国の補助金が使えない⁉徳川秀忠奉納の国宝「拵」“修復”にクラウドファンディングのワケ

静岡市の久能山東照宮で保管されている大変貴重な刀。まさしく国宝級なのですが、作られてから数百年立っているものもあり、修復が必要です。この修復にかかる資金をクラウドファンディングで賄おうというプロジェクトがスタートしています。貴重なものの、修復には国の補助金が出るはずなのになぜ、このような取り組みを行っているのでしょうか。

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<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
「こちらが、新調などの対象になる資料です。ものすごいオーラを感じますが、確かに茶色くなっている部分もあって、年季を感じられますね」

徳川家の歴代将軍から寄贈された14の刀を保管する「白鞘」に、江戸幕府2代目将軍・徳川秀忠公が奉納した国宝の刀・「真恒」の「拵(こしらえ)」。これらを後世に残すため、クラウドファンディングを活用した取り組みが、スタートしました。

このプロジェクトは、文化財を保管する久能山東照宮とパルコなどが連携し、企画したもので、資金集めの目標額は1,000万円に設定されています。

<東京国立博物館 請負修復技術者 森井敦央さん>
「大変きれいな状態で、作られてからよほど大切にされてきたものとわかる」

とはいえ、白鞘は約160年、拵は400年以上が経過しています。この修復作業には国の補助金が活用できますが、なぜ、多額の資金を「クラウドファンディング」で集めようとしているのでしょうか。

<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
「こうした資料の新調などについては、国などからの補助金を活用できるんですが、この拵については、補助金が活用できない過程が生じてくるんです」

国宝である拵は、本当に当初のような状態に戻せるか、職人の技術を確認するため、別に模造品を「復元」してから、本物を実際に「修復」する必要があります。この「復元」にかかる費用は3,000万円。ただし、「修復」は補助金の対象外のため、「復元」は誰かがお金を払わなければなりません。このため、クラウドファンディングの実施を決めたのです。

<久能山東照宮 姫岡恭彦さん>
「若い人にも東照宮の魅力を知っていただいて、大事な文化財があることも知っていただいて、お参りをして帰ってもらえれば」

貴重な日本刀を未来へつなぐためのクラウドファンディング。期限は5月6日までで3,500円から協力することができます。

白鞘の「新調」と拵の「修復」には補助金が使えても、拵の「復元」には使えない、そういった事情があります。貴重な文化財だからこそ、丁寧に作業をする必要があるので、一般の人の力も借りるわけです。クラウドファンディングのリターンとしては、この復元の過程に作れれた拵の生地の一部が用意されています。

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