運転免許「お試し自主返納」が利用好調 高齢ドライバーが返納後の生活体験

県警が経過報告

 滋賀県警は、高齢ドライバーを対象に昨年5月以降実施した運転免許の「お試し自主返納」サービスの利用状況を発表した。公共交通機関の割引を受けるなどしながら自主返納後の生活を体験するもので、当初の想定を上回る応募があった。返納につながった人も多く、県警は「一定の効果があった」と胸を張る。一方、交通の便などを巡る地域差も改めて浮き彫りになった。

 県警交通企画課によると、昨年1年間に県内では2767件の交通事故が発生し、うち65歳以上の高齢者が運転手だった事故は625件と、22.6%を占める。事故全体における高齢ドライバーの割合は高齢化を背景に増加傾向にある。一方、昨年1年間の死亡事故43件のうち高齢ドライバーによるものは7件(16.3%)で、38件中8件だった前年の21.1%と比べると、高齢ドライバーの割合は下がっている。

 運転免許を自主返納した高齢者は、大津市で散歩中の園児らの列に車が突っ込み、16人が死傷した事故が起きた2019年に6300人を超えたものの、翌年以降は減り続け、昨年は前年比398人減の4348人にとどまった。

 県警は自主返納を促すため、昨年5月に「お試し自主返納」を実施。車のない生活を1カ月程度送り、自主返納した際のメリットを体験する。参加者に交付される証明書と免許証を提示すると、公共交通や商業施設などで特典を受けることができる。

 募集人数は当初200人だったが、想定を上回る申し込みがあり、急遽(きゅうきょ)100人を追加。11月に受付を終了した。彦根市110人、大津市85人、長浜市35人の順で参加者が多かった。

 今年1月末までに体験を終えた219人のうち、46人が実際に自主返納した。県警が行ったアンケートでは、「運転を継続する」が115人、「自主返納する」が65人、「検討中」が26人となっており、自主返納はさらに増える見込みという。

 138人がお試し期間中に「家族・知人の車に同乗」して過ごしたと回答。「車の維持費などの経済的負担が軽減されることが分かった。生活スタイルについて再考する機会となった」などの感想があったという。

 一方、「行動範囲が狭くなった」「公共交通機関の乗り換え・乗り継ぎが不便」という意見も多く、104人が「買い物・通院が不便」なため、運転を継続すると答えた。

 交通企画課の伊吹貴也調査官は、「車がないと生活できない地域はある。運転する際は、体調が優れない時や悪天候、夜間、通勤通学時間帯の運転を控える、行き先は近距離にするなど十分注意してほしいし、不安を感じるなら自主返納を考えて」と呼びかけている。県警は、予算案が可決されれば来年度もお試し自主返納を実施する方針という。

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