服役中の受刑者「トラックに乗りたい。でもこの年からやっていけるか」 再犯をしない鍵“出所後の職探し”

テレビ愛知

47.9%――。この数字は、検挙された人が再び罪を犯す再犯者率です。一方で、刑務所に再び収容されることになった者の約7割が「無職」です。再犯防止に向け、ポイントとなるのが、出所後の「職探し」だといいます。

一体なぜ「職探し」がポイントとなるのか、名古屋刑務所が行う取り組みを取材しました。

車から降りてきたのは、現在も名古屋刑務所で服役中の40代の受刑者・Aさん(仮名)です。Aさんは東郷町にある運送会社・コウエイ物流で職業体験を行います。

コウエイ物流 村上結美社長:
「ドライバーがお客さんに話かけている。どんなことを話しかけているように見えますか?」

Aさん:
「不愛想なイメージ。上から言っているのかな、と」

名古屋刑務所は2022年から、受刑者が出所後に就職した後の生活をよりイメージしてもらおうと職業体験を始めました。Aさんは、まず映像を見て運送会社で働くうえでのマナーやモラルを学びます。

「全ては意識と意欲」

コウエイ物流 村上結美社長

村上社長:
「ここまでで何かわからないこととかありますか?」

Aさん:
「トラックに乗りたいなと思っていて、この年からやっていけるのかが心配」

村上社長:
「弊社の中でも今までドライバーをしたことはなく、働いてみたいという方は何人も実際に働いています。何十人もいるかも。全ては意欲。この会社でトラックに乗りたいんだという意識と意欲だと思います。『やりたい』と思ったらそれに負けないように突き進んでほしい。気持ち1つだと思います」

熱い気持ちを持って受刑者と話すのは、コウエイ物流の村上結美社長です。実は、この会社、およそ20人の従業員の半数が元受刑者です。

村上社長:
「社会復帰をスムーズにしてもらいたいので、少しでも社会との温度差をなくしたい」

映像でマナーを学んだあとは実技へ

社員から指導を受けながら業務を行う

実際に働いている人に指導を受けながら、オイル量の点検やタイヤの空気圧のチェックをします。

社員:
「(金づちで叩くと)これをやると、緩んでいると手に振動が伝わります」

Aさん:
「音もちょっと高くなりますか?」

社員:
「音もちょっと鈍ったような音になって低くなります。(叩くのはタイヤの)前でも後ろでもいい。どこでも」

受刑者・Aさんの表情が変化

約2時間の職業体験を終えた受刑者・Aさん。その表情にも変化が。

コウエイ物流 村上結美社長:
「いかがでした?」

Aさん:
「楽しかったです」

村上社長:
「緊張もほぐれましたね?」

Aさん:
「まだです」

村上社長:
「今後の社会復帰に生かしてもらいたいです」

受刑者の職業体験を終えて、村上社長の心境は

「挫折してほしくない」と語る村上社長

「働くことは、再犯しないにつながると思います。働けばお金がもらえるから生活にも困りません。本人にも伝えましたが、『めげずに目標持ってがんばってください』と。途中であきらめるのは簡単。やっぱり挫折してほしくないです」

なぜ再犯防止に「職」が大切になるのか。名古屋刑務所の作業統括部、土川晃さんに話を聞きました。

名古屋刑務所 作業統括部 土川晃さん:
「仕事をしないと生活のリズムがつかめません。以前の自分が失敗したときの生活に戻っていきます」

名古屋刑務所の在所時に内定した人数は7%(※2023年)

仕事に就くことが再犯防止の第一歩だと訴えます。しかし2023年に出所した人の中で在所時に内定をもらっていたのは、たったの7%。また出所後に就職できたとしても、すぐに離職してしまうケースもあるといいます。

土川さん:
「自分が今まで持っているイメージとギャップが埋められず早期離職するケースが多々あります。人間関係がうまくいかなくて離職してしまう。自分の過去も含めて理解して受け入れてくれるのが、その職場で長続きする秘訣です」

そこで作業内容だけではなく、働く人の雰囲気や環境を知るために職業体験を導入したと言います。

土川さん:
「自分の希望するような業界の雰囲気を味わって、どういった作業や仕事をするのか体験して、ギャップを少しでも埋めた形で出所すれば再犯のリスクも減ると思います」

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