アパート一階に焼き鳥屋がオープン。引っ越してまだ半年なのですが、家賃の交渉はできますか? 洗濯物にニオイがつきます……

大家が店子(たなこ)の臭気対策を怠っていると大家の責任が問われる場合がある

飲食店から出る臭いは、利用する方にとっては食欲を刺激するよい匂いです。しかし、近隣住人からすれば悪臭に感じられる場合も珍しくありません。環境省も「飲食業の方のための『臭気対策マニュアル』」といった冊子を作り、飲食店に対して臭い対策を徹底するように求めています。

東京や大阪のような都市部ではビルの1階が飲食店など向けのテナント、2階以上が賃貸物件といった物件も多く見られます。飲食店から発生した臭いで暮らしに影響が出た場合、ビルのオーナーや大家さんに対策を取るように求めることは可能です。

実際、同じビルに入居する飲食店から発生した臭気で売り上げが下がった別の店舗のオーナーがビルの所有者に損害賠償を求める裁判を起こし、訴えが認められた事例もあります。

したがって、自分が入居した後で飲食店のテナントが入り、臭いで生活に影響が出る場合は大家に対応を取るように求められる可能性もあるでしょう。ただし、具体的にどのような対応を求められるかは個々の事例によって違います。家賃の交渉はできても、必ずしも認められるとは限りません。

近隣の飲食店の臭いが気になる場合の対処法

賃貸物件で飲食店を経営する場合、飲食店のオーナーができる臭い対策は限られている場合もあるでしょう。そのため、物件のオーナーや大家さんへの訴求が重要になるケースもあります。

本項では、同じ物件内に飲食店ができて臭いが気になった場合の対処法を紹介します。また、苦情が聞き入れてもらえないときの対処法も紹介するので、参考にしてください。

大家さん経由で苦情を入れてみる

飲食店から発生する臭いについては、飲食店のオーナーが対策できるものと大家さんや物件のオーナーが対策できるものがあります。例えば、排水口や換気扇の掃除不足で悪臭がする場合は、オーナーが対処すれば臭いをおさえられるでしょう。

しかし、換気扇の位置や向きなどが原因で臭いが入ってくるなど、大家さんやビルのオーナーなどが対策をしてくれないと改善しないケースもあります。

したがって、新しく入った飲食店の臭いが気になる場合、まずは店のオーナーではなく物件のオーナーや大家さんに連絡してください。店のオーナーとの交渉も、大家さん経由のほうがスムーズに進む場合もあります

改善が見られない場合は行政に相談する

大家さんや物件のオーナーに連絡しても改善が見られない場合は、自治体に相談してみましょう。環境担当課や保健所など自治体によって対応窓口は異なりますが、ホームページなどに相談先を記載している自治体もあります。自治体が対応するのが妥当と判断されたら、飲食店に指導が入る可能性もあるでしょう。

集合住宅の1階などにある飲食店の場合、住民がまとまって自治体に相談したほうが効果的なこともあります。

被害がひどい場合は弁護士に相談する

大家さんに相談しても自治体に相談しても悪臭の改善が認められない場合は、弁護士に相談する方法もあります。弁護士に相談して民事裁判を起こせば、異臭の差止請求や損害賠償の請求などが可能です。

ただし、裁判をするには費用と時間がかかります。賃貸物件の場合、引っ越したほうが楽といったケースもあるでしょう。よく考えて決断をしてください。

臭いの害は我慢せずに早めに相談しよう

臭いの許容範囲は人によって異なります。また、飲食店の臭いを悪臭に感じるかどうかは個人差があるため、「我慢したほうがよいのでは」と悩む方もいるでしょう。

しかし、臭いの被害は発生源が何らかの対策をしない限り続きます。臭いによって生活に支障が出る場合は、早めに大家さんに相談しましょう。何らかの対策を取ってもらえれば、悪臭が改善する可能性もあります。

出典

環境省水・大気環境局大気生活環境室 飲食業の方のための 『臭気対策マニュアル』

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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