介護システム市場に関する調査を実施(2023年)~介護システム市場規模は微増で推移する見込み、介護サービス事業者の統合や連携により、介護システムベンダーの切り替え・統合が進展する見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の介護システム市場、高齢者向けICTサービス市場(在宅向け見守りサービス、施設向け見守りサービス)を調査し、市場規模推移、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、介護システム市場の動向について、公表する。

1.調査結果概要

国内の介護システム市場はリプレイスが中心で、新規施設・事業所の開設やM&Aなどによる経営法人の変更などで、介護システムベンダーの切り替え・新規導入が行われている。
2022年度の介護システム市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比102.8%の252億1,300万円と推計した。介護サービス事業者はコロナ禍での資金繰り支援効果が薄れ、光熱費や燃料費、食品やその他物品の価格高騰、介護人材不足などから経営環境が悪化しており、システムの導入が先送りとなるケースが見受けられた。
2023年度は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し行動制限の緩和が続いたものの、物価高や人材不足などの状況は変わらず、引き続き介護サービス事業者は厳しい経営状況にあった。また2024年度に介護報酬改定があるため、2023年度も事業者はシステム導入を先送りすることが考えられ、市場規模は微増程度で推移すると予測する。

2.注目トピック~介護サービス事業者の統廃合の増加により、介護システムベンダーの切り替え・統合が進展

介護サービス事業者は、介護報酬によるサービス料金が固定されているため、慢性的な人手不足の中で、光熱費や燃料費、食品やその他物品の価格上昇分をサービス料金に転嫁できない状況で経営を行っている。特に小規模や零細な介護サービス事業者の淘汰は加速しており、今後も厳しい環境は継続していくことが推察されるため、介護サービス事業者の統合や廃業は増加していく見込みである。
また、政府は生産性向上の観点から、福祉・介護人材の確保や、社会福祉法人の経営基盤の強化、地域共生の取り組みを推進すべく、2022年4月から「社会福祉連携推進法人制度」を施行し、社会福祉連携推進法人の立ち上げを支援している。厚生労働省によると、2023年10月時点では社会福祉連携推進法人の認定数は20法人にとどまるが、今後は法人数が拡大していくことが考えられる。
上記のような介護サービス事業者の統合や連携時には、業務の生産性向上とコスト削減の観点から、介護保険請求業務を含めた様々な介護システムベンダーの切り替え・統合が進む見通しである。

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