失敗した人に「もう、ちゃんとやってよ」、相手を制止しようとして「やめな!」…つい、このような言葉を発してはいませんか。これらは気の知れた仲間であっても使うべきではない「NG言葉」です。なぜNGなのか、代わりにどう言えばよいのか。齋藤孝氏の著書『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。子どものみならず、大人の表現力やコミュニケーション力の向上にも役立つ内容です。
【NG】失敗した人に「責める言葉」を使っていませんか?
<シチュエーション>
友達がスポーツでミスをした時。みんなで取り組んでいることを失敗した時。あなたは困った顔で「もう! ちゃんとやってよ!」と相手を責めました。
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<友達の反応>
●「もういい! こんなのつまらない!」と言って、やる気をなくしてしまった。
●「ごめんね」と言ったきり、落ち込んで黙ってしまった。
●「うるさいな! わかってるよ」と言ったけれど、同じミスを繰り返した。
[図表1]失敗を「責める」言葉はNG イラスト:森のくじら
出所:齋藤孝著『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
【こんな言葉もNG】
×「こんなこともできないの?」
×「何やってるんだよ」
できないことを責めない。トライする姿勢を励まそう
一緒に何かをやる時は、うまくいく、上手にできることを期待してしまうね。相手も同じ気持ちでチャレンジしているよ。そんな時に責めたり、笑ったりしたら「もう一緒にやりたくない!」という気持ちにさせてしまうんだ。
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言い換え例①:「ドンマイ! 気にしないで!」
⇒誰も責めたりしないよ、お互いさまだよ。そうしたムードをつくることができる言葉だよ。
言い換え例②:「わからないことがあったら聞いてね。」
⇒初めてのことや慣れないこと、知らないことで困っているのかも。「気軽に質問していいよ!」と伝えて、安心させてあげよう。
言い換え例③:「大丈夫。もう1回!」
⇒自分には簡単にできても、他の人には難しいこともある。それに、慣れていても失敗することもあるよね。チャレンジを応援しよう。
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【NG】相手のための注意でも「しかる言葉」では伝わらない
<シチュエーション>
危ないことをしている子を今すぐ止めたかったあなたは「ダメだよ!!」と大声で言ってしまいました。相手はおどろいてストップしたけれど、「気づかなかっただけだよ!」と怒ってしまいました。
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<友達の反応>
●「なんだよ! 偉そうなことを言うな!」と怒り、その後は何を言っても聞いてくれなくなった。
●「自分だってやったことあるじゃない」と言われた。
[図表2]相手のためでも「しかる言葉」では伝わらない イラスト:森のくじら
出所:齋藤孝著『「表現力」に差がつく!12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)
【こんな言葉もNG】
×「やめろ!」/「やめなさい!」
×「先生に言いつけるからね!」
何がいけないのか、なぜダメなのか。「理由」を伝えよう
大人でも他人を注意しにくい時があるよ。それでも伝えようとするのは、相手のことを思えばこそ。でも、相手に無視されるとこちらの言葉もどんどん強くなってしまう。もう一度、相手を思いやる気持ちを思い出してみよう。
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言い換え例①「危ないよ!」
⇒本当はいけないとわかっていても、強い言葉で指摘されると反発してしまうことも。まずは、相手の状況がどう見えるかを伝えてみよう。
言い換え例②「『わたるな! キケン!』の看板が立っているよ!」
⇒ルールがある場合は、相手が自分で考えて判断するきっかけになるように、決まりや注意書きの内容を伝えてみよう。
言い換え例③「大人を呼んでくるね!」
⇒相手が話を聞いてくれない場合は、無理せず誰かに助けを求めて! 「〇〇さんがいけないことをしています」ではなく「危ないので助けてください!」と危険な状況を伝えよう。
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齋藤 孝
明治大学文学部教授
1960年静岡県生まれ。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に『語彙力こそが教養である』『小学3年生から始める! こども語彙力1200』(いずれもKADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、訳書に『現代語訳 論語』(ちくま新書)、『12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』『12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』『12歳までに知っておきたい読解力図鑑』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター)など多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。