「相手が刃物を持っていたら死んでいた」 見知らぬ「おじさん」から膝蹴り、誰も助けてくれない雑踏の無関心

女性は駅構内の階段で「ぶつかりおじさん」に遭遇したといいます。写真はイメージです(ひでと / PIXTA)

駅などの人ごみで、わざと「体当たり」してくる「ぶつかりおじさん」。

弁護士ドットコムニュースは2月から「ぶつかりおじさん」に被害を受けた体験談を募集し、記事にしてきました。

今回取り上げる女性は、被害後に医師から「相手が刃物を持っていたら死んでいたよ」と言われたそうです。

●奇声を発する男性からひざ蹴り

2015年11月24日午後8時ごろのことでした。不動産業の会社員だった女性(当時55歳)は、職場からの帰り道、JR新宿駅の構内を移動していました。

山手線から中央線に乗り換えるため階段を登ろうと歩いていたとき、前方からきた40代後半〜50代ぐらいの男性からひざ蹴りを受けました。

女性は当初、その男性が奇声を発しながら歩いているのに気づいたため、避けるように進もうとしていましたが、目が合った瞬間、男性が女性のほうを追いかけて蹴ってきたといいます。

「声を出せないくらい痛かった。骨が折れたかと思いました」。女性は一旦、その場にうずくまりましたが、「またあの男が戻って来たら…と恐怖を感じ、ホームへの階段をなんとか登って電車に乗りました」。

ひざ蹴りを受けた女性の左足太ももには、青あざができました。

●被害後は大きな人の後ろを歩くように

女性は数日後、病院で打撲と診断されたものの、医師から「もしその男が刃物を持って刺していたら、ほんの数秒で死んでいたよ」と説明されました。

医師からは「悲鳴を上げる練習をしなさい」ともアドバイスを受けたそうです。

女性はその後、30分ほど余計に時間がかかるルートを使って遠回りして帰宅するように。人ごみでは、大きな体格をした男性の後ろを歩くようにするなど気を使うようになりました。

女性は現在、金融機関に転職して働いていますが、転職する際は新宿駅を使わなくてよい職場を必須条件にしました。

●被害時の周囲の無関心が「悲しい」

女性によると、ひざ蹴りをしてきた男性は小柄で作業服のような服を着ていて、目つきが悪かったといいます。

女性の身長は160センチで、当時は黒系のコートにスラックスという目立たない格好をしていました。

狙われた理由について、「たまたま私と目が合ったからだと思います。そういう人は絶対に自分より体の大きな男性は襲わず、弱い女性や年寄りを狙うんだと思います」と話しました。

また、被害に加えて残念だったことがありました。

女性がひざ蹴りされたとき、周囲は混雑していましたが、うずくまる女性に誰も声をかけてくれなかったことです。

突然の被害だったため、女性は「私も頭が真っ白になっていたので、誰かに助けを求めることができませんでした。誰一人として助けてくれなかったことや声かけさえしてくれなかったことは悲しい。他人に無関心すぎます」。

近くに駅員を見つけられなかったことにも触れ、「もっとセキュリティを強化してほしい」と話しています。

© 弁護士ドットコム株式会社