マット・マーフィー、BBCニュース、ワシントン
世界的に人気のポップス歌手、テイラー・スウィフト氏が5日、大統領選の候補を選ぶ予備選・党員集会に投票するよう、ファンに呼びかけた。5日は15州と1つの米領が一斉に、候補者を選ぶ「スーパーチューズデー」。
インスタグラムで2億8200万人のフォロワーを持つスウィフト氏は、「今日投票するのを、予定に入れて」と促した。
スウィフト氏は2020年大統領選では民主党のジョー・バイデン氏を支持したが、今年11月の本選に向けてはまだ誰についても支持を表明していない。
5日のインスタグラム・メッセージでも、スウィフト氏は支持を明示せず、代わりに、自分に近い投票所はどこか確認するよう呼びかけた。
「みんなに念押ししたいのは、あなたを誰よりも代表する人を選んで権力の座に送るようにってことです。まだ投票してないなら、今日投票するのを予定に入れてください」と、スウィフト氏は書いた。
「あなたがいるのがテネシーでも、アメリカのほかのどこかでも、vote.orgで自分の投票所の場所と投票時間を確認してください」と、スウィフト氏は続けた。
多数のグラミー賞を受賞しているスーパースターのスウィフト氏はソーシャルメディアで、バイデン大統領やドナルド・トランプ前大統領をはるかに上回るフォロワーを得ている。アメリカの成人の間の支持率も、両氏を上回り、登録有権者の40％がスウィフト氏を好感すると答えている。
バイデン大統領が2月末に放送された深夜トーク番組に出演した際、司会のセス・マイヤーズ氏に、スウィフト氏の支持表明を得ようとしているのか質問されると、バイデン氏は「それは機密事項だ」と笑った。
ホワイトハウスの定例記者会見では2月27日、スウィフト氏がこれまでバイデン氏への支持を公言していないことについて質問が出た。カリーン・ジャン・ピエール報道官はこれに、「テイラー・スウィフトが何を言い、何を言わないかについて、私はコメントできない」と答えた。
しかし、スウィフト氏がバイデン大統領を支持すると公言すれば、数百万人の若者票が期待できるとあって、ホワイトハウスはスウィフトさんの支持表明を強く求めていると考えられている。米メディアは今年、バイデン陣営が求める支持表明の中でも、「最大で、一番影響力が強い」のはスウィフト氏だと伝えた。
昨年9月には、カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム州知事（民主党）は、スウィフト氏にもっとバイデン氏の選挙運動にかかわるよう促した。
バイデン大統領を強く支えるニューサム知事は、共和党候補たちの討論会の後に記者団に対して、「テイラー・スウィフトは傑出していて、同じような人はまったくいない」と話した。
「彼女は若者を奮い立たせた。自分たちには発言力がある、次の選挙では自分たちにも選ぶ権利があるべきだと、そう考えるように働きかけた。それだけでも、圧倒的に力強いことだと思う」と、ニューサム知事は話していた。
スウィフト氏はかつて、政治にかかわろうとしない姿勢が批判されたこともあるが、近年では政治に関する発言が増えている。
特にトランプ氏を表立って批判することが増え、2020年5月にはトランプ氏が「大統領として常に、白人至上主義と人種差別の炎をあおり立てた」と非難。「11月の選挙ではあなたを落選させる」と述べていた。
今年の大統領選に向けてトランプ氏はすでに、スウィフト氏に対して、バイデン氏を公的に支援しないよう呼びかけている。自分のソーシャルメディアで前大統領は、スウィフト氏が自分に向かって「不忠」になれるはずがないと主張。アーティストへの公平報酬を保障する音楽近代化法が成立したのは自分のおかげで、そのおかげで「彼女はものすごくもうけた」のだからと、トランプ氏は書いた。
スウィフト氏は、若者の有権者登録を推進する活動でも知られている。
有権者登録を支援する非営利団体Vote.orgによると、昨年9月にはスウィフト氏がインスタグラムで、若者に有権者として登録するよう呼びかけたことで、3万5000人がオンラインで登録した。
全国的に有権者登録を働きかける日にスウィフト氏が呼びかけたことで、18歳の登録は2022年に比べて115％増えたと、Vote.orgはその影響力を強調した。
スウィフト氏の政治的影響力が重視する見方が増えることで、オンラインでは陰謀論の標的にされることも増えている。特に保守系アカウントが、そうした陰謀論を拡散することが多い。
2月に行われたアメリカン・フットボールNFLの決勝戦スーパーボウルの前には、スウィフトさんの恋人でスター選手のトラヴィス・ケルシー氏が、こうした陰謀論の対象にされた。その内容を拡散した中にはトランプ氏の支持者が含まれ、共和党から大統領選に出馬していたヴィヴェク・ラマスワミ氏もその一人だった。
この陰謀論は、今回のスーパーボウルは勝敗が仕組まれた八百長で、ケルシー選手の所属する「カンザス・シティ・チーフスが優勝した時点で、スウィフト氏とケルシー選手がバイデン氏支持を発表する」ように計画されているという内容だった。NFLのロジャー・グッデル・コミッショナーは、「ばかげた」話だと一蹴していた。
（英語記事 Taylor Swift urges voters to the polls ahead of Super Tuesday）
