「一時は遠のいた感じがした」山本尚貴のスーパーフォーミュラ復帰。テストを無事終え「なんとか間に合うと思う」

 2月21〜22日に鈴鹿サーキットで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の公式合同テスト。2024年に入ってからは、開幕前唯一の走行機会となったこのテストで、山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)は怪我からの復帰後、初めてスーパーフォーミュラのマシンをドライブした。

 2023年9月、スポーツランドSUGOで行われたスーパーGTの決勝レースで大クラッシュに見舞われた山本。『外傷性環軸椎亜脱臼』及び『中心性脊髄損傷』と診断され、2カ月間の入院生活を強いられるなど、アスリートとしてのキャリアが脅かされるほどの大怪我となった。

 幸いにして手術やそこからのリハビリ/トレーニングは順調に進み(詳細は過去掲載のインタビュー参照)、山本は1月末のセパンでのスーパーGTのテストで、レーシングカーのシートに復帰するまでに回復してみせた。

■“意味のないコンディション”にも「ガムシャラで走った」

 鈴鹿テストの走行前日に行われたチーム別のメディア対応では、当然ながら記者から山本へ現在の体調を問う質問があがったが、山本は「大丈夫です」「身体のことは、走行が終わったら話します」と、テスト開始前に詳細について話すことを避けていた。いくらテストでGT500をドライブすることはできても、より身体への負荷が大きいスーパーフォーミュラの走行には、“乗ってみないと分からない”側面があることから、発言にも慎重になっていたのだろう。

 テストは初日ウエット、2日目朝のセッション途中からドライというコンディションとなった。この2日目朝、山本はセッション2番手タイムを記録している。

 2日間のテストを終えてミックスゾーンに姿を現した山本の表情は、走行前よりもだいぶ柔らかくなっていたように見えた。

「久しぶりに乗るということもあって、昨年の『ダメ出し』と、今年のパッケージで変わったダンパーなどの部分への合わせ込みをしました。ウエットもドライもしっかりとテストできましたし、みんながニュータイヤを入れたわけではないですが、今日の午前中は2番手とまずまずのタイムも出せました。フィーリングとしても悪くなかったですし、いいテストになったと思います」と2日間を総括した山本。

 その2日目午前のセッション前半では、多くの陣営が『乾き待ち』で走行を控えてガレージにとどまる中、山本は積極的に周回を重ね、結果的には誰よりも早くスリックタイヤに履き替えて走行、周囲がそれに追随する形となった。

「あのコンディションでは走ってもあまり意味はないのですが、僕はもう、プライドとか、(元)チャンピオンだとか、そういうのを捨てて、いまは追いかける立場なので……ガムシャラに走っていました」

2024スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)

 肝心のフィジカル面については、さすがに怪我の影響が“ゼロ”とはいかないものの、大きな心配はしなくても良さそうだ。

「やっぱりスーパーGTとも違う、フォーミュラカーならではの負荷がかかるものだな、と実際乗ってみて感じました。落ちてしまって、取り戻しきれていない部分はあるなと感じたので、開幕までになんとか取り戻したいと思っています。あと開幕まで2週間ほどですが、もうちょっとだけ追い込めると思うので、開幕にはなんとか間に合うんじゃないかと思います」

 山本は怪我以降、身体にもっとも負荷がかかるこの2月の鈴鹿テストをひとつの“ヤマ”としてターゲットに設定し、周囲の協力を得ながらリハビリ/トレーニングに注力してきたという。

「ここ(2月の鈴鹿テスト)で乗るんだ、というのは決めていましたし、それに合わせたスケジュールを組んでもらっていました」

「ただ、手術したり、術後の経過を見たりすると、一時期はそれが遠のいているなという感じがあり、『乗れるのかな?』と思う時期もありました。でも実際にテストが近づいてきたら、無理にでも合わせ込まなければいけないし、そこは僕だけではなく、トレーナーさんだったり、病院の先生がみなさん親身になって合わせ込んでくれたので、そんなみなさんにも感謝しながら、まずはこの2日間が乗り切れて良かったと思っています」

 完全ドライとなった2日目午後のセッションでは12番手タイムとなったものの、マシンの仕上がりにはある程度の手応えを感じていると山本は話す。

「あまり周りを見る余裕はなかったのですが(苦笑)、この(寒い)時期は『走れちゃう』という部分が、去年の自分を含めてあります。開幕が4月だと大きく状況は変わりそうですが、今年は2週間後には開幕です。暖かいのか、もっと寒くなるのかは分かりませんが、うまくコンディションに合わせ込めたところ、そして今回の結果が良かったところが、比較的順調に(上位に)いくのかなと思います」

 64号車は“今回の結果が良かった陣営”に入るのかと問われた山本は「比較的、良かったと思います」と答えている。

「(最終セッションで)上位にいたクルマはみんなOT(オーバーテイクシステムを使用してのタイム)ですし、僕は比較的早めにタイムを出してずっとロングをしていたので。去年の(この時期の)調子の良さとはまたちょっと違う感触がしているので、課題はやっぱり暖かくなってきたときに、うまく走れるかどうかです。今日の感じでは、まずまずだったかなと思います」

 ここ数年、開幕前のテストでは上位につける山本およびNAKAJIMA陣営。寒い時期の開幕となる2024年は、その勢いのまま結果を残し、“完全復活”を狙いたいところだろう。

「なんとか結果につなげて、(復帰を支えてくれた)みなさんに恩返しができるようにしたいですね」

2024スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)

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