世界食糧計画、ガザ北部への援助車列が進行を阻止されていると

世界食糧計画(WFP)は5日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区の北部に食料援助を届けようとしたところ、イスラエル国防軍(IDF)に阻止されたと明らかにした。

WFPは過去2週間で初めて食料をガザ北部に運ぼうとしたが、援助物資を載せたトラック14台の車列は検問所で「引き返させられ」、物資はその後、「必死の思いの人たち」によって奪われたのだと説明した。

BBCはIDFにコメントを求めている。

世界保健機関(WHO)は4日、ガザ地区で、子供たちが餓死していると警告した。

WFPによると、現地の人たちが「必死の思いで求めている食料支援」を5日に再開したものの、「もっぱら成功しなかった」という。

ワディ・ガザ検問所で車列が3時間にわたり待たされた挙げ句、IDFが通過を認めず、引き返すよう言われたのだという。

そのため車列が移動ルートを変更したところ、「必死の思いの人たちが車列を制止し、食料を奪った」とWFPは説明。トラックから約200トンの食料が奪われたという。

BBCがIDFにコメントを求めたところ、IDFはガザ地区での援助活動を調整するイスラエル国防省傘下の「占領地政府活動調整官組織(COGAT)」に問い合わせるよう回答した。

WFPは2月20日の時点で、ガザ北部への食料提供を中止すると発表。援助車列が、暴力的な略奪を含め「治安崩壊による完全な混乱状態と暴力」に見舞われたことを理由にしていた。

2月29日にはガザ市西部で、民間業者がイスラエル軍に護衛されながら援助物資を運んでいたものの、大勢の住民が押しかけた混乱のなか、パレスチナ人100人以上が死亡している。

パレスチナの医療関係者は、イスラエル軍の発砲によって多くの民間人が死傷したと主張する。これに対してイスラエル軍は、ほとんどの人は大勢が殺到したことで押し合いになり、互いを踏みつぶすようになって死亡したと説明している。イスラエル軍は、部隊に接近し脅威とみなされた人たちに向けて、車列の近くにいた兵士が発砲したともしている。

WFPのカール・スカウ副事務局長はトルコのアナトリア通信に対して、WFPが2月末に援助搬入をいったん中止したのは、こうした事態を恐れていたからだと話した。

「援助中止を批判されたが、一時中止を決めたのは、こうした事態を恐れたからだった。どうすれば戻れるか、方法を検討している」とも、スカウ氏は述べた。

他方、アメリカ政府は5日にヨルダンと合同で3万6000食をガザ北部に投下したと発表した。アメリカは援助物資投下を2日に開始した。

国連は、対策をとらなければガザで飢饉が起きるのは「ほとんど避けがたい」状態だと警告。WHOは、ガザ北部では子供たちが飢え死にしていると指摘する。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は4日、北部で病院が破壊され、食料不足から子供10人が死亡し、「深刻な栄養不良状態」が多発していると述べた。

ハマスが運営するガザ地区の保健省は3日、北部ベイトラヒアにあるカマル・アドワン病院で少なくとも子供15人が、栄養不良と脱水で死亡したと発表した。

パレスチナのワファ通信によると、3日にはガザ最南部ラファの病院でも子供が1人亡くなったという。

国連人道問題調整事務所(OCHA)のラメシュ・ラジャシンハム調停局長は、2月27日の安全保障理事会で、ガザ地区の人口の25%に相当する少なくとも57万6000人が、食べる物が確保できず壊滅的な状況に直面しており、ガザ地区北部では2歳未満の子供の6人に1人が重度の栄養不良状態にあると報告した。

アメリカのジョー・バイデン大統領は5日、イスラエルが今まで以上に援助物資のガザ搬入を認めないことを正当化する「言い訳」はないと批判した。

IDFのダニエル・ハガリ報道官は3日、「援助を必要とするガザ住民に人道援助が届くのを望む」ので、イスラエル軍はガザ北部への援助車列や物資投下の便宜を図っていると述べた。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害、253人をガザ地区へ連れ去った。イスラエルは報復としてガザ地区への大規模な空爆と地上作戦を開始した。

ハマス運営のガザ保健省によると、同地区ではこれまでに女性と子供を中心に3万600人以上が殺害された。

(英語記事 World Food Programme says northern Gaza aid convoy blocked

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