突然の「今日、家買ってきたよ」に妻あぜん…驚きの行動に出た“夫の真意”

「ただいま。今日、家買ってきたよ」

そう言いながら、夫の健一さんは、仕事から帰ってきました。「お土産にケーキを買ってきたよ」と言うような口ぶりですが、買ってきたものは、家、マイホームです。

今回は、そんな夫の行動に衝撃を受けた妻から、「家を本当に買ってもいいか、不安しかありません」と、ご相談を受けました。どのようなアドバイスをしたのか、お伝えします。

「賃貸ではそろそろ手狭」という話はあがっていたが…

家を買って帰ってきた夫は、健一さん(35歳・仮名)、会社員です。その妻である涼子さん(32歳・仮名)も会社員ですが現在、育休中です。健一さんは「独断で」家を買ったわけですが、実は、夫婦2人の中で家購入の話題は半年前からありました。

家族が増え、子どものモノも増えれば、今の賃貸では手狭になるだろうから、家を購入したいという点は夫婦で意見が一致していました。エリアやどんな家が良いか、予算感なども話題にはあがっていたようです。

ただ「今日、家買ってきたよ」と健一さんから聞いた時は、やはり涼子さんは耳を疑い、状況を理解できませんでした。状況を飲み込めた後も、それは、もうパニックです。夫婦で家を持ちたいと話をしていたとはいえ、「なんで、相談なしで買うの?」「本当に買っても大丈夫?ローン払える?」「そして、一体どんな家なの?」と次々と質問を浴びせてしまったそうです。

ただ、よくよく聞いてみると、健一さんは、とても良い物件だったので、売れないうちに、申し込みだけしてきたようです。そして、涼子さんは一通り家の説明を聞き、健一さんの言葉に納得しました。なぜなら、収納の多さ、実家からの距離など涼子さんの譲れないポイントはしっかり満たされていたからです。

健一さんは、お買い物上手で、涼子さんが前から欲しかった家電をアウトレット価格で買ってくるなど、涼子さんも一目置いています。相手の欲しい物をプレゼントするという行為は、相手のことを想い、理解したうえでないとできることではありません。しかも、家計にやさしい価格なら、なおさら満足度も高くなります。

今回の家も、涼子さんへの思いやりを忘れない買い物だったので、涼子さんはおおむね安心できたのです。ただ、1点住宅ローンについては心配をしていました。

戸建にはメンテナンス費用がかかるという盲点

ファイナンシャルプランニングのご相談には夫婦で来られました。

まず最初に行ったのはキャッシュフロー表の作成。涼子さんは、家を契約して、住宅ローンを組んでも、子どもの教育費を出してあげられるか? 老後資金は足りるか? を最も心配していました。

まず老後資金については、健一さんには退職金がありますし、夫婦とも正社員で共働きのため、このままの働き方が続けば、老後の公的年金も夫婦合計で年間300万円ほどありそうなことが分かりました。

教育費については、現在“なんとなく”貯蓄しているとのことでしたが、大学と高校にかかるお金を計算すると、現在の貯蓄額では足りないことが分かりました。そこで、目標額を定めて貯蓄をすることにしました。

このように、一つひとつ必要額を明確にしていけば、家にかけられるお金も明確になります。

結論から言うと、さすが、買い物上手な健一さん、家を買っても問題のない家計でした。ただ、戸建ですから、長期的に見るとメンテナンスの必要があります。今後、外壁塗装やリフォームが必要になるかもしれませんから、その費用を今から貯めておきましょう、という話になりました。

一般的な基準で考えると、必要になる時期は外壁塗装なら10〜20年後、リフォームなら30〜40年後になりそうです。時間はたっぷりありますから、ここは積立投資をしたいところです。時間を味方につけられると、積立投資を選択できるうえ、利回りが期待できるなら、積立額も減らすことができます。

ただ、ここまで説明したところで、涼子さんはすぐに積立投資を始めたい、というふうにはなりませんでした。

●なぜ涼子さんは積立投資に二の足を踏んでいるのか? 後編へ続く>>

前田 菜緒/ファイナンシャルプランナー

FP事務所AndAsset代表。ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった自身の経験から、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体制で相談やセミナーを実施。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。

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