質問「一戸建に住みたい子どもたち。経済的余裕はありません。子どもに何と言えば?」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2024年3月6日)

【質問】  夫と子ども3人の家族5人で古いマンション住まいです。私たちの住む地域は比較的田舎で、一戸建てが多く立ち並んでいます。私の子供たち、特に下の息子はその家々を見ると「きれいなおうちでいいねえ。うちも変える~」とうらやましそうに言うので心苦しいです。経済的にとても一戸建てを買う余裕はないので、そのたびに「おうちは変えないし、お母さんも働きに行けないから買えないよ(事情があり今働いていません)。いつも家にお母さんがいるからそれはうれしいね」などと話しますが、私も内心はきれいな広いおうちはうらやましいと思っているし、でもとても無理だし、とモヤモヤしています。子どもにどのように話をして、私もどのような心でいるべきかお聞かせいただきたいです。(40代女性)

回答 五條 永教(金峯山寺執行長)

【我知なヒント=「心苦しさ」と「モヤモヤ」の気持ちを、わが子を立派に育てるためのエネルギーに変換】

 今回のご質問の内容からは、3人のお子さんがそれぞれ何歳かは分かりかねるのですが、質問者であるお母さんが、自分のお子さんたちに対して「お家は変えないし、お母さんも働きに行けないから買えないよ」と、うそもごまかしもせず、はっきりと現実のことを言われました。これは百点満点の三重マルだと思います。

 そして、その後に続けて、「いつもお母さんがいるからそれはうれしいね」と言われました。これがまた素敵です。もう百点満点以上の五重マルに花マルを付けてもよいのではないかと思うほどです。このお母さんに育てられたお子さんたちは、きっと優しい心を持った素晴らしい大人になっていくのだろうと思います。

 お母さんにとっては、子どもたちを一戸建ての大きなおうちに住まわせてあげられないという現実を前に、おそらくは、なすすべもなく、苦し紛れに出た言葉だったのだと思います。しかしながら、その言葉が五重マルに花マルまで付いてしまうんです。これは一体どういうことなのでしょうか。

 筆者はこう思います。わが子のことを思えば思うほど心苦しいでしょうし、モヤモヤしてしまうのでしょう。この「心苦しさ」「モヤモヤ」の気持ちを、わが子を立派に育てるためのエネルギーに変換してはどうでしょうか。もし、一戸建てのお家に住まうことがかなったとしても、わが子を立派に育てられなければ、それは本末転倒ではないでしょうか。「いつもお母さんがいるからそれはうれしいね」で締めくくられたことによって、お子さんたちの心には、お母さんの愛情がたっぷりと注がれたことでしょう。

 もっと自分に自信を持ってください。あなたは立派なお母さんですよ。お子さんたちからすれば、お母さんは、あなた唯一人なのです。これまで通り、お子さんたちに、たくさんいろんなことをお話ししてあげてください。あふれんばかりの愛情を注ぎ続けてあげてください。お子さんたちが持っている愛情を受ける器は、お母さんの注ぐ愛情の大きさに比例するかのように、どんどん大きくなっていくものです。

 愛情いっぱいの中であれば、おうちが一戸建てでも古いマンションでも、どんなうちでもいいのではないでしょうか。これからも子育て頑張ってくださいね。

 お母さん、ファイト!

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【回答者】 興福寺 辻 明俊さん 金峯山寺 五條 永教さん 秋篠寺 堀内 瑞宏さん

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