防災教育は幼児期に 東日本大震災で愛娘を亡くした女性が大学生と絵本を制作

震災の津波で長女を亡くした宮城県石巻市の女性が、大学生と共同で絵本を制作しました。防災教育は幼児期にこそ行うべきと訴え続けています。

4日、仙台市泉区の仙台白百合女子大学で学生たちが制作した絵本のお披露目会が開かれました。
「ゴゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴという音とともに地面が揺れ始めました。どうしよう地震だ、隠れなきゃ」
絵本のタイトルは「2人の天使にあったボク」。
東日本大震災で長女の愛梨ちゃん(当時6歳)を亡くした石巻市の佐藤美香さんらと共同で作った防災教育のための絵本です。
「君たちはいったい誰なの。走りながら海くんは2人に聞きましたが、2人は何も言いません。海くんは2人の名札に気がつきました。あいり、はるね」

石巻市の私立日和幼稚園に通っていた佐藤愛梨ちゃん(当時6歳)らを乗せた送迎バスは、大津波警報の発令後に高台の幼稚園から海側へ向かい津波に巻き込まれました。

防災教育は幼児期に

絵本は、大きな地震が発生し小学校低学年の海くんを津波から避難させるため天使の愛梨ちゃんたちが強く手を引き高台に導く内容です。
「すると2人が海君の服を強く引いて離しません。坂の上へ行こうと言っているようです。2人は坂の上を指差します。見上げると高台にぼんやりと灯りが見えます。3人は高台に向かって走り出しました」

絵本の制作は、佐藤さんが2023年7月から震災当時の状況を学生に説明し愛梨ちゃんへの思いや震災の悲惨さを伝え、学生たちがキャラクターやストーリーを考案しました。
仙台白百合女子大学佐藤美宇さん(4年)「まずはその震災を知らない世代に、震災のこともそうですし、あとは地震が起こった時の避難の大切さっていうのを重視して制作したので、そこは一番伝えたいところでもあります」
「地震の日、その2人が僕を高台まで連れて行ってくれたんだ。あいりちゃん、はるねちゃんそうだったんだね。海を守ってくれてありがとう」

絵本の完成を受けて、佐藤さんは学生たちへの感謝の気持ちを伝えていました。
佐藤美香さん「こんなに素敵な絵本ができたことがすごくうれしく、ありがたいという気持ち。避難をしなきゃいけないという誘導するそのストーリーとして、すごくうまくできてるんじゃないかなと思っています」

佐藤さんは、災害や事故で我が子を亡くす人が出ないことを切に願い幼児教育の重要性を訴え続けてきました。
佐藤美香さん「是非、皆さんに紙芝居作り協力してもらえるとうれしいなと思っている。小さいお子さんがなかなか理解できない部分があったりする。紙芝居仕立てにすることで、(震災を)分かってもらえるきっかけになれば良いと思う」

佐藤さんは、これまでも宮城学院女子大学の学生と紙芝居を制作するなど積極的に防災教育に力を注いできました。
佐藤美香さん「大人の判断で助かる命も助からない命になってはいけないと思っています」

講演活動も

幼稚園や保育所などの避難訓練の質をより高めるために、講演活動も行ってきました。
佐藤美香さん「いざという時に、人は訓練以上のことはなかなかできません。訓練に格差が出てしまうと、どうしても守れるはずの命も守れなくなってしまうのではないかと私は危惧している」

幼稚園、保育所で最低でも月に1回は避難訓練を行うことを訴えるため、県議会にも足を運びました。
佐藤美香さん「宮城県から、被災地から条例として作っていただき子どもたちの命を等しく守るようにやっていただければすごくありがたい」

震災から間もなく13年。二度と自分のような遺族を出したくない。幼児期にこそ防災教育を、という思いを胸に活動を続けてきた佐藤さんの思いはこれからも変わりません。
佐藤美香さん「13年間も無我夢中で走り続けてきて東日本大震災を風化させないためにも、新しく震災後に生まれた命もたくさんいる中で子どもたちが東日本大震災というものを少しでも学べるものとして、絵本をきっかけに知ってもらえたらいいなと。少しでも何か風化が少しでも止められたらいいなとは思います」

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