M-1王者の令和ロマン、2位のヤーレンズも! 先見の明が光る沖縄・那覇のライブハウス「Output」、お笑いイベント仕掛け人の思いは

Output店長の上江洲修さん=2月、那覇市牧志

 大きなギターアンプ、どっしり構えたドラムセット、輝くミラーボール…。そんな「まさしくライブハウス」でありながら、お笑いイベントにも力を入れているのが、那覇市牧志のライブハウス「Output」だ。
 毎月4本前後のお笑いイベントが開催されており、主催イベント「Output LAUGH PROJECT」では、昨年末のM-1グランプリ優勝の令和ロマン、準優勝のヤーレンズをそれぞれM-1前の2023年9月、5月に招くなど先見の明が光る。
 沖縄に根差したライブハウスとして、お笑いにどう向き合っているのか。これまでに12回を数えたOutput LAUGH PROJECTの仕掛け人で、店長の上江洲修さんにその思いを聞いた。(フリーライター・長濱良起)

きっかけは「コロナ禍」  直当たりで縁つなぐ

Outputでの音楽イベントの様子=2024年1月

 Outputは、2012年のオープン以来、単にライブハウスとして場所を提供するだけではなく積極的にイベントを主催し、沖縄のカルチャーシーンをミュージシャンらと一緒になってつくり上げてきた。県外と沖縄のミュージシャンの共演に力を入れてきたのも特徴だ。県外勢は沖縄での集客につなげられ、沖縄勢は新たな刺激や自信を得られる相乗効果がある。

 その相乗効果をお笑いでも発揮したいと、2022年10月に始めたのが、前述のOutput LAUGH PROJECTだ。

 上江洲さんは語る。「コロナ禍で、初恋クロマニヨンとリップサービスがOutputで毎月お笑いライブを企画していたんですよ。頑張っているなぁという気持ちがあって。私たちでもイベントを主催して、恩返しというか、キャッチボールをどんどんしていきたいなと思った」

 決してお笑いに明るいわけではなかった上江洲さんだが「お笑いの美学に魅了されました。マイク1本を前にして人を笑わせられるのって、すごいなぁと」。それからエンジンがかかり、各所にアンテナを張りだした。「YouTubeとかで面白い芸人さんを探してきて。意識して(TBSの情報バラエティー番組)『ラヴィット!』を見るようにしています」

 それからは直接ブッキングだ。InstagramやXで、イベントに呼びたい芸人にダイレクトメッセージで企画書を送り、マネージャーにつなげてもらった。こうして声をかけていった中に、後のM-1王者・令和ロマンもいた。

ドンピシャのタイミング 沖縄の「定説」なんのその

 今年3月10日には、桜坂劇場とコラボしてOutput LAUGH PROJECTのスペシャル版イベントを開催予定だ。これまでLAUGH PROJECTに出演した令和ロマンやヤーレンズをはじめ、虹の黄昏、街裏ぴんくら全国の芸人が「帰ってくる」形で、しんとすけやリップサービス、初恋クロマニヨン、ありんくりんなど沖縄勢の芸人と共演する。

イベント「Output LAUGH PROJECT アベンジャーズ SPECIAL」のポスター

 スペシャル版の出演者ブッキングは、昨年9月にほぼ終えていた。M-1でいえば準々決勝の頃。令和ロマンとヤーレンズの決勝進出が決まった昨年12月7日は、LAUGH PROJECTのイベント告知開始前日だった。まさに「ドンピシャ」のタイミングだ。「M-1決勝に出るようなコンビが、前々からLAUGH PROJECTに出てくれていたのがうれしかったです」(上江洲さん)

 沖縄には知る人ぞ知る、こんな定説がある。イベント当日の数日前までチケットがあまり売れず、直前になって一気にチケットが売れ出すため、主催者側が客入りを読めずにハラハラする、というものだ。だが、今回は手に取るように売れ行きが分かった。令和ロマン、ヤーレンズ、さや香の3組が最終決戦に残ったタイミングで一気にチケットが売れ出し、令和ロマンが優勝を決めた段階でさらに爆増。翌日には売り切れた。

「沖縄拠点に活動するコンビをM-1決勝に!」

 「沖縄からもM-1決勝に出るコンビが出てほしいです」と語る上江洲さん。沖縄県出身者としては2010年、2016年にスリムクラブが決勝に進出した。さらに幅を広げると、3歳から13歳まで沖縄に住んでいたというミルクボーイの駒場孝さんが2019年王者に輝いている。しかし「沖縄を拠点に活動している」という意味では、まだ誰も、その高き壁を乗り越えられていない。

 沖縄のタレント事務所オリジン・コーポレーションの代表で、お笑いコンビ・しんとすけの首里のすけさんは、LAUGH PROJECTの意義を「最前線にいる東京の芸人と共演する機会が増えて、刺激を頂いています」と語る。その経験は沖縄芸人の糧となる。

 上江洲さんは「Outputは『那覇の真ん中で何か常に面白いことをしている』という場所でありたい」と話す。店名の意味そのままに、音楽もお笑いもトークも全部ひっくるめて「現場」からカルチャーを発信し続けている。

音楽、お笑い、トークライブなど、これまでの多様なイベントフライヤーがずらりと並ぶ楽屋の壁=2月19日、那覇市のOutput 

次回の「Output LAUGH PROJECT」は

 次回のイベント「Output LAUGH PROJECT」は5月に開催する。

「Output LAUGH PROJECT VOL.13」2024年5月9日(木)ラブレターズ × 初恋クロマニヨン × 知念だしんいちろう NAHA CITY LIVEOPEN19:00 START19:30前売¥3,000 当日¥3,500(1DRINK代別)

 チケットの問い合わせは電話、098(943)7031(Output)まで。

 お店データ:ライブハウス「Output」
 那覇市牧志2-3-22 高良産業ビル2階

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