部下や後輩「飲みに誘うの難しい」問題が再燃 令和の時代にふさわしい上司の「適切な誘い方」は

部下や後輩を飲みに誘うのは難しい――。

近年、そんな悩みを抱える上司や先輩ポジションにいる社員は少なくない。飲料メーカー・サントリーが公開したビール「ザ・プレミアム・モルツ」のウェブCMでこのテーマが描かれており、SNS上で共感が相次いだ。

では、どのような誘い方が適切なのか、はたまたNGなのか。コミュニケーションに詳しい、明治大学法学部教授・堀田秀吾氏(法言語学)に詳しい話を聞いた。

「飲み会に誘われていない部下が不公平を感じてしまう」

「上司である自分から部下を誘うと断りづらいのではないかと勘ぐってしまう」

金融業界で働く男性Aさん(30代)が、J-CASTニュースBizの取材にこう話したが、部下や後輩を「飲みに誘うの難しい」問題がこのところ再燃している。

きっかけは、前出のウェブCM、「飲みに誘うのムズすぎ問題」編と称したタイトル(2024年2月28日公開)で、会社の後輩を飲みに誘いたくても誘うことができない先輩の悩みを描いたものだ。

この動画はSNS上でも話題になり、共感するコメントが寄せられた。実際のところはどうか。J-CASTニュースBiz編集部でも、さまざまな業界で働く人に話を聞いてみた。

出版・印刷業界で働く男性Bさん(40代)は、部下や後輩を誘う難しさを感じたことがあると明かす。Bさんの職場は40代が中心。数人の若手社員を飲みに誘うこともあるが、お互いに話が合わず、ストレスになることも多い。「飲み会で仕事の話をしないようにすると、お互いに話すことがなくなる」

建材卸売業で働く男性Cさん(40代)も、難しさを感じている。部下や後輩が嫌だと内心感じているのに、飲みに行く状況は避けたいと話す。「飲み会に誘われていない部下が不公平を感じてしまうから」という理由もある。

金融業界で働く女性Dさん(30代)は、どうか。彼女は、最近入社した社員が特に誘いづらいという。「コロナ禍でそもそも学生時代から飲み会自体にあまり行っていない人も多く、声をかけづらい」。一方、お酒や飲み会が好きだと公言する社員は誘いやすいそう。また、出張先で早く商談が終わったり、大きな案件が終えたりした場合は、お互いに誘い合う関係のようだ。

「参加しておかないと今後の仕事に響くよ」はNG

なぜ部下や後輩を誘いづらく感じるのか。

前出の堀田氏は(1)ハラスメントに受け取られかねない(2)世代ごとに価値観が違う(3)上司や先輩のお財布事情がある――と、指摘する。

とくに、タイムパフォーマンス(時間対効果)やコストパフォーマンス(費用対効果)を意識する若者世代にとっては、会社での飲みを仕事だと感じる風潮がある。だから、「飲みに価値を感じていないと思います」と、堀田氏。また、「奢らなくてはいけない」という意識も、誘いづらさを生んでいるという。

では、どうしたら誘いやすいのだろう。

堀田氏は「誘い方は関係性によって異なる」と前提を述べたうえで、話題性のあるお店を選ぶことが重要だと話す。たとえば、料理の見栄えがいい「インスタ映え」するようなお店や、行ったことを人に話したくなるようなお店を選ぶことだ。また、飲み会の目的や参加者についても詳しく伝えることが重要だと指摘する。

「『たまたま予約できたんだけど』『もしよければ来ない?』というような、相手に選択できる余地を残すような誘い方が良いのではないでしょうか」

一方、そもそも「飲み」という言葉を使った誘い方はNG。これには「説教」「お酒の強要」「セクシャルハラスメント」などの悪いイメージがあるからだ。その代わりに、「食事」という言葉を使う方がいいと、堀田氏は提案する。また、「参加しておかないと今後の仕事に響くよ」といった強要はNGだとした。

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