約70年にわたり鳥取県西部で親しまれた「ブドーパン」です。漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげるさんも愛したというブドーパン。後継者の不在で、惜しまれながら2022年に姿を消しましたが、2年の歳月を経て、復刻販売されることになりました。
やわらかいコッペパンに、シナモンや干しぶどうを入れ、ラム酒入り自家製クリームを挟んだ「ブドーパン」。
かつて鳥取県境港市内の全ての幼稚園のおやつにも採用されるなど、いわば、境港市民のソウルフードです。
漫画家・水木しげるさんも愛したといい、誕生から約70年にわたり多くの市民に愛されてきました。
しかし、後継者の不在などにより、製造していた「伯雲軒」が2022年3月に廃業。
廃業直前には、スーパーで飛ぶように売れるなど、多くの市民に惜しまれながら姿を消しました。
ところが、2年の時を経て、復刻販売されることが決定したのです。
販売をするのは、菓子やゼリー製造を行う「八雲ことぶきフーズ」です。
パッケージデザインは、以前のものを引き継ぎました。
気になる味は…
小崎純佳 キャスター
「パンはふかふかふわふわです。そして、干しブドウの食感とシナモンの風味がクセになります」
ところで、復刻販売に至る経緯とは何だったのでしょうか?
八雲ことぶきフーズ 黒木克翁 工場長
「私自体がブドーパンの大ファンだったので、無くなることが非常に寂しいという気持ちを持っていました。そんな中で、伯雲軒さんが後継者を探しているという噂を聞きまして、自社ですることができないかと、会社で話合いをして、ぜひ味を引き継ぎたいと」
その後、前製造元の伯雲軒の山本さんから、製造工程やノウハウなどの事業継承を行い、約半年間、1000個以上の試作を重ねて、復刻販売が実現したのです。
八雲ことぶきフーズ 黒木克翁 工場長
「私が宮崎出身で、こちらに来てからブドーパンを食べさせてもらって、地元の味が無くなることほど寂しいことはないので、ぜひ米子・境港に帰ってきた方に、まだブドーパンがあることを伝えたいという気持ちがあって、これを進めたというのも強い思いです」
当分は数量限定で、境港市の水木しげるロードにほど近いアンテナショップ「MOGU」で、3月15日から販売予定です。
一方、前製造元・伯雲軒の山本さんも、喜びをかみしめます。
前製造元 伯雲軒 山本敏則さん
「もともと会社を誰かに継ぐことができなかったもんですから、ブドーパンだけはどうにか残せないかという気持ちがずっとくすぶっていまして、その時に黒木さんが『商売抜きで僕が好きなんです』って気持ちをぶつけてくださったので、じゃあ一緒にやりましょうという気持ちになりました」
そして、ブドーパンの味を再現できるよう、妥協なしの挑戦が始まりました。
前製造元 伯雲軒 山本敏則さん
「待っておられる人たちに、これは違うって思ってもらいたくないので。機械が違う分、異なるところはあるかと思いますが、風味とかそういうところは、ちゃんと食べていただければ満足していただけると私は思っております」
鳥取県西部で愛され続けてきた「ブドーパン」。
ふるさとの味が次の世代へと受け継がれていきます。