第百五回「スティーヴ・クロッパーが弾くギターの冴えまくる格好良さに脱帽」

わたしと三歳の息子は、相変わらずオーティス・レディング探しています。 けれども、オーティスは見つかりません。どこにもいません。あまりにもオーティスが見つからないので、オーティスに近づくために、まわりから攻めていこうという作戦になりまして、まずはオーティスの近くにいた人で、現存している人を探してみることにしました。 そもそも、わたしたちは、死んでいるオーティス・レディングを探しているのだから、よくわからなくなってきているのです。そこで、生きている、オーティス関係、オーティスに近い人ということで、わたしと息子が目につけたのは、スティーヴ・クロッパーさんでした。 スティーヴ・クロッパーさんは、息子もわたしも大好きな映画『ブルース・ブラザーズ』にも出ていて、いかしたギターを弾いています。さらにオーティスと共に、名曲、「ドック・オブ・ベイ」を共作した方で、ブッカー・T&THE MG'sのギターリストであります。

大きな体で、ギターが小さく見え、余裕な感じで、渋くて、ソウルフルなフレーズを、びしばし弾く格好いい、ギターリストです。 クロッパーさんは、オーティス以外にも、さまざまなソウル・ミュージシャンのバックでギターを演奏しています。ウィルソン・ピケット、サム&デイヴ、などなど、そして、日本人では、忌野清志郎のバックで弾いています。 そこで今回紹介したいのは、忌野清志郎のライブ・アルバム『HAVE MERCY!』、1992年の武道館でのライブで、ブッカー・T&THE MG'sが、ビシッと清志郎のバックで演奏しています。 収録されている「BOYS」なんて、とんでもなく分厚い演奏で、やっぱ、ブッカー・T&THE MG'sは凄いなあと思えてきます。そして、クロッパーさんのギターも冴えまくって格好いい! さらにブッカー・T&THE MG'sをバックに歌う清志郎が本当に楽しそうなのす。 そんでもって清志郎が「カモナ・ベイビー」という曲に入るとき、日本語で「オーケー、じゃあ、スティーブさんよろしくお願いします」と言うのだけど、これが最高で、そこからクロッパーさんのギターの音が刻まれて聴こえてくるのも最高なのです。 さらに清志郎がMCで「高校のときに、オーティス・レディングに憧れまして、それからずっと憧れてまして、いまもそうなんですけど、そんな(オーティスと)一緒にやってたTHE MG'sと一緒に、レコードも作って、コンサートもやれるなんて、夢のようだぜベイベー、夢のようだぜ!」と言うのです。 このMCを聞いて、オーティスというキーワードが出てきたから、息子のテンションは、ググッと上がり、何回か聴いたのだけど、そのうち「なんだか、あんまり聴きたくない」と息子がなってきました。「なんでだ?」と訊いても、「なんか違う」とのこと。どうも、息子は、オーティスに近い人たちとコンサートをしている、清志郎に嫉妬しているようなのです。 そんなこんなで、オーティスを探している息子は嫉妬して「聴きたくない」と言いますが、ブッカー・T&THE MG'sの分厚い演奏にのる、清志郎の独特の声が最高にマッチしたアルバムなのです。そして、楽しそうな清志郎のMCも良いのです。

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