飛距離で若手に対抗!? 森田理香子、穴井詩、藤田さいき ベテラン三者に見る“飛ばしのポイント”とは

日本女子プロゴルフツアー開幕戦となるダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントでは、21歳の岩井千怜が優勝した。

岩井と優勝を争ったのは、今季から米ツアーが主戦場となる22歳の西郷真央。今季も若手が女子ゴルフの顔になりそうだが、ベテラン組にも活躍を期待される選手が多くいる。

ダイキンオーキッドのドライビングディスタンス1位と2位は、36歳の穴井詩と34歳の森田理香子。この2名に今季最年長日本人シード選手の38歳の藤田さいきを加えた3名は、衰え知らずの飛距離を武器にしたプレーで、若手に対抗していきそうだ。

◆森田理香子が記録した驚きの「300ヤード」 6年ぶりでも衰えない“美スイング”で飛ばし屋たちをおいてきぼりに

■元賞金女王の森田理香子

2013年シーズン賞金女王の森田は、アプローチイップスなどの影響により成績が振るわず、ツアーから離れていた。ダイキンオーキッドが2018年6月のニチレイレディス以来のツアー出場となった。

賞金女王になった頃は、ドライバーの飛距離を武器に攻めのゴルフを展開。女子ツアーでドライビングディスタンスの計測が始まった2017年は255.24ヤードを記録した。規定ラウンド数不足のため、ランキング対象外だったが3位相当の記録だ。

長いブランク空けでどのようなプレーをするか注目されたダイキンオーキッドでは、255.625ヤードを記録。1位の穴井にわずか0.375ヤード差の全盛期を彷彿とさせる飛距離を叩き出した。

飛距離を出せている理由は下半身の使い方にある。

バックスイングからダウンスイングへの切り返し以降、左足に体重を乗せていくわけだが、現在はこの時に踏ん張って左脚を固めずに、スクワット的な縦の力を使いながら左サイドをターンさせるイメージを膨らませることが、功を奏しているようだ。

女子ツアーの規定では主催者推薦で年間8試合まで出場できる。ダイキンオーキッドは36位タイに入り、まだやれることを証明した。実戦感覚を取り戻していけば、優勝争いに加わることがあるかもしれない。

■穴井詩は昨季2勝 ドライビングディスタンス1位

ツアー通算5勝の穴井はドライビングディスタンス上位の常連。2017年が3位、2018年が2位、2019年が1位、2020-21年が3位、2022年が1位、2023年が4位だった。

ティーショットが飛ぶことでグリーンを狙うショットの距離が短くなる。よってパーオン率が高い。2014年、2018年、2019年、2020-21年、2023年にパーオン率で70%を越え上位10名に入っている。

穴井のスイングの特徴は「ストロンググリップ」「シャットフェース」。

スイング中フェースが開きっこないほどのストロンググリップにすることで、球がつかまらないリスクを抑えている。

このグリップでノーコックでテークバックするため、シャフトが地面と並行の時にフェースはほぼ地面を向くように閉じている。閉じたフェースはトップオブスイングでも保たれており、フェースが上(空)を向いているシャットフェースになる。

基本的にゴルフクラブの構造はフェースが開く。よって、スイング中、適切にフェースを閉じる力をクラブにかけていく必要がある。

穴井は、自然とフェースを閉じる力がかかるグリップを採用することで、シンプルにクラブを強振することに集中できていることが、30代後半に差し掛かった今も、ドライビングディスタンスでトップレベルを維持できている理由の一つに挙げられるだろう。

■日本人最年長シードの藤田さいき

藤田はもともと飛距離が出る方ではあったが、30歳を過ぎて飛距離を維持しているというよりも、伸びていると言う方が適しているかもしれない。その飛距離を武器に2022年は11年ぶりの優勝を果たし、メルセデスランキング10位となった。

ドライビングディスタンスは2017年が20位、2018年が22位、2019年が11位、2020-21年が15位、2022年が8位、2023年が18位となっている。

飛距離水準向上傾向にともない、パーオン率も向上傾向。2017年が22位、2018年が31位、2019年が36位、2020-21年が12位、2022年が11位、2023年が12位となっている。

藤田のスイングの特徴は、体のスライドが大きいこと。始動では頭や上体を右足の上に移動させながら右足に体重を乗せ、ダウンスイング以降は左足に体重を移動させながらビハインド・ザ・ボールでインパクトし、無駄なくボールに力を伝えている。

今季も進化しているショットを武器に‟攻撃力健在”といきたいところだ

■明治安田レディス 3名とも出場

7日から高知県の土佐カントリークラブで明治安田レディス ヨコハマタイヤゴルフトーナメントが開催されるが、森田、穴井、藤田、3名とも出場する。

昨年大会に穴井と藤田が出場したが、ともに予選落ち。森田も最後に出場した2018年大会(2019年まではヨコハマタイヤゴルフトーナメント PRGRレディスカップ)では予選落ちだった。

歴代優勝者にはステディなプレースタイルの面々が名を連ねていることからも、飛距離のアドバンテージをスコアに結びつけることが難しいコースなのかもしれない。

だが、2013年大会では森田が3位、穴井が4位タイ。藤田は2015~2017年、3年連続でトップ10に入った。この3名の上位進出もありえなくはない。‟豪快なベテラン達”に要注目だ。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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