当局者間の意思疎通がきわめて重要=欧米金融不安の教訓で日銀総裁

Takahiko Wada

[東京 6日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は6日、日銀で開いた「アジア太平洋銀行監督ハイレベル会合」で、昨年春のクレディ・スイスの破たん処理を念頭に、アジア太平洋地域は欧米に先行して市場が開くため、週末に発生した混乱に真っ先に対応する必要があり、「他地域も含めた金融当局間の緊密なコミュニケーションがきわめて重要」だと述べた。

欧米の金融不安が高まる中、昨年3月19日、UBSによるクレディ・スイス買収が合意されたが、スイス当局がクレディ・スイスの発行したAT1債を無価値化する決定を下したことで波紋を呼んだ。同日は日曜日だった。

植田総裁はまた、金融のデジタル化が金融システム安定上の「新たなリスクの源泉にもなり得る点に留意が必要だ」と指摘。サイバー攻撃への対応やマネー・ロンダリング(資金洗浄)・テロ資金供与対策が一段と重要性を増していると述べたほか、暗号資産やAI(人工知能)などの新しい技術が「金融システムに機会だけでなくリスクももたらす可能性がある」と語った。

一方、金融システムを取り巻く近年の大きな環境変化として、グローバルな高金利シフトを挙げた。リーマン・ショック以降、低金利環境が継続していたが「短期間の間に高金利環境にシフトし、不確実性を伴いながらもその長期化が意識されている」とし、改めて金融機関における金利・信用リスク管理の重要性を呼び起こしていると述べた。

(和田崇彦)

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