焦点:中国全人代、「バズーカ砲」期待は空振り 外国人投資家は押し目買い維持

Ankur Banerjee Tom Westbrook

[シンガポール 5日 ロイター] - 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は5日開幕し、財政支出により景気を下支えする方針を示したが、株式市場のムードを好転させるには力不足だと受け止められている。外国人投資家は今後も中国株への大規模投資を控え、押し目買いに徹しそうだ。

中国株は昨年、大幅下落したが、今年2月からは資産運用会社による安値拾いの買いがちらほら戻りつつある。中国政府が証券監督当局のトップを交代させ、投機を巡る規則を強化したのを受けて株価が急反発したからだ。

全人代が株価と市場心理を直ちに押し上げるような「バズーカ砲」を打ち出すとの期待は、元より小さかった。

ただ、成長率目標5%を達成するための、しっかりとした財政支出計画を期待していた向きは失望した。不動産セクターと地方政府債務のリスクを管理し、「安心して消費」できるようにする、といういつもの文言が繰り返されたからだ。

2024年の財政赤字目標は対国内総生産(GDP)比3%となり、昨年の3.8%から縮小。財政政策で「カンフル剤」を打つという一部の期待は裏切られた。

シティ・グローバル・ウェルスのアジア投資ストラテジー責任者、ケン・ペン氏はロイターに電子メールで「投資家は、ガバナンスと最終需要を改善させる政策を必要としているが、全人代ではどちらも示されなかったようだ」との見方を示した。

5日の中国本土株は横ばいで、香港のハンセン指数は2.6%下落した。人民元相場は底堅く推移した。

中国本土の株式市場は、1月31日までの1年間に時価総額が約2兆ドル縮小。この間、外国人投資家は1120億元(156億ドル)を売り越し、世界のファンドによる中国株投資は過去数年の最低水準となった。

外国人投資家は2月以降、483億元の買い越しに転じ、有力企業で構成するCSI300指数は先月付けた5年ぶりの安値から15%近く反発した。

世界の投資家はかつて、ポートフォリオの大きな部分を中国株に喜んで長期投資していた。しかし今は多くの投資家が、目先の相場の戻りから利益を得ようとする小口かつ「戦術的」な投資手法を採っており、より大規模な戦略的投資は控えている。

JPモルガン(シンガポール)の営業・マーケティング責任者、ニラジ・アサブレ氏は「これら全ての措置がいつ大きな効果を持ち始め、市場と資産価格を動かし始めるだろうか、という期待感はある」とした上で、「そうした状況を引き起こしそうな要因を1点挙げられれば良いのだが、そんな引き金は存在しなさそうだ」と続けた。

<修羅場には歯止め>

国内外を問わず、投資家は選別的な中国株買いを行っているが、それは電気自動車(EV)やハイテクといったセクターに限られているとインドスエズ・ウェルス・マネジメントの上席ディレクター、ウィニー・チュー氏は言う。

これらは、自国産業の育成を目指す中国政府の政策の中核を成すセクターだ。

中国本土株の割安感も、外国人が買いを入れる理由となっている。CSI300指数の構成銘柄は、今後1年間の利益予想に基づく株価収益率(PER)がわずか10倍前後と、米SP500種総合指数や日経平均株価の半分程度にとどまっている。

BNYメロン・インベストメント・マネジメントのアジア・マクロ投資ストラテジー責任者、アニンダ・ミトラ氏は、1年にわたって消費財を下取りする中国政府の政策が、短期的な株価押し上げ要因になっていると語る。

この政策に加え、株価の割安感、外国人投資家のポジションの軽さは短期的に株価の追い風となり得るが、「われわれとしては、長期的な疑念と不透明感をぬぐえない」という。ミトラ氏は中国株のアンダーウエートを維持したい考えだ。

もっとも、少なくとも株式市場の「修羅場」に歯止めをかけるだけの措置は打ち出されたとアナリストはみている。バルフール・キャピタルのスティーブ・ローレンス最高投資責任者は、中国株に資金が戻り始めていると言う。

同氏は「恐怖、あるいは恐怖に似た感じがただよう時には必ず、老練な投資家や実需のマネーが買いを入れる。これが現実だ。一歩下がって眺めれば、中国経済は今なお成長しており、今後も成長を続けるだろう」と語った。

同氏は、米ナスダック指数が過去最高値を付ける一方、ハンセン指数が低迷して両者のかい離がここまで大きくなった以上、「シーソー(反動)が起こるだろう」と予想。「今は壮大な動きの始まりに過ぎない」と話した。

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