しなどを入念に行ったうえで、今回の売場づくりに繋げた。

左から万代取締役頓宮博氏、同経営企画室マネージャー花岡真也氏、日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門グリーン・マーケティング・ラボ ラボ長佐々木努氏

脱炭素に取り組むメーカーは、商品がいかに脱炭素に寄与しているかを伝えたいと考える一方で、「プラスチック削減のためにラベルを小さくすると、取り組みに関する説明を記載するスペースがなくなるなどのジレンマを抱えていた」(佐々木氏)。そこで、今回のような”楽しく学びたくなる”仕掛けづくりで企業がどのような取り組みをしているかまで来店客に知ってもらえる仕組みを考えた。

また、佐々木氏は「売場づくりに関しては、万代やメーカーの皆さまの知見をお借りした」と話す。たとえば、特設棚は主通路上のエンドに設置。その向かい合わせに位置する平台や、特設棚のエンドから主通路を進んだ先にある棚の目線位置に脱炭素商品を置き、自然と商品がお客の目に入るといった工夫を凝らしている。

特設棚向かいの平台にも脱炭素商品を設置

他方、万代取締役の頓宮博氏は「食品スーパーの特性上、電気やエアコンによってCO2が排出されてしまう。そのため、いち小売企業として脱炭素に取り組むのは社会的使命であると考えている」と話す。しかし、これまで環境に配慮した取り組みをしてきたものの、「サステナビリティを追求しているというイメージはお客に浸透していなかった」と話す。今回の取り組みをきっかけに、脱炭素に向けた取り組みを加速させるとともに、環境配慮型の企業であるというイメージを醸成していきたい考えだ。

今回の取り組みに参加した各社は「業界を横断した脱炭素の取り組みに意義を感じている」(万代経営企画室マネージャー花岡真也氏)という。今後、さらなる取り組みの拡大が期待される。

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