現代アラサー女性のリアルな恋愛事情? 『婚活1000本ノック』と『瓜を破る』のアプローチ

今期のドラマでは、現代に生きるアラサー女性のリアルな恋愛事情を異なるアプローチで描いたドラマが放送されている。

福田麻貴(3時のヒロイン)にとって初の主演ドラマということでも話題の『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)は、南綾子の同名小説を実写ドラマ化したもの。生涯のパートナーを求める33歳の売れない小説家の南綾子(福田麻貴)が、成仏するために幽霊となって現れた“クソ男・オブ・ザ・イヤー”こと山田クソ男(八木勇征)のサポートを受け、婚活に励んでいくさまが描かれている。

綾子は自分の生涯のために婚活に意欲的に励んでおり、出会いやセックスの機会はあるが、なかなか理想通りの相手に出会えない。 しかし、様々な男性と出会い、自分の幸せのために恋愛に積極的に取り組んでいる姿はたくましく、キラキラと輝いて見えてくる。本作は婚活で直面する問題や苦悩を描いているものの、ファンタジーな設定やコミカルな演出も相まって、性や恋愛が肯定的に描かれ、恋愛や婚活に失敗してきた人々に元気を与えてくれる。

同時に、恋愛をしない生き方を選んだ綾子の友人・おけけ(橋本マナミ)の存在によって、アラサー女性の恋愛観が一辺倒にならず描かれているのも本作ならではのポイントだ。

●『瓜を破る』では”30代で性体験がない”コンプレックスを抱いた主人公が登場

一方、『瓜を破る~一線を越えた、その先には』(TBS系/以下、『瓜を破る』)では、恋愛やセックスをする機会に恵まれなかった人物に焦点が当てられている。本作は、シリーズ累計400万部を突破している板倉梓による漫画『瓜を破る』を実写ドラマ化したもの。30代で性体験がないことにコンプレックスを抱いている、ごく普通の会社員の香坂まい子(久住小春)が自身を変えるべく行動していく様子が描かれている。

まい子は処女を卒業するために元彼にセックスのお願いをするが、恐怖や痛みで上手くいかない。さらに無気力な日々を過ごす鍵谷千里(佐藤大樹)と出会い、徐々に距離を縮めていきはするが、デートは思い通りに行かず、キュンキュンするような恋愛はしていない。まい子の同僚で一児の母でもある染井菜々(土村芳)も、仕事と家庭の両立の難しさに悩んでいたりと、現実で起こり得る恋愛や性のマイナスな面も描かれているのだ。

周りが当たり前にしていることをしていない劣等感から来るセックスへの熱望は、キラキラとした恋愛ものでは描かれない。だからこそ、本心では「あたたかいセックスがしたい」と願っているまい子の姿には刺さるものがある。さらに、並行して描かれているノンセクシャル、ルッキズム、非正規雇用などの現代社会の悩みなども誇張した演出をせずに描いているため、観ていて他人事とは思えないのだ。

『婚活1000本ノック』『瓜を破る』で描かれているアラサー女性は、恋愛や性について悩んでいること以外は、それぞれ異なる状況、立場にいる。この2作品が私たちに共感を生む要因は、どちらも30代になったことで人生の岐路に立たされた女性のリアルを真正面から描き切っていることにある。

昨今では多様な生き方が受け入れられることも増え、女性も結婚や恋愛以外の選択肢も広がってきた。一方で、従来の価値観を軸に生きる女性も同時に存在している。新しい価値観を受け入れつつも、自分の気持ちに素直に生きようとするアラサー女性たちの物語に今後も注目していきたい。
(文=赤城杏奈)

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