スコープ/東京都がパークマネジメントマスタープラン改定、三つの視点で価値向上へ

東京都は都立公園の整備・管理運営の指針となる「パークマネジメントマスタープラン」を月内に改定する。計画期間は2024~33年度の10年間。新たに「まもる」「ふやす」「かえる」の三つの視点でマネジメントを展開。人々の暮らしの変化やニーズを捉え、公園の価値を高める。都民と共につくることで一層親しまれる公園を目指す。
現行のマスタープランの期間は25年度までだが、コロナ禍や加速する社会情勢の変化に対応するため、改定時期を前倒しする。100年先を見据えた都の新たな緑のプロジェクト「東京グリーンビズ」を念頭に、まずは40年代のあるべき都立公園の姿に近づける。
都は40年代に都市活動の安全・安心を確保しながら緑と調和した公園の創出を目指す。加えて、障害の有無や国籍などにかかわらず、人々が交流できる魅力ある公園も実現する考えだ。
都は2月にマスタープラン案を公表した。三つのマネジメント視点のうち「まもる」では、都民の命と暮らしを守る取り組みに注力する。公園整備を通して、地震に伴う火災が燃え広がらない空間を創出。風水害に対しては、雨水貯留浸透施設や雨水浸透緑地帯(レインガーデン)の設置を加速する。
高規格堤防事業とも連携し、広場の高台化を推進する。江戸川沿岸にある篠崎公園(江戸川区)を盛り土の上に再構築。災害時の活動拠点などとして活用する。
「ふやす」取り組みでは、新規開園と既存公園の拡充を加速する。都の政策連携団体である東京都公園協会にも用地取得業務を新たに任せる考えだ。
公園に隣接する道路・河川の改修とも連携。例えば河川では防災機能の高度化だけでなく、散策空間も構築するなど都民の憩いの場にすることも想定している。累計開園面積は1月末時点の2065ヘクタールから、30年度までに2168ヘクタールに増やす。
「かえる」取り組みでは、施設や空間を再構築する「都立公園リフレッシュプロジェクト」を33年度までに10公園で着手する。対象となる公園の一つ、代々木公園(渋谷区)では原宿門エリアで花を楽しめるナチュラルガーデンを造る。噴水や水の回廊を再整備するとともに、1964年の東京五輪で選手宿舎として使用した「オリンピック記念宿舎」エリアを憩いの空間に造り替える。
公園施設のバリアフリー化も推し進める。「誰もが利用しやすい公園等の整備」事業を10公園で先行実施。園内の段差解消とともに、トイレ改修などに取り組む。日比谷公園(千代田区)は対象に含まれないものの、独自にバリアフリープロジェクトを推進。花壇の段差を解消するほか、公園のアクセス性向上のため、公園とまちをつなぐデッキを2カ所建設する。開園130周年となる33年の完了を目指している。
公園の新規・拡充工事にはBIM/CIMなどデジタル技術を積極的に導入する。都の担当者は「建設業界全体がデジタル技術を導入しようとしている中、公園整備も取り入れられるところは取り入れていきたい」と話す。
公園運営では、利用者の多様なニーズに対応するため、民間事業者などと組み、園内に売店や飲食店を設置する。サービスの質向上によって生み出された収益の一部を公園管理に生かす。
都立公園では現在、明治公園(新宿・渋谷区)と代々木公園(渋谷区)でPark-PFI(公募設置管理制度)に取り組んでいる。都の担当者は「Park-PFIに限定せず、公園の花壇作りとか公園の魅力アップにつながる仕組みをつくる」との考えを示している。

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