カワイイを収集して魅力的な女の子を描くイラストレーターさめない

SNSに次々とアップされるカワイイ女の子のイラストが話題を呼び、さまざまな雑誌などで魅力あふれる女の子たちのイラストを手掛けるイラストレーターのさめないさん。

こだわりを英語にするとSticking(スティッキング)。創作におけるスティッキングな部分を、新進気鋭のイラストレーターに聞いていく「イラストレーターのMy Sticking」。今回は、さめないさんに女の子を描くときに大事にしていることや、そのこだわりについてインタビューした。

推しができたら描く女の子たちもメイクを始めた

――普段はどのような活動をされているのでしょうか?

さめない:似顔絵や雑誌の挿絵、ミュージックビデオやグッズなどのお仕事でイラストを描いています。メイクにこだわった女の子のイラストがほとんどですね。

――メイクにこだわった女の子を描くようになったキッカケは?

さめない:そもそも、私自身はメイクに全く興味がなかったんですけど、あるときからK-POPにハマって推しができて、以前よりも自分の身なりに気を使うようになって、それからメイクに興味を持ち始めたんです。

そしたら、自然とイラストの女の子もメイクを始めたって感じですね。私が“メイクしてて楽しいな”って思う気持ちが絵にも出てるんだと思います。“肌をツヤツヤにしてみよう”とか“まつ毛を束にしたらカワイイかな”とか、細かいこだわりが出るようになりました。

▲イラスト:さめない

――女の子を描くときに特にこだわっている部分はありますか?

さめない:幼い頃から女の子の絵を描くのは好きでした。お姫さまとか魔法少女とか、そういうカワイイ女の子が大好きでした。以前、コミックエッセイを描いていたときは、自分が描く“絵の女の子に自分の気持ちを表してもらっていた”ような感じがしてたんです。

それが、最近は自分を表現しているというよりは、アイドルとかを見て“カワイイ”って感じるように、自分もその絵の女の子を見ている立場になって、目が離せなくなる女の子を描きたいと思っています。

――自分で推しを描いてるみたいな。

さめない:そうですね。“こんな子いたらカワイイだろうな”っていう気持ちで描いてます。カワイイ女の子を見たときに感じるトキメキを収集して、それを絵で出力して“カワイイ!”と思ってます(笑)。

――究極の自給自足ですね。うらやましいです(笑)。可愛らしく見せるために一番気をつけていることはなんですか?

さめない:雰囲気に合わせてメイクを考えているんですが、すごく楽しいんですよ! リップの色を抑えめにしたりとか、絵の雰囲気に統一感が出るメイクになるように気をつけてます。

――さめないさんの絵のメイクは実際に参考にしたくなります。

さめない:ホントですか!? ありがとうございます。

――唇と目が特徴的ですよね。カワイイのバリエーションもすごく豊富で。

さめない:そう言っていただけるのはうれしいです。私もいろんな系統の女の子を描きたくなる気持ちがあるので。“今日はクールな感じでいこう”とか“今日はふわふわした子を描こう”とか、自分の気持ちに合わせて描いてます。カワイイ女の子を見たらインスピレーションが湧いて「描こう!」ってなりますね。

描いてる女の子の素顔は自分でもわからない

――女の子を描かれるうえで、その子たちのバックボーンなども考えたりしますか?

さめない:昔は、ほぼ自分を投影した子を描いて、自分の感情を表現してもらってたんです。でも、最近描いてる絵は、好きな子とかモデルを見ている感覚で描いてるので、自分でも素顔がわからないという感じですね。

シチュエーションとかは舞台をセットする感覚で、“衣装はこんなのが似合うかな?”とか考えるんですけど、素顔はわからないです。私自身が“この子はどんなことを考えてるんだろう?”って思いながら描いてるところはありますね。

――それはすごいですね! スタジオでモデルさんの写真を撮ってるみたいな感じですか?

さめない:まさにそうです。私生活はナイショみたいな。“この子の素顔は、どんな感じなんだろうな?”って考えながら、私自身が知りたいと思って描いてるかもしれないです。だから、生い立ちとかも全然わからないです。

――さめないさん自身が、描いてる女の子のファンってことですね。

さめない:そうですね。自分でも言ってて不思議な感じです。

――さめないさんって、カワイイを感じる力がすごくありますよね。

さめない:たしかに“カワイイ”と感じる幅が広いかもしれないですね。カワイイ収集が上手なのかもしれないです。

――女の子を描くときに参考にされてるものってあるんですか?

さめない:ポーズを取らせることが本当に難しいので、恥ずかしいんですけど、だいたいは自分でポーズを取って写真を撮ってます。絵を描いて、すぐに写真を消したくなるくらい恥ずかしいです(笑)。

▲イラスト:さめない

素朴な雰囲気を出せたら思って描いてます

――さめないさんの絵は暖かみがある印象なんですが、絵を描かれている環境を教えてください。

さめない:地元が福井県なんですけど、基本は家で描いてます。地元が田舎なので、のどかな雰囲気なんです。家の真横が海なんですよ。空も広くて、冬は雪で真っ白になるし、夏は浜辺で寝転んで流れ星を見たりとかしてるんです。

私の絵はカワイイ女の子がキラキラしているけど、のんびりしてるとか、暖かみがあると言っていただけることが多くて。私が住んでる環境の影響もあるのかなと思います。最近は都会的な女の子をよく描いてますが、私自身は素朴な雰囲気や田舎が好きなんです。そんな自分の性格とか地元の雰囲気とかが絵にも出てるのかなって。

――たしかに、最近の絵も都会的でもありますが、柔らかな暖かみが感じられる女の子たちですよね。そして女の子たちが着てる衣装も、すごくカワイイですよね!

さめない:ホントですか? いつもすっごく悩みながら“どうしよう……”と思ってるんです。メイクを考えるのは得意になってきたんですけど、服は頭を悩ませながら描いてます。色味も難しいんですけど、形はもっと難しいので、いろんな資料を参考にしながら、絵の雰囲気とか色味に合わせて髪飾りや衣装を頑張って考えてます。

▲イラスト:さめない

――衣装はセンスが如実に出てくるところだと思うので、さめないさんはそのセンスも素晴らしいと思いますね。カワイイですし、どれも着たくなる服です。“この服、どこで売ってるんだろう?”って。

さめない:ちょっと不安に感じていたポイントなので、とてもうれしいです。顔をメインで描いているので、チラッと見える服で悩むことが多いです。“顔は邪魔したくないけど、カワイイ服を着せてあげたい”って。

――メイクも衣装も考えて、さらに髪型も考えて……トータルコーディネートですね。

さめない:そう言われてみると、たしかに全部やってますね。しかも、自分でポーズ取ってるからモデルまでやってる(笑)。

子どもの頃は10年間バレエをやってました

――イラストを描くときに使っているツールはどのようなものですか?

さめない:iPadでProcreateというソフトを使って描いてます。手書きのタッチが残っている絵が好きなので、鉛筆ブラシというのを多用して手書き感を出すようにしています。

――かなりアナログタッチですよね。水彩のにじみがあったり、線が残っていたり。デジタルだとバシッと決めてる人が多いと思いますが。

さめない:バシッと決めたときに、しっくりこなかったんです。ラフな雰囲気なほうが可愛く見えたんですよ。描き込めば描き込むほど、“さっきのほうが雰囲気あったかも……”ってことがよくあったんです。キレイさと暖かさの両立みたいなものを研究しながら描いている感じですね。

――スタイリッシュな衣装を着ていても、暖かみが感じられるギャップがまた良いと思います。アナログでも描いたりはするんですか?

さめない:SNSには載せていないのですが、最近、久しぶりに紙と鉛筆で絵を描いてます。スケッチブックに水彩画を描いたりもしました。iPadとは描く感覚が違って、リフレッシュにもなってます。やり直しがきかないところが刺激になりますね。練習したら仕事の絵も上達するんじゃないかな? という気持ちもあって、趣味としてアナログはやってます。

――さめないさんのアナログ絵すごく見たいですね!

さめない:チラッとインスタのストーリーにあげたことはありますけど、他には載せてないですね。

――見たい人は多いと思いますよ。

さめない:載せようと思って描くと人の目を気にして描いちゃうところもあるので、趣味じゃなくなっちゃうかも……。すごい上手に描けたら載せますね(笑)。

――子どもの頃は、どんなお子さんだったんでしょうか?

さめない:子どもの頃は10年間バレエをやってました。高校で美術部に入ったときに、放課後にバレエがあるから部活に行けないってことがあったんです。顧問の先生に「絵のコンクールもあるから、どちらかに集中したほうがいい」って言われて。ちょうどバレエを始めて10年の節目の年だったし、バレリーナになるためにバレエを続けていたわけじゃないので、美術部を頑張ろうと思って、そこでバレエをやめました。

――バレエって指先まで意識して踊るんですよね。さめないさんの絵は、手がキレイだなと感じるので影響があるような気がします。

さめない:10年もやってたので、自分でも気づかないうちに何かしらは出てるかもしれないですね。

――『sweet特別編集 占いBOOK』(宝島社)の表紙イラストも手が印象的でした。

さめない:たしかに! あの手はバレエっぽいかもしれないですね。私がポーズ取ってモデルやってるので、バレエが役立ってるかもしれないです(笑)。

――今後やってみたいことはありますか?

さめない:個展をやってみたいです。いつも絵を見てくださってる皆さんに、会ってお礼をしたいですね。インスタだと海外から見てくれてる方もいるので、海外の方に向けて何かできたらなと思ってます。そのためにも、もっといっぱい練習して、自分が満足いく作品をたくさん描けたらなと思います。

(取材:山崎 淳)


© 株式会社ワニブックス