女性の命救った島のタクシー 「海岸に行きたい」公衆電話から発信、宿決めず少ない荷物…違和感抱き、保護 「助けられてよかった」島根の離島の夫婦に感謝状

野坂保則署長から感謝状を受け取る鏡谷元さん(中央)と寿美江さん=島根県西ノ島町浦郷、浦郷署

 島根県西ノ島町でタクシー会社を営む夫婦の機転を利かせた行動が、女性の命を救った。1人で真冬の最終フェリーで島に降り立った20代女性に夫婦は「こんな時に島に来るとは…」と違和感を抱き、警察へ相談した。適切な応対で自殺を考えていた女性の命を救ったとして、6日に浦郷署から感謝状を受け「助けられてよかった」と胸をなで下ろしている。

 悲劇を防いだのは同町美田のタクシー会社経営鏡谷元さん(71)と妻寿美江さん(70)。この日、野坂保則署長から感謝状を受け取った。

 女性は2月8日午後3時ごろ、鏡谷タクシーに電話。応対した寿美江さんは、夕暮れ時に船で西ノ島に到着する上、行き先を告げず公衆電話からの発信だったことに違和感を覚え、元さんにいきさつを伝えた。元さんも不審に思い、すぐに別府港の駐在所へ相談した。

 フェリー乗り場前で迎えた寿美江さんは、下船してきた女性を見るなり「宿泊するには荷物が少ない」と思い、行き先や予定を尋ねた。女性は「国賀海岸の方に行きたい」「その後の宿は決めていません」などと答え、携帯電話も持っていなかったという。5分ほど話したのちに観光客ではないと確信し、後ろに控えていた浦郷署員に対応を引き継いだ。

 その後、女性は自殺をしようと県外から訪れたことが判明。同署が保護し、無事に家族の下に帰ったという。

 鏡谷タクシーの3代目で35年のキャリアがある元さんは「父親の代に自殺を防いだ事案があったと伝え聞いたことがあるが、私たちは初めて」と語る。男女ともに一人旅が珍しくなくなって、異変に気付くのが難しくなっているとし「日頃から情報提供をするよう心がけている。今後も連絡を密にして、安心安全な観光地にしたい」と気を引き締めた。

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