【米大統領選2024】 スーパーチューズデー、民主・共和両党の有権者に聞く だれをなぜ支持するのか

米大統領選挙の民主、共和両党の候補者指名争いは5日、15州と1米領の選挙が集中する「スーパーチューズデー」を迎え、各州で投票が行われた。

BBCは投票所や週末の政治集会などで、両党の支持者に誰に投票するのか、その理由は何なのかをを聞いた。

共和党支持者からは、ドナルド・トランプ前大統領への信頼の篤さが顕著にみられた。トランプ前大統領はこれまでの予備選でも大差をつけてリードしており、スーパーチューズデーで対立候補のニッキー・ヘイリー元国連大使を大きく引き離すかに注目が集まっている。

一方の民主党では、バイデン氏の予備選勝利が確実とみられているだけに、支持者の熱意や思惑もさまざまだった。パレスチナ自治区ガザ地区における戦争への対応に抗議し、「uncommitted」(支持者未定)と投票したという有権者もいた。

「トランプ氏は腐敗していない最後の一人」

ヴァージニア州在住の大学生バンクス・マーロンさん(20)は、これまでニッキー・ヘイリー元国連大使の支持者だったが、最近になってトンランプ前大統領に忠誠心を移したという。

「私はニッキー・ヘイリーが大好きでした。以前は並外れた人物ででした」と、マーロンさんは話した。

「でもすっかり変わってしまった(中略)もう信用できないと思う。腐敗してしまった」

マーロンさんは、ヘイリー氏が「数え切れないほど」の場面で「矛盾 」しているのを見て、考えを改め始めたという。その上で、「トランプ氏は腐敗していない最後の一人だと思う」と付け加えた。

同じくヴァージニア州のシャロン・ロバーツさんも、トランプ氏支持者の一人。ロバーツさんは、2018年に息子のショーンさんを、合成麻薬フェンタニルの過剰摂取で亡くしている。

2日にリッチモンドで行われたトランプ氏の集会会場の外でBBCの取材に応じたロバーツさんは、「制御不能な」国境が他の家族にも同じような喪失をもたらすことを恐れていると語った。フェンタニルは国境を越えて密輸されている。

「私は100%、トランプ氏に賛成です。彼は国境を閉鎖してくれるから」

「(バイデン政権は)このことを心配していないようです。大きな問題なのに、それを認識していません」

「毎日、フェンタニルが原因で新たな死者が出ていると聞いています」とロバーツさんは語り、「アメリカ全土で起こっている。それを抑制しないといけない」と述べた。

BBCは、この集会で10人以上のトランプ支持者に話を聞いたが、全員が移民問題と国境警備が最大の関心事のひとつだと答えた。

ルイジアナ州に住むキャスリーン・マクレランさん(69)は、不本意ではあるものの、今回も前大統領に投票すると話した。マクレランさんがトランプ氏に投票するのはこれで3度目だ。

「2020年にドナルド・トランプに投票したのは、彼の業績に純粋に満足したから」だと彼女はBBCに語った。

「2016年に彼に投票したのは、ヒラリー・クリントンに本心から投票できなかったからというのが大きいですが、トランプ氏に何を期待していいのかわからなかった。でも、誰もがそうだったと思います」

マクレランさんは、「今回は両党とも若い候補者にチャンスがあれば」と語り、1月に予備選から撤退したフロリダ州知事のロン・デ・サンティス氏を候補に挙げた。

「多くの理由から民主党には投票しないけれど、仮にそう考えたとしても、民主党の候補者として選ぶのはジョセフ・バイデンではない」と、マクレランさんは述べた。

「次にホワイトハウスに座るのが誰だろうと、実力が絶好調の状態でいてくれないと。試合終了を目前にした状態ではなく」

トランプ氏への信頼が明らかに

共和党支持者の間では、移民問題と経済が関心の的となっている。この二つのトピックは、人工妊娠中絶や外交政策をはるかに上回っている。例えばノースカロライナ州では、共和党の予備選で投票した有権者の43%が移民問題を最重要課題に選び、次いで31%が経済、11%が中絶、9%が外交政策を選んだ。

この数字はバージニア州でも同様で、出口調査に参加した人の37%が移民を選んだのに対し、経済は33%、外交政策は11%、中絶は11%だった。

国境と経済に関して誰を信頼しているかという点で、トランプ前大統領がヘイリー氏を大きく引き離していることが、注目に値する。ヴァージニア州では、60%以上の人が、この問題に関してはトランプ氏の方が良い仕事をすると思うと答えている。

また、BBCがアメリカで提携するCBSニュースの出口調査によると、ノースカロライナ州とカリフォルニア州で共和党予備選挙に参加した有権者の過半数が、バイデン氏が2020年選挙の正当な勝者だとは考えていないことがわかった。

この主張は、トランプ前大統領がしばしば繰り返すものだ。

例えばノースカロライナ州では、党の予備選有権者の60%が、バイデン氏の勝利が正当なものだとは思っていなかった。ヴァージニア州では意見が二分しており、バイデン氏の勝利を信じていない有権者は46%、信じている有権者は45%だった。

両州の有権者の過半数(ヴァージニア州では53%、ノースカロライナ州では64%)が、トランプ氏が犯罪で有罪判決を受けたとしても大統領にふさわしいと思うと答えた。

「この国にもはや共和党はない」

テキサス州のエブン・エクンウェさん(75)は、2016年にトランプ前大統領に投票した。しかし、今年11月の本選ではバイデン氏に投票するつもりだと言い、トランプ氏は「悪を常態化」させるだろうとBBCに語った。

「この国にはもう、共和党などありません」と、エクンウェさんは話す。

「数年前に(前大統領の息子)ドナルド・トランプ・ジュニア氏が断言したように、かつての共和党は今やトランプの党になっています」

「自分が何をしたいかという自分の目的の中に、所属政党を取り込んだ人は、アメリカをトランプ一家の目的に従属させることに何の問題も持たないでしょう。それは、私たちが知っている民主主義の終わりとなるかもしれない」

バイデン氏についてエクンウェさんは、「彼は移民問題に弱く、高齢で、経済政策もあまりインパクトがないかもしれない。でももう一人と違って、悪を常態化することはないでしょう」と話した。

アメリカの起業家で富豪のマーク・キューバンさんは、トランプ前米大統領を「いんちきセールスマン」と評した。

ニュースサイト「アクシオス」への電子メールの中でキューバンさんは、「いんちきセールスマンを大統領にしたくない」と書き、自分は「毎日でも」、ジョー・バイデン現大統領に投票すると述べた。

キューバンさんはまた、両候補の違いを次のように説明した。

「片方は、自分が売るいんちきの『蛇の油』が、あらゆる病気を治すと言う。もう片方は、自分の政策の詳細を図表や声明で示す」

あえて共和党予備選に参加する民主党支持者も

ヴァージニア州リッチモンドでは、春のような陽気にもかかわらず、投票が遅々として進まないと開票関係者がBBCに語った。

市の南部にあるフォレスト・ヒルズ長老派教会でも、民主党予備選の有権者の間には、明らかに熱意が感じられない。

高齢のアフリカ系市民、ベニー・マイルズ・ジュニアさんは、特に誰にも投票しようとしなかったが、投票係から誰かを選ばなければならないと言われたという。その上で、「犯罪者(トランプ氏)と無能者(バイデン氏)」という選択肢にあまり意味はないと話した。

同じく民主党員のマシュー・マコーミックさんは、バイデン氏の年齢が多くの民主党議員にとって大きな懸念になっていると指摘。イスラエルとハマスの戦争も、バイデン氏の足を大きくひっぱっており、選挙戦において深刻な懸念要素だと話した。

ローラ・ダイソンさんも、もっと良い選択肢がなかったことを嘆いている。ヴァージニア州の有権者はどの党の予備選に参加するか選べるので、ダイソンさんは共和党予備選でヘイリー元国連大使に投票することも考えたと話した。

マコーミックさんも、11月の対立候補をまともな人物にするために、ヘイリー氏への投票を決めた民主党員を何人か知っていると語った。

ガザ対応への「抗議の投票」

今回の民主党の予備選では、パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム組織ハマスの戦争で、バイデン政権がイスラエルを支持し続けることへの抗議運動の一環として、「uncommitted」(支持者未定)の投票が行われている。

2月27日にミシガン州で行われた予備選では、13%超の有権者が「支持者未定」と投票。スーパーチューズデーに投票するカリフォルニア、コロラド、ノースカロライナ、ミネソタ、ヴァーモントの各州でも、同様にバイデン政権に抗議する運動が組織的に行われている。

コロラド州の活動家ディープ・バデサさんは、戦争への対応を含め、バイデン氏に投票しない理由が多すぎると言う。バデサさんは、自分の支持者未定投票に誇りを持っている。

民主党にとって重要なのは、「バイデン氏が支持基盤を独占しているわけでも、コントロールしているわけでもないということを認識すること」だと、バデサさんはBBCに語った。

「民主党は大きく多様です。若い有権者や有色人種の有権者、そして初めて政治力を発揮する新しい連合でいっぱいだ」

コロラド州でのバイデン大統領の勝利はほぼ確実だが、「支持者未定」が多ければ、現職にとっては居心地の悪い場所になる可能性もある。

(英語記事 Super Tuesday Live Reporting

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