【コロワイド】コロナ禍の中、抑えていたM&Aを再開

コロワイド傘下の「大戸屋ごはん処」の看板

レストランや居酒屋などを運営するコロワイド<7616>が、M&Aにアクセルを踏み込んでいる。

同社は2024年3月25日に病院や介護施設を中心とした給食受託事業を営むニフス(埼玉県川越市)と、その子会社のアミス(同)を子会社化する。

さらに、その1週間後の4月1日には、菓子の製造や販売を手がける日本銘菓総本舗(東京都港区)を傘下に収める。

コロナ禍の中、大戸屋ホールディングスをTOB(株式公開買い付け)で子会社化した2020年9月以降は、企業買収を抑えていたが、再び成長に向け動き出した格好だ。

もともと同社はM&Aによって発展してきた歴史を持つ。2026年3月期を最終年とする中期経営計画の中にも、M&Aによる給食事業の拡大や、国内外食事業でのM&Aによる新たな成長事業の獲得を目標に掲げており、M&Aについては「積極的に実施する方針」と言い切る。

ニフス・アミス、日本銘菓総本舗に続く第3弾、第4弾が実現する日はそう遠くはないかもしれない。

給食事業やデザート事業を傘下に

ニフスは病院や介護施設を中心とした給食受託事業を展開しており、アミスは同様の給食受託事業に加え、食材セットの販売や食事宅配などを手がけている。

両社はこれら施設での運営や、嚥下食(飲み込みやすいように調整した食品)についてのノウハウを保有しており、グループ化後は、コロワイドの工場などを活用して、両社の給食受託事業を伸ばすことに加え、嚥下食などのノウハウを取り入れた製品開発に取り組む。

日本銘菓総本舗は、地域の銘菓や名産品の事業を承継する受け皿として設立された企業で、評価の高い「チーズガーデン」や「クリオロ」、「グリンデルベルグ」といったブランドを持つ。

コロワイドは、日本銘菓総本舗のグループ入りに伴って同社店舗の国内外での出店を進め、デザート事業を拡充するとともに、グループの顧客満足度を高めるために、グループ既存店での同社製品の販売などを検討していく。

直近の決算期での業績はニフス(2023年3月期)が売上高44億4000万円、当期利益1800万円、アミス(2022年12月期)が売上高15億7400万円、当期利益200万円(帝国データバンク調べ)。

日本銘菓総本舗(2023年5月期)が売上高59億3100万円、当期利益1億600万円で、これら数字がコロワイドの2025年3月期の業績に加わることになる。

ニフスとアミスは帝国データバンク調べ

多くのM&Aで成長

コロワイドは1963年に創業し、1977年に手作り居酒屋「甘太郎」逗子店(神奈川県)を開店したのが現在のビジネスの始まりとなる。

2000年に東京証券取引所第二部に上場した後は、多くのM&Aを繰り返し実施してきた。2002年に平成フードサービス、ダブリューピィージャパン、明治製菓リテイルを子会社化し、2004年に贔屓屋、アムゼを、2005年にはがんこ炎、アトム、ワールドピーコムを子会社化した。

さらに2006年には宮、シルスマリアを、2008にはバンノウ水産を、2012年にはレックス・ホールディングスをそれぞれ傘下に収めた。

この後は事業の柱となるような企業の買収が続く。2014年は回転ずしチェーン「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトを買収し、2016年はハンバーガーチェーンのフレッシュネスを、2020年には定食店の大戸屋ホールディングスをグループに取り込んだ。

コロナ禍の中では、影響の長期化に伴う業界の変化を見極めるためにM&Aを抑制していたが、今回積極策に転じ、ニフスとアミス、日本銘菓総本舗の子会社化に踏み切ったのだ。

同社の業績はコロナ禍の影響の大きかった2021年3月期に、事業損益(売上高から売上原価と販管費を差し引いた額)が81億4600万円の赤字に陥った。

店舗の臨時休業や時短営業をはじめ宴会需要などが激減し、居酒屋業態を中心に厳しい状況にさらされたのが要因だ。

2022年3月期は黒字転換し、事業損益は61億3300万円の黒字を確保したものの、2023年3月期は再び1億9600万円の事業赤字に転落した。

これは将来的にリスクが生じる恐れがあるものなどを整理し一過性の費用として減損損失70億6100万円を計上したことなどによるもので、2024年3月期はこうした費用を計上しないため、再び黒字化し79億6700万円の事業利益を見込む。

この事業利益額はコロナ禍前の2019年3期の84億9900万円には届かないものの、94%ほどに達する水準だ。ちなみに2024年3月期の売上高は2450億500万円で、こちらは2019年3月期の2443億6000万円を上回ることになる。

2024/3は予想

2030年3月期に売り上げ5000億円に

コロワイドが2023年5月に公表した新中期経営計画「COLOWIDE Vision 2030」では、国内外食事業を中心としつつも、成長が見込まれる海外外食事業や給食事業(病院・介護施設)を伸ばし、2030年3月期に売上高5000億円を目指す計画だ。

事業構成は国内外食事業が50%(2023年3月時は86.7%)、海外外食事業が30%(同13.1%)、給食事業20%(同0.2%)といった割合を見込む。

この割合を金額に直すと、2023年3月期に1914億円だった国内外食事業が2500億円に、289億円だった海外外食事業が1500億円に、4億円ほどだった給食事業が1000億円に伸びる計算になる。

これらを合わせると、3000億円近い売上高の上積みが必要となる。

この目標を達成する第一歩となるのが、2024年3月期から2026年3月期までの3カ年の中期経営計画ということになる。

国内外食事業では、積極的出店や改装による既存店のてこ入れのほか、M&Aによる新たな成長事業を獲得していく計画だ。

海外外食事業では、既存地域での積極的な出店や成長が見込まれる新たな地域への進出などに取り組み、給食事業では、M&Aによる大幅な事業拡大を目指す計画という。

2023年3月期の2208億3000万円から7年間で2倍以上の5000億円に伸ばすためには、非連続な成長を可能にするM&Aは不可欠な存在となりそうだ。

文:M&A Online

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