ロシア軍司令官2人に逮捕状、ウクライナ侵攻めぐる戦争犯罪容疑 国際刑事裁判所

国際刑事裁判所(ICC)は5日、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、ロシア軍の司令官2人に逮捕状を出した。侵攻に関わるロシア政府関係者にICCの逮捕状が発行されるたのは、ウラジーミル・プーチン大統領らに続いて2度目。

逮捕状が出されたのはロシア軍のセルゲイ・コビラシュ中将(58)と、ヴィクトル・ソコロフ海軍大将(61)。

ICCは声明で、2人の容疑者には「指揮下の部隊がウクライナの電力インフラに対して行ったミサイル攻撃」の責任があると信じるに足る合理的な根拠があるとしている。

声明によると、この犯罪行為は2022年10月から2023年にかけて行われた。

こうした攻撃は、明らかに過剰な民間の被害と損害をもたらしたと、ICCは指摘している。

ICCは、コビラシュ中将とソコロフ大将の「それぞれに、民間の標的への攻撃を指示した戦争犯罪の責任がある」とし、「非人道的行為という、人道に対する罪」にも問われていると説明した。

コビラシュ中将は当時、ロシア空軍長距離航空部隊の司令官を務め、ソコロフ大将はロシア海軍の黒海艦隊を指揮していた。

ロシア政府はこれまで、ウクライナの民間インフラを標的にしたことはないと主張している。

ICCには容疑者を逮捕する権限はなく、ICC加盟国内でしか管轄権を行使できない。ロシアはICCに加盟しておらず、2人が国外追放されて逮捕され、裁判にかけられる可能性は極めて低い。

プーチン大統領らに続き2度目

ICCは昨年3月、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシアへと不法に移送しており、プーチン大統領と、ロシアで子どもの権利を担当するマリア・リボワ・ベロワ大統領全権代表にこうした戦争犯罪の責任があるとして逮捕状を出した。ICCは声明で、プーチン大統領が直接、また他者と連携して犯罪行為を行ったと信じるに足る合理的な根拠があると説明。また、同大統領が大統領権限を行使して子どもたちの強制移送を止めなかったことを非難した。

ロシア政府は、戦争犯罪疑惑を否定し、逮捕状は「言語道断」だとした。

ウクライナの反応

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ICCの逮捕状発行を歓迎した。

「ウクライナの市民や重要インフラへの攻撃を命じるロシアの司令官は皆、正義が果たされるということを知るべきだ」と、ソーシャルメディアに

した。

「このような犯罪に関わる加害者は皆、責任を問われるということを知るべきだ」

2002年の国連条約「ローマ規程」により設立されたICCは、各国の当局が加害者を訴追できない、あるいは訴追しようとしない場合に介入し、ジェノサイド(集団虐殺)や人道に対する犯罪、戦争犯罪の責任を負う者を捜査し裁く役割を担う。

ローマ規程は現在、123カ国が批准しているが、ロシア、中国、インド、アメリカなどは含まれない。

(英語記事 ICC issues arrest warrants for top Russian commanders

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