井上尚弥vsルイス・ネリは異例の一戦、東京ドームのリングまで「悪童」を厳重管理

Ⓒゲッティイメージズ

5月6日に東京ドームで対戦

プロボクシングの4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥(30=大橋)がWBC同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)と5月6日に東京ドームで防衛戦を行うことが3月6日、正式発表された。

ネリと言えば山中慎介との2試合ですっかりヒールとして知られた存在。井上尚弥は「今回の戦いに関しては自分対ネリ。ネリが反省しているということもあるので、過去の因縁は自分の中に持ち込まない」と試合だけに集中しているが、「悪童」ネリを我らがヒーローがぶっ倒すシーンを見たいと願うファンも多いだろう。

改めてネリが山中と戦った2試合を振り返ってみたい。初戦は2017年8月15日、島津アリーナ京都で行われたWBCバンタム級王者・山中慎介の13度目の防衛戦だった。山中が勝てば具志堅用高の持つ最多防衛記録に並ぶ注目の一戦だったが、試合はネリが4回TKO勝ち。無傷の24連勝で自身初の世界タイトルを獲得した。

しかし、試合後のドーピング検査で陽性反応。WBCは調査に乗り出したが、故意に禁止薬物を摂取したという確証が得られなかったためネリの王座を剥奪せず、山中をWBCバンタム級1位にランキングした。

ドーピングの次は体重オーバーで日本から永久追放

再戦は2018年3月1日に両国国技館と決まった。しかし、今度はネリが前日計量で5ポンドもウェイトオーバー。再計量でも3ポンド超過したため山中は「ふざけるな」と声を荒げた。

ネリは王座を剥奪され、ネリが勝つか引き分けた場合は王座は空位、山中が勝った場合は王座獲得となる条件で行われた試合は、2回TKOでネリの勝利。後味の悪さだけが残る結果となったが、山中はこの試合を最後に現役を引退した。

JBC(日本ボクシングコミッション)はネリが日本のリングに上がることを禁止する無期限の活動停止処分、事実上の永久追放を決定。日本のボクシング界ではネリは完全にヒールとしてのイメージがついた。

大橋会長、体重オーバーしたら「やりません、絶対」

その後、ネリはスーパーバンタム級に上げ、2020年9月にアーロン・アラメダ(メキシコ)に判定勝ちしてWBC王座を獲得。2021年5月にブランドン・フィゲロア(アメリカ)に7回KO負けして初黒星を喫し、無冠となったが、再起後4連勝でWBC1位までランクを上げている。

今回のビッグマッチ実現のためJBCはネリに対する処分を解除。その一方、試合前日の計量だけでなく30日前、14日前、7日前など定期的に体重の報告を義務付け、抜き打ちのドーピング検査も含めて、山中戦のような失態をさせないよう万全の態勢を敷いている。

大橋秀行会長は、もし、ネリが1ポンドでもオーバーしたら?との質問に「やりません、絶対。それは公言しておきます」と断言。体重が違う不利な条件で井上をリングに上げさせないという強い姿勢を見せた。

ネリは会見で「皆様に謝罪したい。2度、皆様を裏切ってしまったが、今回は節制してグレートな試合を見せたい」と殊勝に語った。「悪童」は無事に東京ドームのリングに上がれるのか。井上が4本のベルトを持って初めて臨む防衛戦は、挑戦者の体重や動向が注目される極めて珍しい試合となった。



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