森永乳業、3月末で「ビン詰め商品」95年の歴史に幕 「情緒的価値もある」、それでも刷新決めた理由

森永乳業が2024年3月末をもって、ビン詰め牛乳をはじめ同社で扱っている「ビン容器の飲料商品」を全て販売終了する。どのような思いで提供を続けてきたのか、容器の変更を決断した背景を取材した。

ビン商品は宅配専用で7品のみ

森永乳業は1月15日に公式サイトで、宅配サービスを春から「健幸サポート便」にリニューアルすると発表した。容器をビンから、ペットボトルや紙を中心とした軽くリサイクル可能な素材に変更。「お客さまの返却する手間を省くことができます。また、容器変更に伴い、一部商品の賞味期限を延長します」という。新商品の発売に伴い、各種ビン商品を3月末で販売終了するとも報告していた。

森永乳業の広報IR部によると、同社が販売しているビン商品は宅配専用の7品(3月6日の取材時点)。牛乳販売店から客一人ひとりに届ける宅配のほか、牛乳販売店を通じて、温泉施設の売店や、自動販売機などで取り扱っているケースもあるという。

これら含めて、「現在、弊社で取り扱いしているビン容器の飲料商品は2024年3月末日をもって全て販売終了となります」とのこと。

具体的には、森永カルダス、ラクトフェリンFe、森永牛乳、濃厚エースミルク、ミルク生活 ドリンクタイプ、森永珈琲、うるおうグルコサミンの7品。あくまでビン商品のみで、同名の紙パックタイプは終了しない。

再利用の過程で「高い頻度での輸送、洗浄のための用水やエネルギーなども必要に」

1929年に「ビン詰め牛乳」の販売を開始したという森永乳業。これまでビン商品の提供を継続してきた背景について「ビンには懐かしさや特別感、安心感や鮮度感といった情緒的価値もあるかと思います」とし、このような思いを明かす。

「昔ながらの容器ではありますが、こうしたイメージを皆さまに抱いていただくことができる『特別な容器』でもあると思いますので、長らくご愛顧いただいているビン商品で、安心や健康をお届けできるよう努めてまいりました」

「ビン商品を維持すべく、容器を軽量化したり、回収・洗浄し、再利用する回数を増やしたりするなど、オペレーションや環境に配慮した取組みも行ってまいりました」とも企業努力も強調した。その上で、今回のタイミングで容器変更を決断した理由を、次の通り説明した。

「ビン容器は、リユースの観点では同じ容器を複数回使用することで省資源化につながる一方、再利用するために、容器回収から容器洗浄の過程で高い頻度での輸送、洗浄のための用水やエネルギーなども必要になります。

こうしたビン容器の回収から洗浄、製造までに関わるエネルギーの課題、輸送効率や配送頻度の課題、お客さまがビンを返却する手間や、時代とともに変化する市場環境、お客さまのニーズなどを総合的に考慮し、このたび、宅配サービスのリニューアルの一環として商品ラインアップを刷新する中で、ビン商品は販売を終了することにいたしました」

「長年ビン商品をご愛顧いただき...」広報感謝

広報は「長年ビン商品をご愛顧いただき、誠にありがとうございます」と感謝を述べ、下記のようにも伝えている。

「森永乳業の宅配サービスは、お客さまの健康志向の高まりとライフスタイルの変化に合わせ、今春新たに『健幸サポート便』に生まれ変わります。この一環として、商品ラインアップも刷新いたしました。

これまで以上に皆さま一人ひとりの健康習慣づくりに貢献できるよう、ビフィズス菌をはじめとした当社独自の機能性素材にこだわった商品づくりに努めてまいります」

© 株式会社ジェイ・キャスト