ハレップの訴えがCASに認められ資格停止処分が軽減!すぐにも復帰可能で「新たな活力でツアーに再び参加する」と意欲<SMASH>

非常にうれしいニュースが飛び込んできた。2022年シーズンの後半から2件のドーピング違反によりツアーを離れている元世界女王のシモナ・ハレップ(ルーマニア/32歳)に対する資格停止処分が、当初の4年間から9カ月に軽減されることが決定。これにより即時復帰を果たせる見通しとなった。

既報の通りハレップのドーピング違反は、22年8月の全米オープンで採取した検体から禁止物質に指定されている「ロキサデュスタット」(持久系アスリートに好まれてきた薬物で天然ホルモンエリスロポエチンの生成を促進する)が検出されたことに加え、23年5月に明らかになった「生体パスポート」(選手の血液成分などの情報を蓄積したデータ)に関わる違反。これによりテニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」から4年間の資格停止処分(22年10月から26年10月)を科せられていた。

そのドーピング違反の原因が前コーチのパトリック・ムラトグル氏(フランス/53歳)から薦められたコラーゲンの摂取であるとされていたハレップは、声高に無実を主張するとともに、スポーツ仲裁裁判所(CAS)への提訴も決行。その審理が2月9日に終了し、ついに待ち望んでいた結果が出ることとなった。
ルーマニアテニス連盟は3月5日にX(@WTARomania)を通じ、ハレップの処分軽減を伝えたCASのプレスリリースを公開。そこでは次のような発表がなされている。

「提出された全ての証拠を慎重に検討した結果、CAS委員会は、ハレップ氏が違反発覚の直前に使用していた汚染サプリメントの摂取によってロキサデュスタットが体内に入ったことが確率的に立証されたと判断した。当該サプリメントの使用時に十分な注意を払わなかったため、ある程度の過失はあると認定されたものの、重大な過失はなかったという結論に至った。

同委員会はハレップ氏のアンチ・ドーピング規則違反が意図的なものではなかったと判断し、ITF(国際テニス連盟)の独立法廷によって課された4年間の資格停止期間を9カ月に短縮することを全会一致で決定した。その期間については22年10月7日を開始日、23年7月6日を満了日とする」
さらにCASは「メダルやタイトル、ランキングポイントおよび賞金」を含め、「22年8月29日から22年10月7日までの期間にハレップが残した全ての競技成績の取り消しを命じた」と報告。「この判決に対するITIAの控訴は却下され、ハレップ氏の控訴については一部が認められる(資格停止処分の開始日を22年8月29日とする要求は却下)運びとなった」と続けた。

上記の判決を受け、5日にはハレップ本人が自身のインスタグラム(@simonahalep)で「今日は極めて重要な瞬間となりました」と題した喜びのコメントを投稿。資格停止処分の軽減に加えて「法廷は私に対する20,000スイスフラン(約339万円)の賠償金もITIAに請求しています」と伝えた元女王は、これまでの苦境を振り返りながら次のように感謝の言葉を綴っている。

「この困難な旅の中で、真実の正直さと正義の原則への確固たる信念が私の道しるべとなりました。途方もない非難や手強い反対に直面しながらも、私の精神は明るく保たれ、自分が清廉なアスリートであるという揺るぎない信念が私を支えてくれました。今回の試練は、私の強さの証であり、真実の勝利は、遅くはなりましたが非常に満足のいく、ほろ苦いながらも正当性の証明につながりました」
「私の法務チームに心より感謝を申し上げます。彼らの不動の信念と卓越した献身が、これらの荒れ模様の状況を乗り越える上で重要な役割を果たしました。同様に、私のスポンサーや忠実なファン、そして素晴らしいツアーのライバルたち(の支え)も私の強さの柱となり、揺るぎないサポートと団結力を与えてくれました」

「多くのルーマニア人からの圧倒的な支持も私の決意を強め、この正当で名誉ある結末を導いてくれました。前を向いてこのページをめくり、新たな活力と元気な気持ちでツアーに再び参加することを心待ちにしています。愛と感謝を込めて、シモナ」

以前は「控訴が実らなければキャリアを終えることになっても致し方ない」と現役続行を諦めかけていたハレップ。不名誉な形での引退を避けられたことに彼女もホッとしていることだろう。現時点ではどの大会で復帰するのかは未定だが、ハレップがコートに戻ってくる日を楽しみにしたい。

文●中村光佑

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