アスベスト被害で男性死亡 遺族と国が和解へ 原告請求通り1430万円支払い 神戸地裁

神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 建築現場で電気工事に従事し、アスベスト(石綿)による中皮腫で死亡した兵庫県内の男性=当時(78)=の義姉ら3人が国に計1430万円の損害賠償を求めた訴訟で、国側と原告側の双方が近く和解する方針であることことが6日分かった。アスベスト被害に遭った建設労働者らへの給付金の支給対象を、本人や近い親族に限るのは不当として、昨年9月に神戸地裁に提訴していた。

 原告側の代理人が明らかにした。原告側の請求通り、国が計1430万円を支払う内容で、近く開かれる予定の弁論準備で和解が成立する見通しという。原告側の一人は「提訴するまでほぼ泣き寝入りの状態だったので、諦めなくてよかった。似た境遇の人たちの参考になれば」としている。

 国は2021年に成立した新法に基づき、アスベストによる建設労働者らの健康被害に対する給付金として、病態に応じ1人550万~1300万円を支給。請求できるのは本人や配偶者、子、両親、兄弟姉妹、孫、祖父母としている。

 訴状などによると、亡くなった男性は1966年から一人親方として電気工事作業に従事。19年に悪性胸膜中皮腫を発症し20年に死亡した。22年に男性の兄が給付金を申請したが、受給前に亡くなり、国は手続きを無効に。義姉らの代理人は提訴時、「迅速な支給決定をせず決定前に男性の兄が死亡し、遺族が国に賠償を求めて提訴せざるを得なくなった」としていた。

© 株式会社神戸新聞社