震災の日「あれ、何の音?」突然"何か"を聞いて泣き出した息子 → 聞こえないはずなのに、聞こえた音とは?

世の中には見えないはずのものが見えたり、聞こえないはずの音が聞こえたりする人がいます。周りの人はわからないことが多く、軽視してしまいがちですが……。これは筆者の友人・F絵から聞いたちょっと驚いてしまうエピソードです。※このお話には、津波に関する話が出てきます。

息子

私の息子・R太が小学生だった頃のお話です。
R太は小さい頃からちょっと変わったところがあり、とても繊細な子供でした。

私には見えるはずのないものが見えたり、周りには聞こえない音が聞こえたりすることが頻繁にありました。急に部屋の隅っこで天井を見ながら誰かと話していたり、道を歩いていて「そっちには行きたくない」と言い出したり……。
亡くなった祖母が「今お部屋に帰ってきてる」と言ったこともあり、何か特殊な感覚があるのだろうと思っていました。

ただR太が怖がったり怯えたりしている様子はなかったので、私は黙って見守ることにしていたのです。

「あれ、何の音?」

R太が小学2年生の頃、朝から「あれ、何の音?」としきりに聞いてきました。
耳をすませても私には何も聞こえません。しかしR太は珍しく取り乱していて「怖い!」「どうしよう……」と耳を押さえて泣き出してしまったのです。

こんなに怖がるのは初めてだと思いながら、とりあえず学校は休ませて家でゆっくりするようにR太に伝えました。

3月11日

学校を休んでも、R太はなかなか落ち着きませんでした。
そして午後になると、さらに「何の音?」と繰り返すように。

その日は3月11日……そう、東日本大震災の起きた日だったのです。

聞こえていた音

これは後日R太に聞いてわかったことなのですが、あの日「何の音?」と言っていた音は、震災で起きた津波の音だったらしいのです。
当時私たちの住んでいた場所は、震源地から遠く離れていて、揺れも感じなかった場所でした。震災のニュースをTVで観て「あぁ、この音だったんだ。」と納得したとか。

大きな波の音や物の壊れる音などが聞こえてきて、何の音かわからなかったR太は、とても怖かったと言いました。

息子のその後

R太はその後、大きくなるにつれて『聞こえる』『見える』ということは治まってきましたが、未だに何か大きなことがある前触れを感じることがあるらしく、不安定になることがあります。

私には理解してあげられない感覚ですが、R太はさまざまな感情を抱えているはず……親として、これからも彼を支えていってあげたいと思います。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K

© 株式会社ファッションニュース通信社