【独自】「何のためにお宅の学校に通わせたのか!」『博多女子中学校』教員が願書“出し忘れ”…保護者説明会のやりとりを独自入手 被害生徒の保護者が激白「“慰謝料的な感じ”で、『お宅は第1志望なので、20万円上乗せして50万円。これ以上、これ以下もない』」

私立「博多女子中学校」の教員が、公立高校の入試の願書を出し忘れ、生徒3人が志望校を受験できなかった問題。「ミヤネ屋」の取材に対し、受験できなかった生徒の保護者が悲痛な胸の内を吐露しました。将来の希望を胸に受験に挑むはずが、その権利すらも奪われるという異常事態。なぜ願書を一括で管理していたのか?柔軟な対応ができなかったワケは?そこには“福岡”ならではの事情が…弁護士・野村修也氏の解説です。

「子どもは一言も発せず部屋に…」憤り、虚しさ、娘の心情…受験できなくなった生徒の父親が吐露した悲痛な胸の内 他生徒の保護者も「大人の都合でこんなことになって可哀想で仕方ない」

公立高校の入試の願書を出し忘れたのは、福岡市東区にある私立・博多女子中学校。福岡地区トップレベルの公立高校へ進学することを目標に掲げる、進学校です。ホームページなどでは「生徒が行きたい高校に行かせる」と謳う博多女子中学校ですが、今回、その“正反対”のことが起きました。

願書を出し忘れられたのは、3人の3年生。2市1町が組織する“組合立”高校の受験を希望し、中学校を通じて願書を提出する予定でした。提出期限は2月16日正午でしたが、担当教員らは、県立高校と同じ2月20日が期限だと勘違いしていました。16日午後2時になって高校に願書を届けましたが、「期限を2時間過ぎた」として受理されず、校長が高校側に直接交渉したものの、「例外は認められない」と生徒3人は入学試験を受けられませんでした。

「ミヤネ屋」は、受験ができなくなった生徒の父親に、話を聞くことができました。

(受験できなかった生徒の父親)

「最初は何の話かと思ったぐらいびっくりして、『100%、受けられないんですか?』と聞いたら、『そうです』と。詳細な話は、なかったです。この事実をどうやって本人(娘)に伝えようかと、頭が真っ白になりました」

その事実を、娘に伝えると…。

(受験できなかった生徒の父親)

「本人は、“親が今、何を言っているんだろう”という顔で、動揺というか、言葉も一言もなかったし、そのまま自分の部屋に入って行きました」

学校側は、父親に和解金を提示してきたといいます。

(受験できなかった生徒の父親)

「学校ができる誠意は、30万円。内訳を聞きましたが、“慰謝料的な感じ”と伝えられて、その後に『お宅は第1志望なので、20万円上乗せして50万円。これ以上、これ以下もありません』と伝えられました」

そして、3月2日、全校生徒の保護者を対象にした説明会が行われました。「ミヤネ屋」は、その音声データを入手。冒頭、学校側が経緯について説明しました。

―(学校側)

―「出願をする際は事前に、出願校別に担当職員が割り振りを作成していました。しかし、その予定について、全職員に共有できていなかったところがあり、また、それを管理するべき立場の教頭が確認・予定表の提出をさせていませんでした。今回、このような事態になった原因としては、学校の組織的なミスが重なった結果です」

原因として、「教諭同士の意思に齟齬があった」と説明する学校側。納得できない保護者たちは、怒りを露わに…。

―(受験できなかった生徒の保護者)

―「『忘れとった』って、誰が出し忘れたかという話、今しました?ちゃんと説明しろよ、ちゃんと!」

―「子どもの3年間…学費も返せよ、塾費も返せよ、3年間の。何のためにお宅の学校に通わせたのか!一生懸命、塾も、送り迎えもして」

また、卒業を間近に控えた出来事に、涙ながらに訴える保護者も…。

―(3年生の保護者)

―「気持ち良く卒業できると思っていたんですけど、大切な友達がこんなことになって、子どもたちもショックを受けていると思います。大人の都合でこんなことになってしまって、可哀想で仕方ない。どんな手を使ってでも、試験を受けさせてあげてほしかった。なんで、それが叶わなかったのか…」

保護者会の参加者によると、学校側から終始、詳細な説明はなく、謝罪一辺倒だったといいます。

(受験できなかった生徒の父親)

「本人は第1志望に行くために1年間頑張ってきて。でも、もう選択肢がなくなったので、何とかそこは切り替えて違う高校に行ってほしいとは思っているんですけど、本人がまだ現実を受け止められていないというのが事実です」

なぜ中学校の願書を“一括提出”?そこには、地元に残る“古いしきたり”が…「福岡県には“県立優先主義”みたいなところがある」

福岡市東区の私立「博多女子中学校」の生徒3人は、2市1町が組織する学校組合が設置した“組合立”の高校・公立「古賀竟成館(こがきょうせいかん)高校」を志望していました。願書の締め切り日は「古賀竟成館高校」が2月16日正午、県立高校が2月20日正午でしたが、担当教員らは「古賀竟成館高校」の締め切り日も県立高校と同じ2月20日だと勘違いしていたといいます。2時間遅れである2月16日午後2時に願書を提出しましたが受理されず、校長が高校側に直接交渉するも「例外は認められない」として、生徒3人は受験できませんでした。

Q.願書は、中学校が一括で出すのですか?

(弁護士・野村修也氏)

「実は、福岡県には“県立優先主義”みたいなところがあって、『県立にどれだけ合格させたか』が中学校の実績になります。そのため、受験指導にすごく熱心で、『“合格しそうな高校”を受験するように』と、生徒が願書を出す前に中学校が一括して処理するという“古いしきたり”が、長年続いています。受験先の高校としては、『私たちがそれを頼んだわけではない』ということで、それが“冷たい対応”の原点になっていると思います。ただ、それは過去の出来事を踏まえた対応なので、この件に関してどう対応するのが教育には効果的なのか、ということは考えなければいけないと思います」

全てのしわ寄せは、3人の生徒に。たった2時間の遅れで、高校側ももっと柔軟な対応ができなかったのかという声もありますが、古賀高等学校組合の教育委員会は「公平・公正性を必要とする願書の受け付け・締め切り時間などは、学校の入試要項にしっかり記載しており、皆さん、それを守っているので、特別な対応はできない」としています。

Q.『公平・公正性』とは何か、ということになりますよね?

(野村氏)

「時系列・過去も踏まえて、公平であるかどうか考えなければいけない、ということはあるかもしれません。もし過去に同じような例があって、それを退けていたとしたら、『報道されたからといって、今回だけ特別扱いすることはできない』と。ただ実際は、世の中は柔軟な対応をすることによって問題の解決が行われていますので、『受理できない』とすることが本当に正しいのかどうかは、もう一度考えなければいけないと思います」

教育ジャーナリスト・石渡嶺司氏によると、「各地で、このようなケースは起きている。まれではあるが、受理された事例もある」ということです。茨城・水戸市では2019年、中学校教員が県立高校の入学願書を出し忘れましたが、同中学校と水戸市教育委員会が県教育委員会に受理するよう要請したところ、特別に受理されました。石渡氏は、「今回のケースも生徒に落ち度はなく、柔軟に対応してもよかったのではないか」と話していますが、「すでに試験が終わっているため、再試験などの対応は難しいのではないか」ということです。

Q.“2市1町の組合立高校”ということですが、この2市1町の市長や町長、あるいは文科省などがフォローすることはできないのでしょうか?

(野村氏)

「日本は『教育に政治が介入すること』に対してものすごく慎重で、市長であったとしても、市の教育委員会に対して圧力をかけることは絶対にしてはいけないと言われています。『今回の件は手続きの問題だから何かしてもいいのではないか』という異論はありますが、『政治家が教育に関わって、教育委員会の独立性を損なう』という1つの壁と、市・町をまたいだ組合型の“特別なタイプの高校”であるということが、ハードルを高くしています」

受験できなかった生徒の父親は、「娘は県立高校を受験するが、合格しても行く・行かないは娘の気持ちに寄り添いたいと思っている。第1志望だった『古賀竟成館高校』を万が一受験できるようになったとしても、現在の娘の心境としては、『顔が知られている』などの不安もあり、前向きに受け止められない状態だ」と話しています。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年3月5日放送)

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