吉田健一の酒宴を再現 小説「金沢」に登場の加賀料理 23日、定宿の「つば甚」

吉田が滞在した小春庵で酒宴について打ち合わせる関係者=金沢市寺町5丁目のつば甚

  ●21世紀工芸祭の一環

 金沢ゆかりの作家・英文学者の吉田健一が定宿としたつば甚(寺町5丁目)で、吉田の著書に登場する加賀料理を酒とともに堪能する酒宴が23日に開かれる。金沢21世紀工芸祭(北國新聞社後援)の一環で、酒は吉田が命名した日本酒「黒帯」のみを用意。吉田が20年にわたって通い詰めた「金沢」の魅力に浸る。

 吉田は雑誌の取材旅行をきっかけに金沢の魅力に取りつかれ、以降、毎年冬の金沢に滞在し、小説「金沢」を著した。「加賀料理」という言葉を初めて使ったとされている。

 父の吉田茂元首相が外交官だった頃に赴任した英国の冬に似ていると、つば甚の離れ「小春庵(こはるあん)」からの眺めを愛した。つば甚の川村浩司料理長によると、縁側に片足だけ下ろして腰を掛け、犀川を見ながら酒を飲み続けたという。

 酒宴は、本紙連載「美(うま)し金澤」でも取り上げた吉田の世界を体感する機会として企画された。吉田が「はっきり海を思わせる」と記した「タイの骨酒」は、タイの塩焼きを大皿に入れて酒を掛け、一度火を付けてから、その上に酒を注いで飲む。押しずしやドジョウのかば焼き、当時使われた器も用意される。

 福光屋の福光松太郎社長を迎え、「黒帯」は料理に合わせ、熱燗(あつかん)、ぬる燗、常温、冷やで提供する。映像作家のモリ川ヒロトーさん、ガレリアポンテ代表の本山陽子さんと内容を打ち合わせた川村料理長は「季節の移ろいを感じられる内容にしたい」と話した。

作家の吉田健一=1962(昭和37)年2月、つば甚

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